2020年07月31日

米GDP(20年4-6月期)-前期比年率▲32.9%と統計開始以来最大の落ち込み

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は1947年の統計開始以来最大の落ち込み、市場予想は上回る

7月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は20年4-6月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。4-6月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で▲32.9%(前期:▲5.0%)と2期連続でマイナスとなったほか、マイナス幅は47年の統計開始以来最大となった(図表1・2)。市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同▲34.5%は上回った。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
4-6月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率▲34.6%(前期:▲6.9%)となったほか、民間設備投資が▲27.0%(前期:▲6.7%)、住宅投資が▲38.7%と軒並み▲3割~▲4割近い落ち込みとなった(図表2)。また、在庫投資の成長率寄与度も▲3.98%ポイント(前期:▲1.34%ポイント)と前期からさらにマイナス幅が拡大した。これらの落ち込みからは、新型コロナの感染拡大と感染対策として4月から5月にかけて全米規模で実施された経済活動制限の影響が如何に大きかったか分かる。

一方、政府支出は大型の経済対策に伴う連邦政府支出の増加もあって前期比年率+2.7%(前期:+1.3%)とプラス成長を維持したほか、輸出の大幅な落ち込みにより外需の成長率寄与度も+0.68%ポイント(前期:+1.13%ポイント)と成長を押し上げた。

これまでみたように、4-6月期の成長率は統計開始以来最大の落ち込みとなったものの、多くの経済指標は米経済が4月に底打ちして、5月以降は回復基調に転じた可能性が高いことを示している。このため、7-9月期の成長率は現状で2桁のプラス成長に転じるとみられる。もっとも、6月以降に新型コロナの感染者数が急増しているほか、一部の州では経済活動再開の見直しがされており、このような動きが続けば、7-9月期の成長持続性に対する懸念が高まろう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)サービス消費の落ち込みが顕著
4-6月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲11.3%(前期:+0.1%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス消費が▲43.5%(前期:▲9.8%)と、前期からマイナス幅が大幅に拡大した(図表3)。財消費では、耐久財が▲1.4%(前期:▲12.5%)と前期からマイナス幅が縮小した一方、非耐久財は▲15.9%(前期:+7.1%)と前期からマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電では▲10.6%(前期:▲3.9%)と前期からマイナス幅が拡大したものの、自動車・自動車部品が+5.5%(前期:▲28.5%)とプラスに転じたほか、娯楽・スポーツカーが+40.5%(前期:+5.0%)と前期からプラス幅が大幅に拡大した。

非耐久財では、前期に大幅なプラスとなった食料・飲料が▲6.4%(前期:+31.0%)とマイナスに転じたほか、衣料・靴が▲48.4%(前期:▲34.6%)、ガソリン・エネルギーが▲54.7%(前期:▲17.1%)といずれも前期からマイナス幅が拡大した。

一方、サービス消費は、住宅・公共料金こそ+4.6%(前期:▲0.3%)と前期からプラスに転じたものの、娯楽サービスの▲93.5%(前期:▲33.4%)を筆頭に、輸送サービス▲83.9%(前期:▲26.4%)、飲食・宿泊サービス▲81.2%(前期:▲31.3%)、医療サービス▲62.7%(前期:▲16.3%)などで前期から壊滅的な落ち込みとなった。

実質可処分所得は前期比年率+44.9%(前期:+2.6%)と前期から伸びが大幅に加速した(図表4)。新型コロナに伴う経済対策として政府が家計に直接給付を行ったことに加え、失業保険の給付額を増額したことが所得を増加させたほか、個人所得税の減少が可処分所得を押し上げた。

貯蓄率は25.7%(前期:9.5%)と当期は外出制限などもあって、所得対比で消費が抑制されていたことが鮮明となった。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)前期に続き、輸送機器が大幅な落ち込み
4-6月期の民間設備投資は、知的財産投資が前期比年率▲7.2%(前期:+2.4%)と15年1-3月期(同▲2.9%)以来のマイナス成長に転じたほか、建設投資が▲34.9%(前期:▲3.7%)、設備機器投資が▲37.7%(前期:▲15.2%)といずれも前期からマイナス幅が大幅に拡大した(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、電力・通信が▲19.4%(前期:+2.6%)、資源関連も▲77.8%(前期:+8.7%)と前期からマイナスに転じたほか、製造業が▲16.8%(前期:▲25.3%)と前期からマイナス幅が拡大した。

設備機器投資では、情報処理関連が+22.3%(前期:▲13.2%)と前期からプラスに転じた一方、産業機器が▲22.5%(前期:▲5.5%)、輸送機器が▲85.7%(前期:▲31.1%)と前期からマイナス幅が大幅に拡大した。とくに、輸送機器の落ち込みが前期に続き大きかった。

知的財産投資では、ソフトウエアが▲1.4%(前期:+9.6%)と前期からマイナスに転じたほか、研究・開発が▲8.9%(前期:▲1.5%)、娯楽・文学等が▲23.0%(前期:▲6.9%)と前期からマイナス幅が拡大した。

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率▲44.6%(前期:+20.7%)、集合住宅も▲23.1%(前期+17.3%)と前期からマイナスに転じた。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)連邦政府の経済支援策が政府支出を押し上げ
4-6月期の政府支出の内訳は、州・地方政府が前期比年率▲5.6%(前期:+1.1%)と前期からマイナスに転じた一方、連邦政府が+17.4%(前期:+1.6%)と前期から伸びが大幅に加速し、全体を押し上げた(図表6)。

連邦政府支出では、国防関連支出が+4.1%(前期:▲0.3%)と前期からプラスに転じたほか、非国防支出が+39.7%(前期:+4.4%)と前期から伸びが大幅に加速し、連邦政府支出全体を押し上げた。BEAによれば、非国防支出は中小企業の資金繰り支援策である給与保護プログラム(PPP)に伴う補助金の支給増加などによるようだ。
(貿易)輸出入ともに旅行、輸送サービスの落ち込みが顕著
 4-6月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率▲64.1%(前期:▲9.5%)、輸入が▲53.4%(前期:▲15.0%)と、いずれも前期からマイナス幅が大幅に拡大する中で、当期は輸出の落ち込みが輸入を上回ったことで貿易赤字を縮小させた。

輸出を仔細にみると、財輸出が▲67.6%(前期:▲2.7%)、サービス輸出が▲56.7%(前期:▲20.8%)と財、サービス輸出ともに大幅な落ち込みとなった(図表7)。

財輸出では、前期にプラスとなっていた工業用原料が前期比年率▲56.8%(前期:+20.2%)、食料・飲料が▲3.2%(前期:+8.2%)とマイナスに転じた。また、自動車関連が▲97.1%(前期:▲18.9%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲73.6%(前期:▲21.0%)、資本財(自動車関連除く)が▲67.9%(前期:▲11.5%)と、いずれも前期からマイナス幅が拡大した。

サービス輸出では、輸送が▲96.3%(前期:▲34.3%)、旅行が▲98.5%(前期:▲56.2%)と前期に続き落ち込みが顕著となった。

一方、輸入は、財輸入が▲48.8%(前期:▲11.4%)、サービス輸入が▲69.7%(前期:▲28.5%)と輸出同様、財、サービスともに大幅な落ち込みとなった(図表8)。

財輸入では、食料・飲料が▲18.6%(前期:+5.7%)と前期からマイナスに転じたほか、自動車関連が▲95.3%(前期:▲10.1%)、資本財(自動車関連除く)が▲34.3%(前期:▲14.0%)、工業用原料が▲28.2%(前期:▲5.5%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲25.1%(前期:▲14.8%)と、いずれも前期からマイナス幅が拡大した。

一方、サービス輸入はサービス輸出同様、輸送が▲93.2%(前期:▲40.3%)となったほか、旅行が▲100.0%(前期:▲70.3%)と落ち込みが顕著となった。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期比でマイナスに転落
4-6月期のGDP価格指数は、前期比年率▲1.8%(前期:+1.4%)と前期からマイナスに転じたほか、市場予想(同▲0.1%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率▲34.3%(前期:▲3.4%)となった(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率▲1.9%、前年同期比+0.6%(前期:+1.3%、+1.7%)と前期比で15年10-12月期(同▲0.3%)以来のマイナスとなったほか、前年同期比も前期から伸びが鈍化した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率▲1.1%、前年同期比+0.9%(前期:+1.6%、+1.8%)と、こちらも前期比がマイナスに転じたほか、前年同期比も前期から伸びが鈍化しており、基調物価の押し下げ圧力が高まった。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
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(2020年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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