2020年02月03日

【12月米個人所得・消費支出】個人所得は前月比+0.2%、消費支出は+0.3%と個人所得は市場予想を下回る一方、消費は一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回る一方、個人消費は市場予想に一致

1月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%)となり、+0.5%から下方修正された前月を下回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.3%(前月:+0.4%)と、こちらは前月を下回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月:+0.3%)と、こちらも前月を下回った一方、市場予想(+0.1%)に一致した(図表5)。貯蓄率1は7.6%(前月:7.8%)と、前月から▲0.2%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.2%)を上回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)を上回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.6%(前月値:+1.4%)と前月を上回った一方、市場予想(+1.6%)に一致した。コア指数は+1.6%(前月値:+1.5%)とこちらも前月を上回った一方、市場予想(+1.6%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費は拡大基調が持続も7-9月から伸びは鈍化

昨年の年末商戦売り上げ高は前年比+4.1%と過去5年平均の+3.7%を上回って好調となったほか、名目個人消費の前月比は10月が+0.2%、11月が+0.4%と12月にかけて消費の増加基調が持続した(図表1)。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 もっとも、7-9月期の消費が強かったこともあって、先日発表されたGDPにおける実質個人消費では19年10-12月期が前期比年率+1.8%(前期:+3.2%)と前期から伸びは鈍化した。

個人消費を取り巻く環境は、労働市場の回復が続いているほか、消費者マインドも堅調を維持しているものの、足元で新型肺炎の感染拡大懸念に伴う株式市場の下落がみられているほか、世界的な物流への影響や米国内での感染拡大などが顕在化する場合には消費に悪影響がでよう。
 
一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、物価目標の2%を下回っているものの、総合指数、コア指数ともに前月から上昇しており、底打ちがみられる。19年年初は物価指標が低下していたこともあり、その反動で当面は前年比での加速を示す物価指標が続こう。

3.所得動向:農家を中心に自営業所得が大幅に減少

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.3%(前月:+0.4%)と堅調な伸びを維持したほか、利息・配当収入は+1.0%(前月:+0.1%)と前月から大幅に伸びが加速した(図表2)。一方、自営業者所得は▲1.5%(前月:+1.7%)と前月から大幅なマイナスに転じた。これは、農家に対する補助金が減少したことに伴い、農家の所得が前月比▲60.9%(前月:+78.9%)と前月から大幅に減少したことが大きい。農家の所得はトランプ大統領が多額の補助金支給を決定した影響で毎月の変動が大きくなっている。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、12月が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。さらに、価格変動の影響を除いた実質ベースでは▲0.1%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じた。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連を中心に耐久財消費が減少

12月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.3%(前月:+0.5%)、サービス消費が+0.3%(前月:+0.4%)と、小幅ながらいずれも前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、非耐久財が+0.9%(前月:+0.2%)と前月から大幅に伸びが加速した一方、耐久財が▲0.8%(前月:+1.0%)と前月から大幅なマイナスに転じ財消費の足を引っ張った。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが▲0.4%(前月:横ばい)、自動車・自動車部品が▲2.1%(前月:+3.2%)と前月からマイナスに転じた。とくに、自動車・自動車部品は前月に大幅なプラスとなった反動もあって落ち込みが大きくなった。

非耐久財では、食料・飲料が▲0.1%(前月:+0.2%)と前月からマイナスに転じたものの、ガソリン・エネルギーが+2.1%(前月:+2.0%)と前月から堅調な伸びを維持したほか、衣料・靴が+0.4%(前月:▲0.3%)とプラスに転じた。

サービス消費は、外食・宿泊が+0.6%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じたほか、娯楽サービスも+0.8%(前月:+0.5%)と前月から伸びが加速した一方、住宅・公共料金が▲0.1%(前月:+0.7%)と前月からマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格が前月比、前年同月比ともに物価を押し上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.5%(前月:+0.8%)と3ヵ月連続の上昇となったほか、前月から伸びが加速した(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.03%(前月:+0.04%)と僅かながら4ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+3.8%(前月:▲0.7%)と8ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表7)。一方、食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.9%)とこちらは17年7月以来30ヵ月連続のプラスとなった。

この結果、12月は、エネルギー価格が前月比、前年同月比ともに物価を押し上げた。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年02月03日「経済・金融フラッシュ」)

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