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- 2019年10-12月期の実質GDP~前期比▲1.1%(年率▲4.4%)を予測~
2020年01月31日
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●10-12月期は年率▲4.4%の大幅マイナス成長を予測
2019年10-12月期の実質GDPは、前期比▲1.1%(前期比年率▲4.4%)と5四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される1。消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動などから、民間消費(前期比▲2.6%)、住宅投資(同▲4.1%)、設備投資(同▲0.6%)の国内民間需要がいずれも減少したことが大幅マイナス成長の主因である。政府消費(前期比0.7%)、公的固定資本形成(同1.0%)の公的需要は増加したが、民間需要の落ち込みをカバーするには至らなかった。
一方、輸出は欧米向けを中心に低迷が続いたが、国内需要の落ち込みを背景とした輸入の大幅減少から外需寄与度が前期比0.3%(年率1.3%)と成長率の押し上げ要因となった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲1.4%(うち民需▲1.7%、公需0.2%)、外需が0.3%と予測する。
名目GDPは前期比▲0.6%(前期比年率▲2.2%)と4四半期ぶりの減少となるが、実質の伸びは上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.6%(7-9月期:同0.2%)、前年比1.4%(7-9月期:同0.6%)と予測する。
なお、2/17に内閣府から2019年10-12月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2019年7-9月期の実質GDP成長率は設備投資の下方修正などから、前期比年率1.8%から同1.1%へ下方修正されると予測している。
この結果、2019年(暦年)の実質GDP成長率は0.9%(2018年は0.3%)、名目GDP成長率は1.6%(2018年は0.2%)となることが見込まれる。
2019年10-12月期は消費税率引き上げに伴う実質所得の低下、駆け込み需要の反動、台風19号による供給制約による国内需要の落ち込みに、海外経済の減速を背景とした輸出の低迷が重なったことにより、大幅マイナス成長になったとみられる。
成長率のマイナス幅は前回の消費増税後(2014年4-6月期:前期比年率▲7.4%)より小さいが、増税前の伸びが低かった(2019年7-9月期:前期比年率1.8%、2014年1-3月期:同4.0%)こと、鉱工業生産の減産幅(前期比▲4.0%)が前回の増税後(同▲2.9%)よりも大きいことなどを踏まえれば、景気の基調は前回増税後よりも弱い。
2020年1-3月期は駆け込み需要の反動が和らぐことで民間消費、設備投資が持ち直すものの、欧米向けを中心に財の輸出が低迷することに加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中国からの訪日客が急減し、サービスの輸出も大きく落ち込むことが見込まれるため、ほぼゼロ成長にとどまることが予想される。
1 1/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
一方、輸出は欧米向けを中心に低迷が続いたが、国内需要の落ち込みを背景とした輸入の大幅減少から外需寄与度が前期比0.3%(年率1.3%)と成長率の押し上げ要因となった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲1.4%(うち民需▲1.7%、公需0.2%)、外需が0.3%と予測する。
名目GDPは前期比▲0.6%(前期比年率▲2.2%)と4四半期ぶりの減少となるが、実質の伸びは上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.6%(7-9月期:同0.2%)、前年比1.4%(7-9月期:同0.6%)と予測する。
なお、2/17に内閣府から2019年10-12月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2019年7-9月期の実質GDP成長率は設備投資の下方修正などから、前期比年率1.8%から同1.1%へ下方修正されると予測している。
この結果、2019年(暦年)の実質GDP成長率は0.9%(2018年は0.3%)、名目GDP成長率は1.6%(2018年は0.2%)となることが見込まれる。
2019年10-12月期は消費税率引き上げに伴う実質所得の低下、駆け込み需要の反動、台風19号による供給制約による国内需要の落ち込みに、海外経済の減速を背景とした輸出の低迷が重なったことにより、大幅マイナス成長になったとみられる。
成長率のマイナス幅は前回の消費増税後(2014年4-6月期:前期比年率▲7.4%)より小さいが、増税前の伸びが低かった(2019年7-9月期:前期比年率1.8%、2014年1-3月期:同4.0%)こと、鉱工業生産の減産幅(前期比▲4.0%)が前回の増税後(同▲2.9%)よりも大きいことなどを踏まえれば、景気の基調は前回増税後よりも弱い。
2020年1-3月期は駆け込み需要の反動が和らぐことで民間消費、設備投資が持ち直すものの、欧米向けを中心に財の輸出が低迷することに加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中国からの訪日客が急減し、サービスの輸出も大きく落ち込むことが見込まれるため、ほぼゼロ成長にとどまることが予想される。
1 1/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
●主な需要項目の動向
・民間消費~駆け込み需要の反動以上に落ち込む~
民間消費は前期比▲2.6%と5四半期ぶりの減少を予測する。
消費税率引き上げ後の落ち込みは前回増税時(2014年4-6月期の前期比▲4.8%)よりも小さかったが、増税前の2019年7-9月期は前期比0.5%の伸びにとどまっており(前回増税前の2014年1-3月期は前期比2.0%)、消費増税前後で均してみると、消費の基調は前回増税時よりも弱いと考えられる。軽減税率の導入やキャッシュレス決済に対するポイント還元などの消費増税対策が一定程度下支えしたものの、自動車、家電製品などの耐久財を中心に駆け込み需要の反動が生じたこと、消費税率引き上げに伴う実質所得の低下に、10月の台風19号による供給制約の影響が加わったことが消費の落ち込みを大きくした。
消費税率引き上げ後の消費動向を業界統計で確認すると、ポイント還元対象のコンビニエンスストア売上高は駆け込み需要と反動が生じておらず、消費税率引き上げ後も底固い動きとなっている。一方、それ以外の業態では9月に駆け込み需要が生じ、10月にはその反動と台風19号の影響が重なったことで急速に落ち込んだ後、11月、12月は持ち直しの動きがみられるが戻りは弱い。総じてみれば、個人消費は前回の消費増税後と同じかそれ以上に弱い動きとなっている。
民間消費は前期比▲2.6%と5四半期ぶりの減少を予測する。
消費税率引き上げ後の落ち込みは前回増税時(2014年4-6月期の前期比▲4.8%)よりも小さかったが、増税前の2019年7-9月期は前期比0.5%の伸びにとどまっており(前回増税前の2014年1-3月期は前期比2.0%)、消費増税前後で均してみると、消費の基調は前回増税時よりも弱いと考えられる。軽減税率の導入やキャッシュレス決済に対するポイント還元などの消費増税対策が一定程度下支えしたものの、自動車、家電製品などの耐久財を中心に駆け込み需要の反動が生じたこと、消費税率引き上げに伴う実質所得の低下に、10月の台風19号による供給制約の影響が加わったことが消費の落ち込みを大きくした。
消費税率引き上げ後の消費動向を業界統計で確認すると、ポイント還元対象のコンビニエンスストア売上高は駆け込み需要と反動が生じておらず、消費税率引き上げ後も底固い動きとなっている。一方、それ以外の業態では9月に駆け込み需要が生じ、10月にはその反動と台風19号の影響が重なったことで急速に落ち込んだ後、11月、12月は持ち直しの動きがみられるが戻りは弱い。総じてみれば、個人消費は前回の消費増税後と同じかそれ以上に弱い動きとなっている。
・住宅投資~6四半期ぶりの減少~
住宅投資は前期比▲4.1%と6四半期ぶりの減少を予測する。
住宅投資は前期比▲4.1%と6四半期ぶりの減少を予測する。
・民間設備投資~前期の高い伸びの反動で減少も、回復基調は維持~
民間設備投資は前期比▲0.6%と3四半期ぶりの減少を予測する。
設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2019年7-9月期の前期比1.9%の後、10-12月期は同▲5.5%の減少となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2019年7-9月期に前期比▲3.5%の減少となった後、10、11月の平均は7-9月期を▲0.4%下回っている。
日銀短観2019年12月調査では、2019年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が9月調査から▲0.2%下方修正され、前年度比5.8%増となった。増加基調は維持されているが、同時期(12月調査)の2018年度の伸び(前年度比11.6%)を下回った。
民間設備投資は前期比▲0.6%と3四半期ぶりの減少を予測する。
設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2019年7-9月期の前期比1.9%の後、10-12月期は同▲5.5%の減少となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2019年7-9月期に前期比▲3.5%の減少となった後、10、11月の平均は7-9月期を▲0.4%下回っている。
日銀短観2019年12月調査では、2019年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が9月調査から▲0.2%下方修正され、前年度比5.8%増となった。増加基調は維持されているが、同時期(12月調査)の2018年度の伸び(前年度比11.6%)を下回った。
2019年10-12月期の設備投資の落ち込みは、2019年7-9月期に簡易課税制度を採用する中小企業の駆け込み需要や軽減税率・キャッシュレス決済対応の需要によって高い伸びとなった反動による部分が大きい。企業収益が悪化している製造業は弱い動きとなっているが、非製造業は人手不足対応の省力化投資、都市再開発やインバウンド関連の建設投資、研究開発投資を中心に増加基調を維持していると判断される。
・公的固定資本形成~積極的な予算を反映し増加が続く~
公的固定資本形成は前期比1.0%と4四半期連続の増加を予測する。
公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2018年10-12月期から5四半期連続で増加し、2019年10-12月期は前年比4.4%となった。また、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2019年4-6月期に前年比2.5%と5四半期ぶりに増加した後、7-9月が同6.6%、10、12月の平均が同9.2%と伸びを大きく高めている。
公共事業関連予算はアベノミクス開始後に大幅に増やした後は抑制気味だった。しかし、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増した後、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を前年比15.6%の大幅増加とした。人手不足による制約はあるものの、公共事業関連予算の積み増しが公的固定資本形成の持続的な増加につながっている。
先行きについては、1/30に成立した2019年度補正予算で1.6兆円の公共事業関係費が追加されており、2020年度入り後の公的固定資本形成を押し上げることが見込まれる。ただし、2020年度の政府予算案では公共事業関係費が前年度の当初予算比で▲0.8%となっているため、2020年度も補正予算の編成が必要となるだろう。
公的固定資本形成は前期比1.0%と4四半期連続の増加を予測する。
公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2018年10-12月期から5四半期連続で増加し、2019年10-12月期は前年比4.4%となった。また、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2019年4-6月期に前年比2.5%と5四半期ぶりに増加した後、7-9月が同6.6%、10、12月の平均が同9.2%と伸びを大きく高めている。
公共事業関連予算はアベノミクス開始後に大幅に増やした後は抑制気味だった。しかし、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増した後、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を前年比15.6%の大幅増加とした。人手不足による制約はあるものの、公共事業関連予算の積み増しが公的固定資本形成の持続的な増加につながっている。
先行きについては、1/30に成立した2019年度補正予算で1.6兆円の公共事業関係費が追加されており、2020年度入り後の公的固定資本形成を押し上げることが見込まれる。ただし、2020年度の政府予算案では公共事業関係費が前年度の当初予算比で▲0.8%となっているため、2020年度も補正予算の編成が必要となるだろう。
・外需~輸入の大幅減少で3四半期ぶりのプラス寄与~
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と3四半期ぶりのプラスになると予測する。財貨・サービスの輸出は前期比▲0.4%と低迷が続いたが、消費税率引き上げ後の国内需要の落ち込みを反映し、財貨・サービスの輸入が同▲2.3%と輸出以上に落ち込んだことが成長率の押し上げ要因となった。
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と3四半期ぶりのプラスになると予測する。財貨・サービスの輸出は前期比▲0.4%と低迷が続いたが、消費税率引き上げ後の国内需要の落ち込みを反映し、財貨・サービスの輸入が同▲2.3%と輸出以上に落ち込んだことが成長率の押し上げ要因となった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年01月31日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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