2019年11月11日

「調整会議の活性化」とは、どのような状態を目指すのか-地域医療構想の議論が混乱する遠因を探る

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

人口的にボリュームが大きい団塊世代が75歳以上となる2025年に向けて、医療提供体制改革を目指す「地域医療構想」に関連し、厚生労働省は9月26日、再編・統合の検証が望ましい公立・公的医療機関として424病院の個別名を公表した。現在、自治体や現場では当惑や反発が広がっており、厚生労働省は公表に至った経緯や判断などについて、全国各地で説明会を開催するなどの対応を迫られている。

こうした異例の公表に踏み切った理由として、厚生労働省は「地域医療構想調整会議(以下、調整会議)の活性化」を挙げている。調整会議とは、2017年3月までに各都道府県が策定した地域医療構想を推進する際、急性期病床の削減や在宅医療の充実といった方策について、都道府県や民間医療機関関係者などが話し合う場であり、全国に339カ所で設けられている。今回の個別名公表については、こうした場が「活性化」していないことが理由として挙げられている。

では、ここで言う「活性化」とは一体、どのような状態を指すのだろうか。言い換えると、どのような見直しが進めば、「活性化した」と言えるのだろうか。ここでは地域医療構想が制度化された時点で、「過剰な病床適正化」「切れ目のない提供体制の構築」という2つの目的が混在していた点を見た上で、こうした多義的な側面が今回の混乱の遠因である点を指摘する。

■目次

1――はじめに~「調整会議の活性化」とはどのような状態なのか~
2――「調整会議の活性化」を目指す個別名の公表
3――「調整会議の活性化」とは何か
4――地域医療構想の目的に関する厚生労働省の説明
5――地域医療構想に混在する2つの目的
  1|コストの視点~過剰な病床適正化という目的~
  2|アクセスの視点~切れ目のない提供体制の構築という目的~
  3|2つの目的が混在した点の評価
6――どちらの目的が重視されているのか
  1|策定時における都道府県の対応
  2|個別名の公表
7――今後どうするべきか
8――おわりに

(2019年11月11日「基礎研レポート」)

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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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