2018年12月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(12月号)~輸出は米中貿易戦争の余波で上下に振れる展開に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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シンガポールの18年10月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比6.7%増(前月:同6.4%増)と小幅に上昇した。輸出の伸び率は主力の電子製品こそ低迷しているが、医薬品の急増により増加傾向が続いている。なお、総輸出額は前年同月比18.7%増(前月:同9.6%増)、総輸入額は同18.1%増(前月:同14.1%増)となり、それぞれ上昇した。結果として、貿易収支は40.2億ドルの黒字となり、前月から8.0億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同4.9%減(前月:同2.8%減)と9ヵ月連続のマイナスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同10.3%増)こそ大きく増加したものの、主力のIC(同0.3%増)やPC(同20.1%減)、PC部品(同1.5%増)、ダイオード・トランジスタ(同25.4%減)が振るわなかった。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同29.4%増(前月:同21.4%増)と上昇した。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同87.0%増(前月:同64.8%増)と米国の需要拡大を背景に急増を続ける一方、石油化学製品が同1.5%減(前月:同3.1%減)と低調だった。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの18年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比3.3%増と、前月(同0.8%増)から上昇した。輸出の伸び率は年明けにマイナス圏で推移した後、年央からは主力の電子製品を中心に小幅ながら増加を続けている。一方、輸入額は前年同月比21.4%増(前月:同26.1%増)と大幅な増加を続けている。結果として、貿易収支は42.1億ドルの赤字と、前月から4.9億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同0.6%増(前月:同4.2%増)と低下した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同2.3%減)が8ヵ月ぶりのマイナスに転じたほか、電子データ処理機(同6.2%増)も鈍化した。その他9品目は総じて増加した品目が多かった。銅精鉱(同167,014.3%増)や機械・輸送用機器(同94.1%増)やバナナ(同30.9%増)、その他製造品(同24.3%増)や雑品(同23.8%増)、金属部品(同17.6%増)が増加する一方、電子機械・部品(同11.8%減)や化学(同5.8%減)、イグニッション・ワイヤーセット(同4.1%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2018年12月11日「経済・金融フラッシュ」)

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