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メンタルコミットロボット PARO(パロ)
「パロ」は「タテゴトアザラシ」の赤ちゃんをモデルとしており、見た目はまるで“ぬいぐるみ”だが、中身は様々な機能が組込まれた正真正銘のロボットである。「ペット用」と「セラピー用」の2種類があり、両者ともメンタルケアに活用できるが、後者はより医療・介護・福祉施設向けに適した仕様となっている。前者の場合、ペットの飼育に制限のあるマンションや利用者(飼い主や家族など)にアレルギーなどがある場合のアニマル・セラピー等に有効である。
複数の機能を搭載しており、スイッチを入れると大きな瞳を開けて視覚センサー(鼻先)によってこちらを見る。頭部をやさしく撫でると気持ちよさそうな声を上げ、全身(体の上の面)の触角センサーで体の撫でられた位置を感知し頭や手足を動かす。「ペット用」は鼻ひげに触れられるのが苦手で、触ると首を振ってイヤイヤをしたり、利用者の接し方によって性格も微妙に変化するという。このほかにも学習機能により名前を覚え、呼ぶと反応するようになる。基本的に穏やかなコミュニケーションをしてくれるアザラシ型ロボットであり、現在までに世界合計で5,000体が利用されている。また現在までに、医療・介護領域で多数の実証試験も行なわれ様々なエビデンスも着々と集積されてきている。近年、非言語系のロボット等が多数登場する中、「パロ」の先進性は色あせていないようだ。
この他にも、10年ほど前から、将来の有人火星探査等のミッションで必要になると考えられる「宇宙用パロ」開発へ向けた長期の取組も始められている。その理由は、半年以上の長期間に亘る閉鎖空間の宇宙船内で、生活等を余儀なくされる乗組員のメンタル・セラピーのためである。そして、数年前からは米国の宇宙関係のシンポジウムでパロの展示や講演などが行われてきている。現状では、まだどのようになるのかは未定である。しかし、パロは医療用で唯一のメンタル・セラピー用のロボットであり、非常に安全性や衛生面等で高い機能を有している。このため、パロをベースに「宇宙用」を開発する可能性は高いのではないかと筆者は考えている。今後の動向を注目したい。
エンタテイメントや癒やし系ロボットの活躍の場
また、宇宙船内のような長期間の閉鎖空間内でのストレスの緩和などに向けた新たな「宇宙用パロ」の開発への取組も注目される動きである。これら非言語型のロボットの活躍と、さらにクラウド・AIを活用した対話型のシステムを組み込んだパーソナルロボットやソーシャルロボットの登場を通じて安全で利便性の高い社会の構築を大いに期待したい。
ロボット開発とは人間を深く知ること
青山 正治
研究・専門分野
(2018年03月26日「研究員の眼」)
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