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企業内容等の開示は機能しているか?-より具体的な保有目的開示に期待する
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――特定投資株式と持ち合い株式
遡ること1年、平成21年6月17日に金融審議会金融分科会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」の報告書(以下、「報告書」と記す)が公表されている。報告書は、市場における資金調達等をめぐる問題の一つとして、株式の持ち合いを挙げると共に、持ち合い状況の開示が必要であると指摘している。
上述のコーポレート・ガバナンスに関する開示内容の充実は、報告書の指摘を受けたものと考えられる。しかし、報告書における主眼は持ち合い株式であったのに、内閣府令ではその対象が特定投資株式に取り替わっている。その理由は、内閣府令等に関して寄せられたパブリックコメントに対する金融庁の考え方に記載されている。『持合いである場合にはその旨記述することが要求されるのか、明確にしてほしい(原文のまま引用)』や『持合を問題とするのであれば、互いに持ち合っている場合に限って開示を義務づけるべきである(原文のまま引用)』等のコメントに対し、金融庁の考え方として『株式の持合いには、二者が相互に持ち合う場合だけでなく複数の者同士で多角的に保有し合う場合も考えられますが、このような関係の有無は相手方の意向等が影響するため、提出会社において当該関係の有無を明確に判断することが容易でないことも考えられます。(原文のまま引用)』と記されている。上場会社間の持ち合い株式は特定投資株式に含まれるが、特定投資株式の全てが持ち合い株式であるとは限らない。にもかかわらず、株式持ち合いの複雑さと提出会社の判断の容易性を勘案し、特定投資株式が開示対象となった。結果として、投資家が持ち合い状況の把握することの容易さは、さほど高まっていない。
そこで、当レポートでは、ニッセイ基礎研究所で取り組んできた『持ち合い株式状況調査』で蓄積したデータを用いて、特定投資株式として開示される株式のうち、持ち合い株式と判断できる株式の割合をさまざまな視点で確認し、その結果を報告する。更に、今後のあるべき開示方法についても言及したい。
2――特定投資株式保有の状況
業種により差はあるが、上場する一般事業会社のうち7割が、特定投資株式を保有している。そして、そのうち8割が、特定投資株式の全てを開示していると推測できる。というのも、内閣府令は、特定投資株式の貸借対照表計上額上位30銘柄については、貸借対照表計上額が資本金額に占める割合に関わらず、開示することを求める。このため、開示銘柄数が30に満たない企業は、特定投資株式の全てを開示していると考えられるからだ。
特定投資株式の全てが開示されるわけではないので、持ち合い状況を完全に把握することは不可能である。しかし、特定投資株式を保有する企業のうち、8割が特定投資株式の全てを開示していると考えられる。上場企業のうち8割が特定投資株式の全てを開示していることに加え、残り2割も、少なくとも30銘柄2は開示していることから、全上場企業の情報を組み合わせることで、持ち合い株式か否かを判別しても、大きく外れることはないであろう。更に、発行する株式が他の分析対象会社に特定投資株式として保有されていることが確認できる企業の割合を、特定投資株式保有の有無別に確認する(図表4)。
特定投資株式を保有している企業に限れば、9割がその発行する株式が他の分析対象会社に特定投資株式として保有されていることが確認できる。一方、特定投資株式を保有していない企業に限れば全体の5割にとどまる。とはいえ、全体の15%(3割×5割)の企業が、特定投資株式を保有していないにも限らず、その発行する株式が他の分析対象会社に特定投資株式として保有されている。
(2017年02月21日「基礎研レポート」)
03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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