2016年11月21日

貿易統計16年10月~一進一退が続く輸出

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.原数値の貿易収支は2ヵ月連続の黒字

財務省が11月21日に公表した貿易統計によると、16年10月の貿易収支は4,962億円と2ヵ月連続の黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:6,100億円、当社予想は5,633億円)は下回った。円高の影響で輸出入ともに前年比で減少したが、原油価格の下落を反映し輸入の減少幅(9月:前年比▲16.3%→10月:同▲16.5%)が、輸出の減少幅(9月:前年比▲6.9%→10月:同▲10.3%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ3,914億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.4%(9月:同4.7%)、輸出価格が前年比▲9.0%(9月:同▲11.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.5%(9月:同▲1.5%)、輸入価格が前年比▲14.4%(9月:同▲15.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は4,743億円の黒字となり、9月の3,585億円から黒字幅が拡大した。輸出が前月比1.6%(9月:同0.4%)と3ヵ月連続で増加する一方、輸入が前月比▲0.5%(9月:同0.7%)と2ヵ月ぶりに減少した。

2.一進一退が続く輸出数量

10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲2.0%(9月:同4.7%)、EU向けが前年比1.7%(9月:同13.0%)、アジア向けが前年比▲0.9%(9月:同3.1%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲5.0%(9月:同13.3%)、EU向けが前月比▲2.8%(9月:同3.5%)、アジア向けが前月比▲1.7%(9月:同0.4%)、全体では前月比▲0.5%(9月:同2.0%)となった。

7-9月期は米国向け、EU向け、アジア向けがいずれも前期比で上昇し持ち直しの兆しが見られたが、10月はいずれの地域向けも前月比で大きく低下し、7-9月期の水準を下回った。

海外経済の回復力が弱いこと、既往の円高による下押し圧力が残っていることから、輸出数量は一進一退の動きが続いている。

7-9月期のGDP統計では財貨・サービスの輸出が前期比2.0%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比0.5%と成長率を大きく押し上げたが、4-6月期(同▲1.5%)と均してみれば輸出は横ばい圏の動きにとどまっている。10-12月期は輸出の伸びが低下する可能性が高いため、外需が成長率を大きく押し上げることは期待できないだろう。

3.貿易黒字(季節調整値)は縮小へ

10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=45.2ドル(当研究所による試算値)となり、9月の45.6ドルとほぼ同水準だった。ドバイ原油は10月には一時50ドル台まで上昇したが、足もとでは40ドル台半ばまで下落している。通関ベースの原油価格は11月に50ドル程度まで上昇した後、12月には40ドル台に下落することが見込まれる。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 ここにきて急進している円安は輸出入価格をともに押し上げるが、輸入のほうがドル建ての割合が高いため、輸入価格の上昇幅が輸出価格の上昇幅を上回るだろう。当研究所では原油価格が緩やかに上昇する一方、数量ベースの輸出は当面横ばい圏で推移すると予想している。このため、先行きの貿易収支(季節調整値)は黒字幅が縮小する可能性が高いだろう。
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年11月21日「経済・金融フラッシュ」)

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