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金融リテラシーは向上しているか―優先すべきは消費者視点に基づくチャネルの位置づけの再考―
生活研究部 井上 智紀
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4――金融リテラシー向上に向けて
本稿の分析からも明らかなように、活字媒体を活用することはリテラシー向上への寄与が大きいものの、こうしたプル型の媒体では消費者が関心を持って探索し辿り着く必要があり、短期間に広範な効果を求めることは難しい。多種多様な金融商品が存在する中では、消費者の金融リテラシーの向上は一朝一夕に実現できるものではなく、息の長い取組みが求められよう。一方で、消費者の金融関連の相談ニーズの受け皿としては、前述の推進会議の構成諸団体における相談窓口が用意されているものの場所や時間には限りがあるなど消費者がストレスなく利用できる状況とはいえず、現状ではほぼ売り手である金融機関の窓口に限られているように思われる。このように消費者利便性が高い相談先の代替案に乏しいことは、消費者が家計の資産形成上の不安や悩みを解決する術がなく、結果的にリスク商品を含めた多様な金融商品の活用を阻害する要因となっている可能性も危惧されよう。
今後、社会保障制度の縮小が確実視されるなど、家計における資産形成の重要性が高まっているなかでは、消費者の金融リテラシーの向上や、家計における多様な金融商品の活用促進に向けて金融機関が担うべき役割は大きい。金融リテラシーの向上に関連諸団体を含めた息の長い取り組みが求められることはいうまでもないが、多様な金融商品の活用を促していくためには、既存のチャネルについても消費者の相談ニーズの受け皿となるべく、消費者利便性の向上や相談先としての信頼性獲得に向けた取り組みなど、消費者視点に基づいてチャネルの位置づけを再考する必要があるのではないだろうか。
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(2016年04月14日「基礎研レポート」)
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