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超高齢社会の生活者を支援する介護ロボット-「介護ロボット元年」は着実に時を刻み始めるか -
青山 正治
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11月6~9日の4日間にわたり「2013国際ロボット展」が開催された。世界最大規模といわれるこの展示会では、「産業用ロボット」から「サービスロボット」までの、国内外の多彩なロボットが、2つのゾーンに分けられた広い会場に出展され、様々なデモンストレーションが行われていた。そして、今回の展示会では、「サービスロボット」の展示エリアに、経済産業省と厚生労働省が開発支援を行う「ロボット介護機器(介護ロボット)」の専用展示スペースが設けられていた。
筆者は、将来的に、開発中のこれら介護領域などの機器群が高齢者施設や高齢者の居る家庭、独居高齢者の住まいに普及し、高齢者の日常生活における様々な課題を解決するとともに、介護者の活動をも支援することを大いに期待している。なぜならば、高齢化の進行する社会において、さらに増加していく介助や介護を必要とする高齢者や筋力が衰えて自宅に引きこもりがちになり、孤独な状況に陥ってしまう高齢者等が抱える様々な課題を、全て人の手による取組だけで改善していくことは難しいと考えるからである。もちろん、人による暖かなコミュニケーションを伴ったサービスや支援の提供が大変重要であることに全く変わりはない。しかし、人によるサービスや支援を質量ともに充実させ、より効率的で効果的なサービスや支援を実現するためには、様々な課題解決に的確に応えることが出来る機器群の開発・普及やサービス(機器のレンタル事業等々)は必須である。
2013年は「介護ロボット元年」とも言われ、介護ロボット等の展示会やデモの様子がテレビのニュース等で短く報道されるだけでなく、特集番組が放送される頻度も増えている。9月に公表された内閣府の「介護ロボットに関する特別世論調査」でも、7割強の認知(注)が得られているとの結果であり、筆者が介護ロボットについて調査研究を始めた2011年頃に比べると様変わりの状況となっている。また、過去からのレポートのとおり、経済産業省と厚生労働省による開発支援や開発環境の整備、さらに実証試験の支援などの実用化支援事業が本格化している。従来から開発に取り組んできた企業が、継続して多数の機器群を開発し、世に送り出す一方、電子や精密機器等々の大企業から中小・ベンチャー企業においても、新たに参入意向を持つ企業が増加しているように思われる。これらを俯瞰していると、既存の複数の産業・企業の連携や産官学の連携、また産業特区等から、今後の超高齢社会の生活者の実生活を支える新たな事業の芽が一斉に吹き出していることを非常に強く感じる。
この重要な発芽期に、社会全体で、この事業の成長を見守り、応援することが必要ではないだろうか。そのためには、現在、ロボット介護機器や介護ロボット、福祉機器等々にあまり興味のない若い世代にも、自身の親族や将来的な自分自身の自立した生活の維持、さらに在宅介護等における介護者の負荷軽減を目指した介護ロボット等の開発動向をよく知ってもらうことが大変重要であると考える。そのことにより期待感を含めた潜在的需要が大きく膨らむことが、開発・普及を目指す多様な主体に取って大きな追い風となるからである。
同時に、新規性の高い分野だけに開発・普及にはハードルも多数存在するが、世界でも先進的取組を行っている日本の企業群には、ユーザーの持つ深いニーズを一歩も二歩も先取りして、普及要件を十分に満たした「世界初」の介護ロボットという財・サービスの提供に積極果敢にチャレンジして欲しい。
今回、筆者が会場を訪れたのが開催最終日の土曜日であったためか、同展示会が主にビジネスマン向けではあるにもかかわらず、一般の家族連れが多数来場していた。高齢者の外出や買い物を支援するパワーアシスト付の4輪の電動歩行アシストカーを神妙な顔つきで動かす家族連れや、音声認識システムが組み込まれたコミュニケーションロボットに話し掛け、その応答に歓喜する若者の姿等を見ていると、「介護ロボット元年」が着実に時を刻み始めていることを、改めて実感することができた。
・ 全体(N=1,842)の「どのようなものか知っていた(31.9%)」「話だけは聞いたことがあった(41.9%)」の合計73.8%を根拠としている。
(2013年11月7日)
(2013年11月27日「研究員の眼」)
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