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日韓比較(11):医療保険制度-その4 医薬分業―患者がより利用しやすい仕組みになることを願う―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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1――はじめに
2――日本における医薬分業
医薬分業が初めて公式的に示唆されたのは、アメリカの薬剤師協会使節団の影響を受けて、1950年7月厚生省に設置された臨時医療報酬調査会の答申からであり、その内容は「物と技術が不可分の形をとっている診療報酬を物と技術の報酬に区分して考えるべきである」であった1。それ以降1951年の医師法、歯科医師法および薬事法を改正し、医師の処方箋発行の義務化、薬剤師の処方箋による調剤などを明示したものの、医師会はこれに反発し処方箋を発行しなかった。医師会が医薬分業に反対した最も大きな理由は(1)薬局の調剤環境が十分整備されていないことと(2)技術料に対する評価が十分に行われていないことであった。医師会は施行前年である1954年に東京神田の共立講堂で全国医師大会を開催、強制的な医薬分業に絶対に反対するという決議案を採択した後、デモ行進を行った。一方、薬剤師会もその四日後に、同じ場所で全国薬剤師総決起大会を開き、医薬分業の完全実施を決議し厚生省へのデモ行進を行い、両者の対立は極まることになった。結局、1955年から実施される予定であった医薬分業は医師会の猛烈な反対等により法律を施行前に再度改正し、1956年4月から強制分業の代わりに任意分業の形で実施されることになった。しかしながら、それ以降医薬分業率2は継続して上昇しており、1986年に9.7%であった医薬分業率は2014年には68.7%まで上昇した(図1)。
1 吉原健二・和田 勝(2008)『日本医療保険制度史』東洋経済新聞社、240~241頁から引用。
2 医薬分業率(%)=薬局への処方せん枚数/外来処方件数(全体)×100
3 患者が病院内の薬局で薬を受け取る場合(院内処方)は「処方料」が、病院外の薬局で薬を受け取る場合(院外処方)は「処方箋料」がかかる。
(2015年12月04日「基礎研レター」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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