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2019年10月09日開催

パネルディスカッション

データエコノミー時代の企業戦略とは「データの収集と利活用」

パネリスト
田中 道昭氏 立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科) 教授
吉村 隆氏 日本経済団体連合会 産業技術本部長
矢嶋 康次 ニッセイ基礎研究所 研究理事 チーフエコノミスト
コーディネーター
櫨(はじ) 浩一 客員研究員

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5――データの収集と利活用

■櫨 非常に熱心にお話しいただきました。竹中先生からはデータが肝だというお話がありましたので、最初にデータの話をさせていただき、そしてその次に皆さんから日本企業の戦略と提言のようなこと、この二つの点に議論を絞らせていただきたいと思います。

今、データの話がいろいろ出てきまして、竹中先生からもビッグデータをいかに集めるのかが非常に大きな鍵になっているというお話がございました。この点について、日本は今、個人情報保護の話もあって、なかなかデータの利活用が進まないし、そもそもあまりデータを集められる体制にもない。中国などは国家資本主義という形で、国が主導的にデータを集めているという話もありました。まず田中先生から、先ほど必ずしも国が主導してやっているわけでもないというような話もあったのですが、企業の立場と国の関係というのは、中国ではどのようになっているのかということ、それからアメリカではデータをグーグルやアマゾンなどが集めているわけですが、どういう形でデータがどんどん集まっているのかというようなことをお話しいただけますでしょうか。

■田中 中国・米国との対比ですね。まず中国では、アリババ、テンセントが、BATHといわれているところを含めて、全ての中国企業といっても過言ではないと思いますが、中国政府と民間企業が表裏一体で動いているという認識をもつ必要があるということです。昨年、アリババのジャック・マーさんが退任を発表し、それから1カ月ぐらいして共産党員だったということがディスクローズされて、私の親しくしている中国の経営者はどういうセンチメントだったかというと、あれだけ頑張っても結局ああいうことをされてしまうのだということで、全ての中国企業は残念ながら民間企業とはなり得ないということでショックを受けていました。われわれ日本、日本企業としては、中国と中国企業は表裏一体だと考えなければいけないということでしょう。ただ、先ほどお話ししたように、当然、中国政府が、先ほどもスケーラビリティーを意識して、14億人のスケーラビリティーが最大の「株式会社中国」としての強みだということを認識してビッグデータを集めているわけですが、ただ同時に、個々の企業はカスタマーエクスペリエンスを重視しているからサービスが拡大しているのだというところは見逃せない。

それから、米国の企業のプラットフォーム企業も膨大なるデータを集めています。端的に言うとスマホを通じてですが。ただこれも見逃せないのは、われわれ、今にしてみると日経新聞の1面にこういうデータが取られていますということで多くの人が認識を持つようになりましたが、そういうことを言われない限りは、ビッグデータ、データを取られているという認識は、多分去年ぐらいまではあまりない一般の人が多かったと思うのです。ですから、あくまでも優れた商品・サービスを提供して、その見返りとしてデータを獲得しているというような構図があることを認識する必要がある。いろいろな規制をわれわれは考えなければいけないタイミングに来ていますが、ただ、遅れている日本、日本企業としては何を理解しなければいけないかというと、やはり米中のテクノロジー企業も優れたサービスやカスタマーエクスペリエンスを提供することにしのぎを削ってその対価としてデータを獲得していることなのです。生産性を上げたいとかあるいは企業の論理ではなく、あくまでもカスタマーエクスペリエンスを上げたいというところを一義として、その対価としてデータを受け取っているという構図を間違えてはいけない。カスタマーエクスペリエンスを第一義に考えないと、いつまでたってもデータだけ取れるということは多分ないと思います。

今、日本では情報銀行のようなことを言っていますが、これも僕はあまり広がるとは思っていません。なぜかというと、企業側・国家側の論理でしかないからです。多分、一人一人の消費者で、自分のデータを提供するので対価が欲しい、対価を得たいという消費者は相当限られていると思うのです。情報銀行ではなくて、われわれ日本が後発者としてやるべきなのは、一人一人の消費者に対して、例えば広告は今まで広告業界やプラットフォーマーが権益を握っていたわけだけれども、一人一人の消費者に広告の権利をエンパワーメントするとか、一人一人の消費者にエンパワーメントするのだという方向性でなければ、多分、商品・サービスは広がらない。後発者利益の話が出ましたが、実際は後発者利益を獲得するというのは非常に難しいことだとは思いますが、ただそういう視点に、われわれ日本人、日本企業が転換できたら、もしかしたら後発者利益は今から実現できるかもしれないなと、そのように考えています。

■櫨 どうもありがとうございました。では、次に吉村本部長からデータの利活用をもっと進めていこうという点について、例えば企業はこういう点に注意が必要だとか、経団連としてどう考えていらっしゃるか、と言う点についてお話しいただきたいと思います。

■吉村 これもいろいろな議論ができるのだと思いますが、一つは、先行している企業に学ぶべきところがあるとすれば、圧倒的にカスタマーに対して「いいね」と思われるサービスや製品をどうやって作るのかといったことは大事だと思います。つまり、それがうまくいけば、個人はこれまでよりもデータを喜んで出す、気を遣わずに出すことが増えると思います。例えば、インスタグラムなどは誰も頼んでもいないのに、いつどこで、何を食べて、どのような生活をしていたかと勝手に上げて喜んで、消費者はいろいろな個人のデータを出しているわけですね。そこに対して問題視するという話はあまり普段は聞かないと思います。そういう意味では、日本企業も圧倒的にいいねと思われるような顧客の、ユーザーエクスペリエンスを提示するようなものを考えていかなければいけないというのはひとつあると思います。

もう一つは、そうは言っても、先行する米中の企業がいろいろとやってきて、非常に影響力が強く、非常にドミナントな力を持っていることで、負の側面のようなものに焦点が当たっているのも事実だと思います。先行的な企業の方が、テクノロジーを突き詰めていったら社会的な善が実現すると思っていたのだけれど、どうもそうではないらしいみたいなことをおっしゃっていたり、あるいは、グローバルに見ても、データを取り扱うルールが必要だといったことをおっしゃるような時代になってきました。

私たち日本人は常日ごろから、何とかとハサミは使いようだよねというふうに理解しています。つまり、テクノロジー自体は中立的で、それをどういうふうに賢く使っていくのかがこれから問われるということだと思います。そういう意味では、これからデータやテクノロジーを使う議論がまたさらに深まっていく、新しいステージに来ているのかなと思っていまして、そういったところをどのように考えていくかがポイントではないかと思います。

■櫨 どうもありがとうございました。矢嶋チーフエコノミスト、最後にデータの話をされたのですが、この利便性や安全性など、この辺の関係についてどのように考えていらっしゃいますか。

■矢嶋 今のところ、日本では議論だけ先行して、個人情報が流出するのが怖いという話になっていると思います。本当に怖くなってくるのは、利便性が非常に高いサービスが一般的になりその対価として個人情報提供がが起こり、それが何かに出てしまったときに、本当に流出が怖いという話になるのだと思います。そういう意味では、今まだ日本のデータの深さがないというのが現状なのかなと私は思っています。

田中先生の話にもありましたが、消費者目線でどんどんやるというのは、多分、日本企業はこれから大規模にやらなければいけないとは思いますが。そのときに、今、携帯であり、いろいろなところが米中でもうある程度(データが)取られています。そういう意味では、毎日私たちが接するものの粘着性の高い、アプリなのかテレビなのか携帯なのか、下手をすると壁なのかトイレなのか分からないですが、私たちの生活の中で粘着性が非常に高くて、いつも毎日必ず見るもの・触るものからデータを取るということを考えるのが、私は後発の日本として今やらなければいけない話だと思っています。

実際に、もうアメリカ企業が強いところ、中国企業が強いところをやったところで消費者利便性から考えるともう圧倒的に負けているので、駆逐されるだけだと思っているので、何でというところの議論をもっとやることで、データを集められるというのが一つ目。

それから二つ目は、日本の企業とお話しすると、データを集めなければいけないという話になったときに、それで何ができるのかという議論をされるのです。ではなくて、今、僕たちが困っているのはデータの数が圧倒的に少ないことです。なので、何でもいいから集めようという逆算の話になぜならないのかというのが、日本の企業と話をしていて非常に残念なところだと私自身は感じています。以上です。

■櫨 2点、私は心配していることがありまして、一つは、今、プラットフォーマーというので、日本の企業が圧倒的に後発になっているという話がありました。大きなデータを集めるというような話は、例えばグーグルで検索のデータが全部集められてしまうとか、あるいはアマゾンで購買データが全部集められてしまうというように、大きなところはもうプラットフォーマーに押さえられてしまっているのではないかという感じがあります。今から日本の企業が後発で追い掛けていって、果たしてデータがうまく集められるものなのだろうかという疑問があるのですが、パネリストの皆さんはどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。では順番に田中先生からお願い致します。

■田中 そうですね、矢嶋さんの最後の話にもあったように、もうゲームのルールを変えるしかないですよね。今の米中のプラットフォーム企業のゲームの上に乗っ取っても、もう勝ち目はないので。そういう意味では、正直インパクト不足になってきて、2年前と比較してあまり期待は持てないなと最近は思っているのですが、著作の中で評価してきたのはメルカリです。メルカリはCtoC、PtoP、CtoCとのつながりということでビジネスをやって日本では大きく成長してきました。メルカリみたいに、CtoCやPtoPで全く違うゲームのルールでプラットフォームを築くという、違うゲームのルールで勝負するというのが一つでしょう。

それから二つ目は、日本も来年から5Gになりますよね。まず5Gは、ご案内のとおりBtoBのビジネス、IoTなどから広がるとは思いますが、どこかのタイミングでは、ガラケーからスマホに変わったときにいろいろなプラットフォーマーが新しく生まれたように、5Gになることでいろいろなものが変わる。最初はIoT、BtoBかもしれない。でも、早晩、5Gになることで、動画やARやVRがより使われるようになる。そうすると、僕は何を予想しているかというと、多分2年後ぐらいだと思いますが、最初にスマホを開けたときに見るアプリが多分決定的に変わってくる。恐らく、今存在していないものがスマホの中のプラットフォーマーになると思っているので、そういう意味では、まだそういうものが生まれてきていないので、日本企業は、その5G時代のプラットフォーマーになれる可能性を持っている。具体的に言うと、ガラケーからスマホに変わったときにコミュニケーションアプリとしてはLINEが覇権を握ったわけです。それと同じように、全く新たな、恐らく動画やARやVRを集積したようなものになってくると思いますが、今はまだ、多分、形すら表れていないものだと思いますが、恐らくそこには、シェアリングやサービシングといったものも駆使されてくると思いますが、5Gが浸透してきて、よりBtoBからBtoCに利用可能なタイミングになったときに、確実にゲームのルールが変わると思うので、そこでプラットフォームを取りにいこうという日本企業が現れるのか現れないのかが大きな分岐点になると思います。

ただ、非常に残念に思うのは、2~3年前にアマゾンが音声認識AIアシスタントであるアマゾンアレクサを開発して、グーグルがすぐに追い付いて、2年前のCSに行くとその2社だけだったのが、去年行ってみると、いろいろな国の企業が、アリババだとアリOS、バイドゥだとデュアOS、サムソンなどもあきらめずにやっているわけです。ところが日本企業で音声認識AIアシスタントの覇権自体を握ろうという会社は、LINEを日本企業とするとLINEぐらいしかない。ソニーもNECも、どこもそこにはチャレンジしていない。むしろ、グーグルやアマゾンアレクサのプラットフォームに乗っかっていることしかやっていない。だとすると、5Gの時代になっても、もしかしたらプラットフォームを取りにいく会社は現れないかもしれませんが、この20~30年単位で考えたときに、最後の最後のチャンスは、5Gがより社会実装されてきたときに、プラットフォームを日本企業がかつてのように取れるかが、多分、根源的分岐点になるのではないかと思います。

■櫨 どうもありがとうございます。次に吉村本部長にお聞きしたいのですが、先ほどリアルの世界では日本はまだまだ競争力があるのだ、中でも、医療や介護のデータということをおっしゃいました。先ほど矢嶋チーフエコノミストはデータが取れないということを言ったのですが、この領域では結構データはあるのに、実際には使えないという問題があるのではないかと思います。本部長はどのようにお考えになっていますか。

■吉村 非常に難しいですが、データはあるといえばあると思っていますが、使えるようになっているものがあるかどうかが課題として結構大きく、例えば、公共関係のデータでも、あるといえばあるけれども各省にばらばらにあるとか、統一的にどうなっているか分からないとか、あるいは、あるのだけれど実はPDFでしか持っていませんとか、データを利活用する前提でフォーマットがそろっていないといった問題もあります。ということで、データは、一定程度あるのだけれども、使いこなせるようになっていないという問題と、それから、もしかしたら、そもそもデータを取れてないというのと両方あるのではないかなという気がします。

なので、いろいろな意味で、データ自体は持っているだけでは価値を生まないので、やはり利活用するために、ルールを作りながらではありますが、使うことによってどういう付加価値が出て、サービスが出て、一般の人たちにどういうメリットがあるのかを丁寧に示しながら、一方で使えるようにデータの整備をしていくと、両方やっていかなければいけないのかなというのが私の感じです。

例えば、東日本大震災の頃に、道はどこが通れるか通れないかというような話がございました。基本的に自動車会社は、各社で自分のところの自動車がどう動いているのかは把握していました。公共機関は公共機関でデータを持っていました。これを全部、非常事態ということで統合したら、どの道が通れてどの道が通れなかったか、そうすると支援物資をどのルートを使えば行けるのかというようなことがリアルに見えるようになりました。これは、データを合わせて使うことによって、新しい付加価値や望ましい社会をつくれるのだという一例だったと思います。そのような良い面もぜひアピールしながら、データの利活用に際しての、必要以上のアレルギーを何とか取り去って、この国でもデータ利活用をもう少し進めていけないかというのが私の考えです。

■櫨 どうもありがとうございました。矢嶋チーフエコノミスト、何かあれば。

■矢嶋 データのところの話ですか。先ほど少し言いましたのでそれでいいです。
 
■櫨 それでは時間もだいぶ押してきましたので、最後に皆さんから結論的な意味で、日本の企業はこうしたらいい、これだけはやってもらわないと困るというようなことを、お一方ずつ、2~3分くらいでお話ししていただければと思うのですが、田中先生からお願いしてよろしいですか。

■田中 そうですね。日本企業がどうしたらいいかという結論、何を最後にお話ししたらいいか分からないのですが、ソフトバンクグループの話でもしようかなと思います。ソフトバンクグループは今、ウィーワーク問題で相当、また別の意味で注目を集めていますが、米中メガテック企業との覇権争いという視点で考えたら、僕は日本の活路は多分ソフトバンクグループぐらいしかないのではないかと思っています。孫さんは去年の株主総会で初めて交通機関プラットフォームという言葉を使いました。二つ前の四半期決算の場ではAIトラフィックという、先ほどトラフィックという話が出ましたが、AIトラフィックという言葉を使って、これからの5年後10年後のグローバルの時価総額のトップ5は、いかにAIトラフィックを獲得できた企業なのかということで、はっきりとはおっしゃいませんでしたが、5年以内10年以内には時価総額のトップ5、できればトップ1になりたいと思ってAI戦略をやられているのだと思います。

その一方で、孫さんは誤差という言葉を2年ぐらい前から言い始めて、近い人にお伺いすると、1兆円未満のプロジェクトはもう誤差だということで、それら全てが誤差になってしまったので、多分、なかなか細かいことを見なくなった。僕はウィーワーク問題の本質は、誤差×神聖化×過剰なリスクテーキングだと思っているのですが、誤差と言い始めて、いろいろなものを細かく見なくなった。それから、孫さんあるいは孫さんが非常に高く評価している経営者は神聖化されている。神聖化された対象に対してはいろいろな金融機関も含めて資金が付くようになって、過剰なリスクテーキングが始まっているという問題が顕在化したのがウィーワーク問題だと思っているのですが、ただ、日本の活路という話に話を戻すと、恐らく孫さんが考えている2025年の世界というのは、まずは交通機関プラットフォーマーになるということです。言うまでもなく、DiDiやウーバーなどの投資先ライドシェア会社をすべて合わせると世界の9割ぐらいのマーケットシェアをソフトバンクグループは確保している。それからエネルギーです。太陽光も含めて、エネルギーにもかなり投資をしている。それから、元々日本では、三大キャリアの1社であるということで、まずは、交通機関、モビリティ、そしてエネルギー、それから通信、そこを押さえて、さらにいろいろなところに展開することで、恐らく社会システム全体のプラットフォーマーになれる可能性がある数少ない会社がソフトバンクグループかなと思いますし、そうなったときには、恐らく2025年に、ソフトバンクグループの世界というのはまずいろいろな「ペイメント」で今お話ししたような全てのサービスをつなげてくる。それから、「サービス」で一連のサービスをつないでくる。最終的には恐らく「サブスクリプション」で一連のサービスをつなげてくる。例えば5万円払ったら、いろいろな乗り物にしてもいろいろなサービスにしても、使いたい放題のような感じでサブスクリプションにつなげてくる。

ですから、日本においては、ソフトバンクグループが何をやっているのか、何をやろうとしているのかをきちんとベンチマークするというところが重要だと思います。ここから2年ぐらいはソフトバンクグループは株価などいろいろなところでも厳しい局面を迎えると思いますが、実現には時間はかかると思いますが、孫さんが5年単位10年単位で何をやろうとしているのかということをしっかり考えて、そこから逆算して自分たちの会社は何をするのかというのは、日本においては、ここから数年先は、GAFA、BATH以上に重要になると思います。そもそもアリババの筆頭株主でいらっしゃいますからアリババも含めてですが、日本においてはやはりソフトバンクグループが何をするのかは見逃せない。そことどう組むのか、どのように戦っていくのかが非常に大きな活路になるのではないかと思います。ただ、恐らくここから先2年ぐらいは、非常に厳しい展開もワーストケースでは予想されるかなとも思います。大きな機会にもなり、大きな脅威にもなる。このようなことでお答えとさせていただきます。

■櫨 ありがとうございました。吉村本部長には先ほどお話が途中になったのではないかと思うのですが、フィジカル空間からサイバー空間への展開ということで、通常われわれは、プラットフォーマーが全体を支配するような世界を思い浮かべるのですが、実際のリアルなところからプラットフォームの方に行くというのが、日本の企業の勝ち方のパターンだというような絵が、13ページにありました。私はこれは面白いなと思ったのですが、この辺も少し詳しく敷延していただきながら、Society 5.0の考えている日本企業のこれからの企業戦略をお話しいただければと思います。

■吉村 日本企業は元々物作りのようなところが強いということは言われていました。決して物作りが古くなったとは思っていなくて、物作りで優れているからには、そこに至るまでの間にいろいろな技術、ノウハウ、それから経験といったものが実は、データと呼ぶかどうかは別として、たくさんあったと思います。そういったものが、恐らくこの国の企業にはたくさんあるということで、それに先端技術を、人工知能も含めて入れていくことで、日本の物作りが再生というか、新しい形でアドバンテージをとれるのではないかと思っています。

あとは、プラットフォームの議論が先ほどありましたが、プラットフォームビジネスが成功することが、今後永続的にそうなるかどうかというのはまた別の問題で、先ほど来、先生方からお話がありましたように、ビジネスモデルをどう変えるのかという問題がありますし、それをひっくり返すような技術が新たに出てくるかもしれない。そういった中で、戦いというのは常に続いていくと思っています。そういう意味では、日本企業というのはなかなか変革が難しいところはありますが、先ほど私も少しご説明しました、ベンチャーのようなものを含めたオープンイノベーションだとか、あるいは企業の中の文化を変えることが必要だと思います。新しいことに踏み出そうとすると社内でカニバリが起こるので、やめておこうというようなことが結構あります。他方で、先ほど矢嶋さんからも銀行業の例がありましたが、根っこから、何とか業というものの在り方が変わってくるみたいなものが確かに起きてきているということですので、やはり変わることを恐れない、常に変わり続けるというマインドを持ちながら戦っていけば、まだまだ日本企業も将来明るいものがあると私は信じているところです。以上です。

■櫨 どうもありがとうございました。それでは矢嶋チーフエコノミストお願いします。

■矢嶋 私は日本でデジタルトランスフォーメーションは絶対起こさないといけない、国際競争力の問題だったり、日本の人口が減るという問題に対して、やらないといけないと思います。ただ、この分野は寡占化・独占化が起こりやすいので、時間がないということを、もう少し経営の最重要課題の上の方に持っていく必要があると思います。基本的には、成功シナリオがあるのだったらみんなやっているわけで、なかなか難しいというのが現状だと思うのですが、やれる人にやらせるということが非常に重要だと思っています。

そのときに何が重要かというと2点。一つは、今起こっている話、私は今のサブスクやシェアの話はどちらかというと嫌いです。自分ではシェアもしませんし、サブスクもしません。そういう意味では、価値観が変化していることに対して、価値観が変化している人に任せるということ。それから、今の起こっている話はテクノロジーが非常に速いので、テクノロジーのある方にやってもらうという意味において、相対的に若い人にやってもらうことが非常に重要なのだと思うのです。大きく長くやられている会社の方からすると、価値観が変わった、そして技術がある若い人に権限を譲渡するというのはなかなか組織的に難しいとは思うのですが、トライとか、何でもやってみないといけない状況に来ているのだと思います。データを集めて何になるのではなくて、やってみて何かを、失敗を、体験を積み上げるということしかなくて、スピードを上げながら、失敗して、またトライして、失敗してということを繰り返すしか、もう方法としてはないのではないかなと思っています。以上です。

■櫨 どうもありがとうございました。コーディネーターのマネジメントがあまりうまくなく、議論が少し中途半端で誠に申し訳ありませんが、そろそろ時間になってしまいましたので、この辺でまとめに入らせていただきたいと思います。皆さんの議論はあまりにも広範なのでまとめることができません。私が印象に残ったことをお話してまとめに代えさせていただきたいと思います。

まず基調講演の竹中先生のお話の中で、データがキーだというお話があって、この議論も進んできました。データを集めるという話について、今までの貿易摩擦とは違って、米中の対立が非常に根深く、簡単には収拾がつかないものだ、非常に根深くて、これからも長く続くだろうというお話がありました。何となくトランプ大統領がいろいろな貿易摩擦を起こしているような印象がありますが、そうではなく、これはデータの話から考えていくと、まだまだ続くとわれわれは覚悟しなければいけないのではないかという話がまず印象深かったことです。

二つ目は、顧客の満足度というお話で、これを求めていくことが非常に重要だという話が、パネリストの方々皆さんがおっしゃったことかと思います。生産性を上げるとか、企業側の論理だけでやっていくと消費者の支持を得られない。だから消費者が支持してくれるものでないと生き残れないというお話が非常に印象的だったと思います。

三つ目は、変わるということで、この今回の議論も単純に企業のやり方を少し変えるとかいう話ではなく、社会も企業も今までとやり方をごっそり変えていかなければいけない。考え方も非常に大きく変える必要がある。そうするためにはスピードも必要だとということです。以上が今回のディスカッションで印象に残った内容です。そこがポイントではないとおっしゃるかもしれませんが、これをパネルのまとめとさせていただきたいと思います。

長時間にわたり、パネリストの皆さま、どうもありがとうございました。これにてパネルを終了します(拍手)。

【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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