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2025年11月05日

完璧な成果より「誠実な経過」を-ブランド透明性が生みだす信頼とサステナビリティ開示のあり方(2)

生活研究部 准主任研究員 小口 裕

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■要旨
 
  • 前稿では、企業の社会貢献活動に関する外部開示のあり方とブランディングの関係について、ブランド透明性に関する先行研究に基づき分析した。本稿も同テーマを引き継ぎ、若年層を題材に分析を試みる。
     
  • 若年層の企業の社会貢献活動に対するスタンスは、支持は高い一方で、他者・地域への利他的な志向は相対的に低く、両者に乖離がみられると言われる。
     
  • この背景について、先行研究によれば、消費者は企業の社会貢献活動において「完璧な成果」よりも「誠実な途中経過」を評価する傾向を指摘しており、特に若年層でその傾向が強いと思われる。ニッセイ基礎研のレポート「Z世代にとってサステナビリティは本当に『意識高い系』なのか」では、Z世代は「ピュアな利他性」の強調に慎重で、過度な「サステナ=良いこと」アピールに作為性や押し付けを感じがちだと分析している。
     
  • また、別の研究によれば、情報開示を通じて信頼を得るのは、社会貢献の成果や完璧な企業像ではなく、むしろ「課題を率直に開示し、誠実に改善を重ねる姿勢」であると指摘されている。
     
  • 本稿で参照した先行研究やデータを踏まえると、企業の社会貢献活動の情報開示は、ブランディングの観点から、単に成果を誇示するショーウィンドウ型(成果を一方的に見せる)や、目標未達に形式的に触れるのみのモノローグ型(企業が独りで語る)では不十分であると思われる。それでは、どのような情報開示がよりより効果的なのか。本稿では、先行研究や事例に基づいて考察を深めていく。


■目次

1――はじめに
2――若年層が信頼するのは「理想」ではなく「確かめられる誠実さ」
  1|若年層のサステナビリティ意識の特徴~企業への信頼と自身の利他性の間の「乖離」
  2|「完璧さ」より「裏切らない誠実さ」~信頼を生む途上の透明性
3――御社のブランドは澄んでいるか?-鍵となるのはブランド透明性
  1|「完璧な成果」よりも「誠実な経過」~ブランドへの信頼を生み出す「意図」
  2|ダンデム型の情報開示~ブランディングにどうつなげるか
4――敢えて自社に不利な情報を開示する姿勢
5――まとめ~一貫したブランド透明性が信頼資本をつくる

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年11月05日「基礎研レター」)

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生活研究部   准主任研究員

小口 裕 (おぐち ゆたか)

研究・専門分野
消費者行動(特に、エシカル消費、サステナブル・マーケティング)、地方創生(地方創生SDGsと持続可能な地域づくり)

経歴
  • 【経歴】
    1997年~ 商社・電機・コンサルティング会社において電力・エネルギー事業、地方自治体の中心市街地活性化・商業まちづくり・観光振興事業に従事

    2008年 株式会社日本リサーチセンター
    2019年 株式会社プラグ
    2024年7月~現在 ニッセイ基礎研究所

    2022年~現在 多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)
    2021年~2024年 日経クロストレンド/日経デザイン アドバイザリーボード
    2007年~2008年(一社)中小企業診断協会 東京支部三多摩支会理事
    2007年~2008年 経済産業省 中心市街地活性化委員会 専門委員

    【加入団体等】
     ・日本行動計量学会 会員
     ・日本マーケティング学会 会員
     ・生活経済学会 准会員

    【学術研究実績】
    「新しい社会サービスシステムの社会受容性評価手法の提案」(2024年 日本行動計量学会*)
    「何がAIの社会受容性を決めるのか」(2023年 人工知能学会*)
    「日本・米・欧州・中国のデータ市場ビジネスの動向」(2018年 電子情報通信学会*)
    「企業間でのマーケティングデータによる共創的価値創出に向けた課題分析」(2018年 人工知能学会*)
    「Webコミュニケーションによる消費者⾏動の理解」(2017年 日本マーケティング・サイエンス学会*)
    「企業の社会貢献に対する消費者の認知構造に関する研究 」(2006年 日本消費者行動研究学会*)

    *共同研究者・共同研究機関との共著

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