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- 日銀短観(9月調査)~トランプ関税の影響は依然限定的、利上げ路線をサポートするも、決め手にはならず
2025年10月01日
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■要旨
- 9月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感がわずかながら改善した。関税を巡る日米合意や堅調な設備投資需要が支援材料になった。一方、非製造業では、物価上昇に伴う消費者マインドの低迷やインバウンドの伸び悩み等を受けて、業況判断DIが横ばいに留まった。
- 先行きの景況感は総じて悪化が示された。高関税の継続や予測困難なトランプ政権の出方に対する警戒感が燻っているとみられる。非製造業では、物価高による消費の減速や各種コストの増加、人手不足への懸念が反映されたとみられ、先行きの景況感が明確に悪化している。
- 2025年度の設備投資計画(全規模)は、前年比8.4%増へと上方修正された。上方修正幅は例年と比べてもやや大きめだ。企業収益が堅調を維持する中で、省力化や脱炭素、DXの推進など構造的な課題への対処に向けた投資需要がけん引したとみられる。また、関税の水準が一旦定まったことで、一部で投資計画を具体化する動きが出た可能性もある。
- 企業の「物価全般の見通し」や「販売価格の見通し」は前回からほぼ変わらず、中期的なものも含めて企業のインフレ予想が高止まりしている様子を示唆している。
- 今回の短観においてトランプ関税の影響が限定的に留まったことは、日銀の利上げ継続路線をサポートする内容と言える。しかし、筆者としては、今回の短観は早期利上げの決め手にはならないと見ている。なぜなら、日銀は直近9月MPMの声明文やその後の総裁会見でも、「トランプ関税等の影響を受けて今後の成長ペースは一旦鈍化し、基調的な物価上昇率も伸び悩む」とのシナリオを崩していないためだ。今回の短観は、関税の影響がこれから顕在化してくるという日銀の中心的な見方を覆したり、警戒感を払拭したりするものではない。従って、日銀は当面、関税の影響の広がり等についてハードデータも含めて確認することに注力すると予想している。
(2025年10月01日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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