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- トランプ関税前後の貿易状況
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1――要旨
現時点では、米国の貿易統計が5月分まで公表されており、関税の引き上げで米国の輸入にどのような変化が生じたのかについて、一部が明らかになっている。
本稿では、トランプ関税前後の対米貿易(特に米国の輸入)を統計データから確認する。得られた主な結果は以下の通りである。
・米国の貿易収支は24年末から25年3月まで輸入急増を要因として貿易赤字が拡大した。特にスイスからの金輸入、アイルランドからの医薬品・有機化学品輸入が増加しており、いずれもトランプ関税に関連した駆け込み輸入と見られる。
・4月以降、関税が大幅に引き上げられたものの、米国の4月以降の輸入金額は全体でみれば前年並みで、大幅な落ち込みは見られない。ただし、品目別に見ると品目別関税の対象である自動車輸入減少を機械・電子機器類の輸入増加が相殺、地域別には中国やカナダからの輸入減少を台湾やベトナムといったアジアからの輸入増加が相殺している構図となっている。
・関税収入は相互関税など大規模な引き上げが実施されたため4月以降に急増、国勢調査局の推計では関税率は2%強から9%弱まで上昇した(図表)。対中関税は、米中間で一時100%を超える関税引き上げが実施されたこともあって30%ポイント以上上昇し、5月の対中関税率は40%を超えた。主要地域では中国に次いで日本の関税率の上昇幅が大きく、自動車など高めの税率が課されている品目別関税の対象製品を多く輸出していることが影響している。
・(関税を除く)輸入物価への影響については、4月以降も輸入全体で見れば大きな変化はない。ただし、日本の自動車輸出価格が大きく下落するなど、一部では価格の低下が見られる。
2――トランプ関税を巡る概況
また、5月8日には英国と関税に関する大筋合意(「米英経済繁栄協定(EPD)」)がなされた。英国は米国からの農産物に対して無税枠を設定し輸入拡大(米国から見れば輸出拡大)を図るなどの措置、米国は英国の自動車輸入に低関税輸入枠(年間10万台)の設定といった品目別関税の軽減措置などが含まれる。7月にはベトナムとも貿易協定の締結で合意したと報じられ、ベトナムは米国からの輸入関税をゼロとする一方、米国は相互関税を基本関税込みで20%(当初は同46%)に引き下げるとされている(ただし「迂回輸出」された製品は40%関税)。
1 このほか、相互関税の対象からスマホやパソコン、半導体製造装置の除外(半導体関連の品目別対象に分類、4月11日公表、4月5日に遡及適用)といった修正が実施されている。
3――輸入額、関税収入への影響
2 本稿では主にHS2桁コードの品目を抽出しており、実際の課税品目と完全には一致していない点に留意(以降も同様)。
3 内閣府(2025)「アメリカの金の輸入の急増の背景とGDPに与える影響」『今週の指標 No.1377』も参考。アイルランドからの医薬品輸入については、Chelsey Dulaney and Jared S. Hopkins「減量薬で膨張する米貿易赤字」The Wall Street Journal(日本語版)2025年6月25日も参照。スイスやアイルランドからの輸入が急増したことを受けて、6月に公表された米財務省の外国為替報告書では、新たにスイスとアイルランドが監視対象となった。U.S. Department of the Treasury, Treasury Releases Report on Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States, June 5, 2025(2025年7月7日アクセス)。
(2025年07月07日「基礎研レター」)

03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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