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インフレ時代にオフィス市場で普及が進むと期待されるCPI連動条項
佐久間 誠
オフィスビル総合研究所 主任研究員 松尾 和史
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本稿では、インフレ時代におけるオフィス市場の見方と、CPI連動条項の導入におけるポイントについて、アナリストの視点から解説する。
1――「失われた30年」からの脱却。インフレの時代へ
インフレが当たり前の時代では、オフィス市場においても、従来のデフレ的な経済観にもとづく戦略や分析手法を再検討する必要がある。
2――“名目”賃料は上昇傾向に、しかし“実質”的には割安な状態が続く
オフィス市場の実勢を的確に捉えるには、物価変動の影響を除いた実質賃料に着目することが重要になる。本稿では物価の基調的な変動を考慮するため、天候に左右されやすい生鮮食品の影響を除いたコアCPI(全国、生鮮食品を除く総合)を用いて名目賃料を実質化した。2000年から2022年までの期間においては、コアCPIがほぼ横ばいで推移したため、一般に参照されることが多い名目賃料と、物価変動を考慮した実質賃料の間に大きな差はなかった(図表2)。しかし、2022年以降はコアCPIが上昇に転じたことで両者の乖離が広がり、2024年以降は名目賃料が上昇する一方で、実質賃料は概ね横ばいで推移している。
従来の賃料上昇局面は、主として需給環境の改善に伴う市場の実力を反映した動きだと考えられる。しかし、今回の名目賃料の上昇が、市況の回復によるものなのか、それとも単に物価上昇を反映したものであるか、あるいはその双方の要因が混在しているのかについては、慎重な分析が必要である。少なくとも、実質ベースでの賃料が上昇していないという事実は、市場の回復が力強さを欠いている可能性を示唆している。このように、オフィス市場における賃料変動を評価する際に、従来の需給バランスに加え、物価動向についても考慮に入れることが重要になっている。
3――インフレ時代における賃貸借契約:CPI連動条項とは
一方で、インフレを前提とした制度設計がなされている海外においては、既存テナントの賃料をCPIに連動させる等によって自動的に改定する条項を賃貸借契約に盛り込むことが一般的である。具体的な内容は契約によって様々であるが、基本的な考え方は、インフレ環境下において賃料の実質的な価値を維持するため、インフレに合わせて賃料を機械的に変更するというものである。
日本国内においても、契約期間が長期に及ぶ物流施設では、CPI連動条項の導入が進みつつある。物流不動産に特化したREITであるGLP投資法人では、ポートフォリオ全体の62%でCPI連動条項を導入しており、インフレ対応に向けた取り組みを進めている(2025年2月末時点)。
オフィスにおいても、CPI連動条項の導入に向けた検討が活発化している。現時点では、CPI連動条項を実際に導入した事例は非常に限られているが、大企業や外資系企業を中心に、CPI連動条項に関する交渉が各所で進められている。
(2025年06月23日「不動産投資レポート」)
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