- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険会社経営 >
- APRAによるガバナンス強化の提言について-オーストラリアの健全性規制
2025年04月01日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2――提言の詳細
ここでは各提言の内容について、「現行の要件」「課題意識」「対応」という観点で整理する。
1|取締役会に求められるスキルと能力について
(1)現行の要件
現行の要件は、取締役会に対し「規制対象会社を適切に管理するために必要なスキル、知識、経験を有すること」を求めており、各取締役に対しては「取締役会の審議およびプロセスに効果的に貢献できるスキルを有していなければならない」としている9。また、取締役会は年1回、パフォーマンス評価を行うことが義務付けられている。なお、個々の取締役に対するスキル・能力にかかる最低要件の設定や、不履行への対応に関する明確な要件はない。
9 健全性基準CPS 510およびSPS 510
(1)現行の要件
現行の要件は、取締役会に対し「規制対象会社を適切に管理するために必要なスキル、知識、経験を有すること」を求めており、各取締役に対しては「取締役会の審議およびプロセスに効果的に貢献できるスキルを有していなければならない」としている9。また、取締役会は年1回、パフォーマンス評価を行うことが義務付けられている。なお、個々の取締役に対するスキル・能力にかかる最低要件の設定や、不履行への対応に関する明確な要件はない。
9 健全性基準CPS 510およびSPS 510
(2)課題意識
現行要件である「貢献できるスキル」の判定方法が不明確である。また、年一回のパフォーマンス評価においても、取締役会や取締役がこれらの要件を満たしているかをどのように評価するかについて規制対象会社がかなりの裁量権を持ってしまっている。その結果、APRAはこれらのプロセスの有効性について規制対象会社間で大きなばらつきがあると認識している。特に、以下のような課題が挙げられている。
・期待される経験・資格・能力について特定しておらず、またどのように測定されるか考慮していない。
・個々の取締役について、役割を果たすための最低要件を特定していない。
・スキルや能力の評価が自己評価に大きく依存している。
・求められる要件と実態とのギャップに対して、専門能力開発や後継者育成計画を通じてギャップを解消する措置を講じていない。
現行要件である「貢献できるスキル」の判定方法が不明確である。また、年一回のパフォーマンス評価においても、取締役会や取締役がこれらの要件を満たしているかをどのように評価するかについて規制対象会社がかなりの裁量権を持ってしまっている。その結果、APRAはこれらのプロセスの有効性について規制対象会社間で大きなばらつきがあると認識している。特に、以下のような課題が挙げられている。
・期待される経験・資格・能力について特定しておらず、またどのように測定されるか考慮していない。
・個々の取締役について、役割を果たすための最低要件を特定していない。
・スキルや能力の評価が自己評価に大きく依存している。
・求められる要件と実態とのギャップに対して、専門能力開発や後継者育成計画を通じてギャップを解消する措置を講じていない。
(3)対応
第一に、すべての規制対象事業体に対して継続的に、取締役会が組織戦略を実現し、その役割を果たすために必要なスキル・能力・行動特性を明示し、文書化することを求めることを提言した。これらは明確に定義されスキル・マトリックスとして文書化されるべきであるとした。この文書化には、取締役会議長(chair)、取締役会委員会(board committees)委員長、その他の取締役個人に対する具体的な期待事項を含み、スキルは測定・検証可能であるべきであり、行動属性は観察可能であるべきであるとした。また、目標とするスキル、能力、最低基準は、企業の事業ニーズ、規模、複雑性に見合ったものでなければならないとした。
第二に、APRAは、規制対象事業体に対し、取締役会が既に有しているスキルや能力を評価し、専門能力開発、後継者育成、新規任命を通じて、ギャップを是正するための積極的な措置を講じていることをAPRAに証明するよう提言した。APRAは、取締役会の候補者を検討する際、各新任者が能力格差の解決に向けて前進するよう、事業体が現状のスキルギャップを考慮することを期待している。
APRAは当提言について、すでに取締役会の能力に対して適切なアプローチを採用している企業には影響しないものとしている。
第一に、すべての規制対象事業体に対して継続的に、取締役会が組織戦略を実現し、その役割を果たすために必要なスキル・能力・行動特性を明示し、文書化することを求めることを提言した。これらは明確に定義されスキル・マトリックスとして文書化されるべきであるとした。この文書化には、取締役会議長(chair)、取締役会委員会(board committees)委員長、その他の取締役個人に対する具体的な期待事項を含み、スキルは測定・検証可能であるべきであり、行動属性は観察可能であるべきであるとした。また、目標とするスキル、能力、最低基準は、企業の事業ニーズ、規模、複雑性に見合ったものでなければならないとした。
第二に、APRAは、規制対象事業体に対し、取締役会が既に有しているスキルや能力を評価し、専門能力開発、後継者育成、新規任命を通じて、ギャップを是正するための積極的な措置を講じていることをAPRAに証明するよう提言した。APRAは、取締役会の候補者を検討する際、各新任者が能力格差の解決に向けて前進するよう、事業体が現状のスキルギャップを考慮することを期待している。
APRAは当提言について、すでに取締役会の能力に対して適切なアプローチを採用している企業には影響しないものとしている。
2|適合性と適正性について
(1)現行の要件
適合かつ適正な方針は、リスク管理の枠組みの鍵であるとし、適合性・適正性を欠く責任者が事業や財務状況にもたらすリスクを慎重に管理しなければならない。
事業体は、取締役、上級管理職(senior manager)、監査役やアクチュアリーを含む業界法令で規定されたその他の特定の個人を含む責任者の適合性及び適正性を判断するための方針及び手続を備えていなければならない。
適合性と適正性の定義には、その人のスキル、経験、知識だけでなく、正直さや誠実さも含まれる。利益相反は評価の一部として考慮されるが、潜在的な利益相反や利益相反とみなされるものについては言及されていない。APRAのガイダンスには、責任者の適合性と適正性を検討する際に考慮すべき事項が列挙されているが、最終的な判断は事業体に委ねられている。
また、適合性・適正性に懸念が生じた場合、責任者の適合性・適正性の全面的な再評価を行う義務があるが、その人物が適合性・適正性に欠けると判断されない限り、APRAに通知する義務はない。個人が適格性なしと評価された場合、事業体は、その人物が責任者として任命されないこと、またはその地位を継続して保持しないことを確実にするために、あらゆる合理的な手段を講じなければならない。事業体のポリシーには、そのような場合にとるべき行動を明記しなければならない。
なお、取締役等が役割を遂行するための時間的余裕を有しているか、刑事犯罪歴等の有無、風評リスクなどの重要な事項について、任命にあたり考慮するよう求める規定は存在しない。
(1)現行の要件
適合かつ適正な方針は、リスク管理の枠組みの鍵であるとし、適合性・適正性を欠く責任者が事業や財務状況にもたらすリスクを慎重に管理しなければならない。
事業体は、取締役、上級管理職(senior manager)、監査役やアクチュアリーを含む業界法令で規定されたその他の特定の個人を含む責任者の適合性及び適正性を判断するための方針及び手続を備えていなければならない。
適合性と適正性の定義には、その人のスキル、経験、知識だけでなく、正直さや誠実さも含まれる。利益相反は評価の一部として考慮されるが、潜在的な利益相反や利益相反とみなされるものについては言及されていない。APRAのガイダンスには、責任者の適合性と適正性を検討する際に考慮すべき事項が列挙されているが、最終的な判断は事業体に委ねられている。
また、適合性・適正性に懸念が生じた場合、責任者の適合性・適正性の全面的な再評価を行う義務があるが、その人物が適合性・適正性に欠けると判断されない限り、APRAに通知する義務はない。個人が適格性なしと評価された場合、事業体は、その人物が責任者として任命されないこと、またはその地位を継続して保持しないことを確実にするために、あらゆる合理的な手段を講じなければならない。事業体のポリシーには、そのような場合にとるべき行動を明記しなければならない。
なお、取締役等が役割を遂行するための時間的余裕を有しているか、刑事犯罪歴等の有無、風評リスクなどの重要な事項について、任命にあたり考慮するよう求める規定は存在しない。
(2)問題意識
APRAは、規制対象事業体ごとに適合性・適正性評価の実施方法にかなりのばらつきがあることを把握しており、特に以下のような問題を挙げている。
・事業体が結果よりも手続きの遂行に重点を置いており形骸化している。
・適合性と適正性の構成要素を狭義に捉えている。
・人物の適性(スキル、能力、経験、知識)の検討が不十分である。
・取締役の能力についてほとんど考慮されていない。
・自己評価やその他の簡易なチェックに過度に依存した、形式的な検証を実施している。
・現職の責任者の年次レビューを、責任者の継続的な適合性と適正性を確保するための恒久的な義務の一部としてではなく、雑然とした作業として扱っている。
・APRAが任命候補者の適性・妥当性に懸念を抱いている場合、事業体がAPRAとの関与を渋るケースがある。
APRAは、規制対象事業体ごとに適合性・適正性評価の実施方法にかなりのばらつきがあることを把握しており、特に以下のような問題を挙げている。
・事業体が結果よりも手続きの遂行に重点を置いており形骸化している。
・適合性と適正性の構成要素を狭義に捉えている。
・人物の適性(スキル、能力、経験、知識)の検討が不十分である。
・取締役の能力についてほとんど考慮されていない。
・自己評価やその他の簡易なチェックに過度に依存した、形式的な検証を実施している。
・現職の責任者の年次レビューを、責任者の継続的な適合性と適正性を確保するための恒久的な義務の一部としてではなく、雑然とした作業として扱っている。
・APRAが任命候補者の適性・妥当性に懸念を抱いている場合、事業体がAPRAとの関与を渋るケースがある。
(3)対応
APRAは、以下の方法により、適合性と適正性に関する基本的な期待を強化することを提言する。
・適合性・適正性についての方針で定めた厳格なプロセスに従うだけでなく、適合性・適正性の結果に対する規制対象事業体の責任を強化する。
・適合性と適正性の定義、およびその結果を検証する必要性をより具体的にする。
APRAは、以下のような追加的な事項を盛り込むことを提言している。
・利益相反の事実や潜在的な利益相反および利益相反とみなされうるものと義務
・民事、刑事、規制上の問題から生じた違反行為などで適合性・適正性に懸念が生じる可能性があるもの
・過去の組織における財務実績および評判を含む、人物像または規制に関する参照
・その役割に十分な時間を割くことができるかどうか
・風評リスク
・適合性・適正性再評価のトリガーを次のように明確にする。
・個人がFAR10に基づく義務を果たしていない、または最低限期待される適性やパフォーマンスを満たしていないと考える根拠がある場合
・重大な不正行為または企業の行動規範に反する行動があった場合
・刑事、民事、または職業上の手続きにおいて不利な結果が出た場合
・風評リスクをもたらしうる個人的状況の変化があった場合
・適合性と適正性に影響を及ぼす可能性のある懸念が生じた場合、決定が下される前であってもAPRAに通知することを義務付ける。
また、FARは、規制対象事業体に対し、APRAと「オープンで建設的かつ協力的な方法」で対応するために合理的な措置を講じることを求めている。この義務に準拠し、APRAが責任者候補と現職の責任者に関する見解を形成できるよう、APRAは以下を提言している:
・規制対象事業体が、個人の適合性と適正性に関する懸念について適時に解決されない場合、APRAが事業体主導の再評価を要求できるようにする。
・SFI 及び監督強化の対象となっている非 SFI に対し、取締役等の任命又は公表に先立って、後継者育成計画及び指名についてAPRAに報告することを義務付ける。
・健全性に関する実務ガイダンスにおいて、APRAは、任命または再任に先立ち、取締役等候補との面談を要請する場合があることを注記する。これは例外的な措置であり、APRA が抱える懸念を払拭するために更なる情報が必要な場合である。
APRA が規制対象事業体の取締役等候補または現職の取締役または取締役会の実績に満足しない場合、APRA は規制対象事業体と意見を共有し、事業体が懸念に対処する行動をとらない場合、APRAの監督強化につながる。
10 Financial Accountability Regime:財務説明責任制度
APRAは、以下の方法により、適合性と適正性に関する基本的な期待を強化することを提言する。
・適合性・適正性についての方針で定めた厳格なプロセスに従うだけでなく、適合性・適正性の結果に対する規制対象事業体の責任を強化する。
・適合性と適正性の定義、およびその結果を検証する必要性をより具体的にする。
APRAは、以下のような追加的な事項を盛り込むことを提言している。
・利益相反の事実や潜在的な利益相反および利益相反とみなされうるものと義務
・民事、刑事、規制上の問題から生じた違反行為などで適合性・適正性に懸念が生じる可能性があるもの
・過去の組織における財務実績および評判を含む、人物像または規制に関する参照
・その役割に十分な時間を割くことができるかどうか
・風評リスク
・適合性・適正性再評価のトリガーを次のように明確にする。
・個人がFAR10に基づく義務を果たしていない、または最低限期待される適性やパフォーマンスを満たしていないと考える根拠がある場合
・重大な不正行為または企業の行動規範に反する行動があった場合
・刑事、民事、または職業上の手続きにおいて不利な結果が出た場合
・風評リスクをもたらしうる個人的状況の変化があった場合
・適合性と適正性に影響を及ぼす可能性のある懸念が生じた場合、決定が下される前であってもAPRAに通知することを義務付ける。
また、FARは、規制対象事業体に対し、APRAと「オープンで建設的かつ協力的な方法」で対応するために合理的な措置を講じることを求めている。この義務に準拠し、APRAが責任者候補と現職の責任者に関する見解を形成できるよう、APRAは以下を提言している:
・規制対象事業体が、個人の適合性と適正性に関する懸念について適時に解決されない場合、APRAが事業体主導の再評価を要求できるようにする。
・SFI 及び監督強化の対象となっている非 SFI に対し、取締役等の任命又は公表に先立って、後継者育成計画及び指名についてAPRAに報告することを義務付ける。
・健全性に関する実務ガイダンスにおいて、APRAは、任命または再任に先立ち、取締役等候補との面談を要請する場合があることを注記する。これは例外的な措置であり、APRA が抱える懸念を払拭するために更なる情報が必要な場合である。
APRA が規制対象事業体の取締役等候補または現職の取締役または取締役会の実績に満足しない場合、APRA は規制対象事業体と意見を共有し、事業体が懸念に対処する行動をとらない場合、APRAの監督強化につながる。
10 Financial Accountability Regime:財務説明責任制度
3|利益相反管理について
(1)現行の要件
銀行、保険会社、RSEのライセンシーの責任者が適切かつ適正であるとみなされるためには、その職務を遂行する上で利益相反がないか、または利益相反が仮にあった場合でも、その利益相反が、その者が適切に職務を遂行できないほどの重大なリスクを生じさせないと結論づけることができるものでなければならない。
銀行と保険会社は、RSEライセンシーに対してのものと異なる利益相反管理の義務を負っており、リスク管理基準CPS 220 は、銀行と保険会社のリスク管理方針とその手続きに、利益相反の事実および潜在的な利益相反を特定、監視、管理するプロセスを含めることを求めている。
RSEライセンシーは、利益相反に関する独立した基準(SPS 521)が適用されるが、これは銀行・保険会社に適用されるものよりさらに詳細なものであり、SIS法第52条(2)(d)(iv)を達成することを目的として適用される。同基準は、RSEライセンシーに以下を求めている:
・すべての利益相反を特定し、評価し、緩和し、管理し、監視するための利益相反管理の枠組みを有すること。
・取締役会の承認を得た利益相反管理方針を策定し、実施し、見直すこと。
・関連する職務と関連する利害をすべて特定すること。
・関連する職務と関連する利害の登録簿を作成し、公開すること。
3つの業種すべてにおいて、利益相反とみなされうるものをカバーする要件はなく、また、風評リスクを考慮する明示的な義務もない。
(1)現行の要件
銀行、保険会社、RSEのライセンシーの責任者が適切かつ適正であるとみなされるためには、その職務を遂行する上で利益相反がないか、または利益相反が仮にあった場合でも、その利益相反が、その者が適切に職務を遂行できないほどの重大なリスクを生じさせないと結論づけることができるものでなければならない。
銀行と保険会社は、RSEライセンシーに対してのものと異なる利益相反管理の義務を負っており、リスク管理基準CPS 220 は、銀行と保険会社のリスク管理方針とその手続きに、利益相反の事実および潜在的な利益相反を特定、監視、管理するプロセスを含めることを求めている。
RSEライセンシーは、利益相反に関する独立した基準(SPS 521)が適用されるが、これは銀行・保険会社に適用されるものよりさらに詳細なものであり、SIS法第52条(2)(d)(iv)を達成することを目的として適用される。同基準は、RSEライセンシーに以下を求めている:
・すべての利益相反を特定し、評価し、緩和し、管理し、監視するための利益相反管理の枠組みを有すること。
・取締役会の承認を得た利益相反管理方針を策定し、実施し、見直すこと。
・関連する職務と関連する利害をすべて特定すること。
・関連する職務と関連する利害の登録簿を作成し、公開すること。
3つの業種すべてにおいて、利益相反とみなされうるものをカバーする要件はなく、また、風評リスクを考慮する明示的な義務もない。
(2)問題意識
APRAの現在の要件は、規制業種間で一貫性がない。また、APRAは、規制対象業界全体において、事業体の利益相反の識別と処理にいくつかの脆弱性があることを認識している。最も一般的な課題は、責任者個人の金融取引、グループ内で複数の役割を担う取締役、サプライヤー(suppliers)との関係、個人の所属に関するものである。
規制対象業種全体において、サービスプロバイダー(service providers)との利益相反や、責任者のグループ所属の特定が不十分な事例が見られる。一部の企業では、取締役会における申告を除いて、取締役の利益相反を継続的に特定・管理するための適切なプロセスを有していないなどの例もある。また、取締役や上級管理職が、サービスプロバイダーと直接または家族関係を通じて関係を持ったりしている事例も見られ、これらの利益相反が適切に対処されていなかった例もある。
今日的には、取締役等は、利益相反の事実、潜在的な利率相反および利益相反とみなされうるものを特定し、これらの利益相反を取締役会およびその他の利害関係者に開示し、必要な場合には意思決定に関与しないことや組織変更を含め、利益相反を積極的に管理し、必要に応じて情報を文書化し共有することが求められる。
APRAの現在の要件は、規制業種間で一貫性がない。また、APRAは、規制対象業界全体において、事業体の利益相反の識別と処理にいくつかの脆弱性があることを認識している。最も一般的な課題は、責任者個人の金融取引、グループ内で複数の役割を担う取締役、サプライヤー(suppliers)との関係、個人の所属に関するものである。
規制対象業種全体において、サービスプロバイダー(service providers)との利益相反や、責任者のグループ所属の特定が不十分な事例が見られる。一部の企業では、取締役会における申告を除いて、取締役の利益相反を継続的に特定・管理するための適切なプロセスを有していないなどの例もある。また、取締役や上級管理職が、サービスプロバイダーと直接または家族関係を通じて関係を持ったりしている事例も見られ、これらの利益相反が適切に対処されていなかった例もある。
今日的には、取締役等は、利益相反の事実、潜在的な利率相反および利益相反とみなされうるものを特定し、これらの利益相反を取締役会およびその他の利害関係者に開示し、必要な場合には意思決定に関与しないことや組織変更を含め、利益相反を積極的に管理し、必要に応じて情報を文書化し共有することが求められる。
(3)対応
APRAは業界横断的な単一の要件を設けることを提言している。これには、現在RSEライセンシーにのみ適用されている要件(利益相反管理方針の策定、利害関係登録簿の公開など)が含まれる。他方、APRAは、銀行や保険会社が利害関係登録簿の維持・開示を義務付けられるべきかどうか、またその効果はどのようなものかについて、意見を公募している。
APRAは、ガイダンスにあるいくつかの事項を義務として組み込むことで、SPS521にある要件を強化し、すべての規制業種に適用することを提言している。これには、利益相反の事実だけでなく、潜在的な利益相反や利益相反とみなされうるもの、および事業の評判に影響する利益相反を積極的に管理すべきであるというガイダンスが含まれる。これによって、利益相反管理が不十分な事例に対して、必要であればAPRAがより積極的に対応できるようになる。
APRAは業界横断的な単一の要件を設けることを提言している。これには、現在RSEライセンシーにのみ適用されている要件(利益相反管理方針の策定、利害関係登録簿の公開など)が含まれる。他方、APRAは、銀行や保険会社が利害関係登録簿の維持・開示を義務付けられるべきかどうか、またその効果はどのようなものかについて、意見を公募している。
APRAは、ガイダンスにあるいくつかの事項を義務として組み込むことで、SPS521にある要件を強化し、すべての規制業種に適用することを提言している。これには、利益相反の事実だけでなく、潜在的な利益相反や利益相反とみなされうるもの、および事業の評判に影響する利益相反を積極的に管理すべきであるというガイダンスが含まれる。これによって、利益相反管理が不十分な事例に対して、必要であればAPRAがより積極的に対応できるようになる。
(2025年04月01日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1777
経歴
- 【職歴】
2007年 日本生命保険相互会社入社
2024年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・年金数理人
植竹 康夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/01 | APRAによるガバナンス強化の提言について-オーストラリアの健全性規制 | 植竹 康夫 | 保険・年金フォーカス |
2025/03/17 | あなたはイカサマサイコロを見抜けますか? | 植竹 康夫 | 研究員の眼 |
2025/01/07 | オーストラリアのアドバイス制度の変遷について | 植竹 康夫 | 保険・年金フォーカス |
2024/10/11 | オーストラリア健全性規制庁のコーポレートプラン2024-25-オーストラリアの健全性規制の方向性- | 植竹 康夫 | 保険・年金フォーカス |
新着記事
-
2025年05月21日
貿易統計25年4月-トランプ関税の影響が一部で顕在化 -
2025年05月20日
「次元の呪い」への対処-モデルの精度を上げるにはどうしたらよいか? -
2025年05月20日
トイレ×サイネージ-消費の交差点(10) -
2025年05月20日
今週のレポート・コラムまとめ【5/13-5/19発行分】 -
2025年05月19日
2025・2026年度経済見通し(25年5月)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【APRAによるガバナンス強化の提言について-オーストラリアの健全性規制】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
APRAによるガバナンス強化の提言について-オーストラリアの健全性規制のレポート Topへ