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- 不動産投資市場動向(2024年)~グローバルプレゼンスが向上する日本市場。2024年の取引額は世界金融危機後の最高額に
2025年02月26日
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世界の不動産取引動向(2024年下半期)
MSCIによると、2024年下期の世界の不動産取引額は約7,096億ドル(約108兆円)となり、前年同期比で+3%増加した(図表6)。2024年上期は全てのエリアが過去10年間で最低水準に落ち込むなど不動産取引の低迷が続いていたが、今期は2022年上期以来5半期ぶりの増加となった。エリア別では、米州が約2,130億ドル(前年同期比+28%)、欧州・中東・アフリカが約1,053億ドル(同+12%)と増加した一方、アジア太平洋は約3,912億ドル(同▲9%)となった。2024年上期をボトムとして最悪期を脱したとみられるが、市場の停滞感は依然として拭えず、不動産取引の本格回復には時間を要すると考えられる。
ところで、不動産取引低迷の要因となっている欧米の不動産向け融資は、引き続き厳しい状況にあるものの、一部では緩和の兆しがみられる。米連邦準備制度理事会(FRB)の融資担当者調査(SLOOS、2024年10~12月期)によると、米国銀行の約8割が商業用不動産向け新規融資の基準を「据え置いた」と回答した一方、「緩和した」との回答も、集合住宅向け融資で10%、建設・土地開発向け融資で5%、非住宅・非農場向け融資で3%であった(図表7)。また、欧州中央銀行(ECB)が実施した欧州地域の銀行融資に関する調査(2024年第4四半期)によると、商業用不動産向け新規貸し付けの基準を「厳しくした」との回答は16%(前回24%)と前回から低下した。
こうした状況下、機関投資家の不動産投資戦略では利益獲得を狙って「デット投資」への関心が高まっていた。しかし、最近では投資機会を巡り競争が激化しており、投資戦略にも変化が生じているようだ。オルタナティブ投資調査会社プレキンが世界の投資家に対して行ったアンケート調査(2024年11月)によると、「デット投資は今後さらに競争が激しくなる」と回答が62%にのぼった。また、「今後1年で、どのような戦略の不動産ファンドに投資するとよいと考えるか」との質問に対して、「ディストレス(1年前41%→今回30%)」や「デット(30%→21%)」が低下した一方、「バリューアッド(35%→42%)」が第1位となり、「コア(16%→28%)」や「コア・プラス(26%→30%)」も増加する結果となった(図表8)。調整局面において注目を集めていた投資戦略から、不動産投資本来の伝統的な投資戦略への回帰は、今後の投資市場の回復を後押しする可能性もありそうだ。
プレゼンスが向上する日本の不動産投資市場。今後は金利動向を注視
国内不動産投資市場が好調に推移するなか、日本の各都市のプレゼンスが向上している。MSCIによると、アジア太平洋地域における都市別投資額ランキング(2024年)は、東京が3年連続で第1位となり、千葉が第7位、大阪が第10位にランクインした(図表9)。上記3都市以外では、福岡(第16位)や横浜(第19位)が上位に入っており、東京以外の主要都市も投資先としての魅力が高まっている。
国内では日銀の追加利上げの影響が懸念される。しかし、国内不動産市場は依然として低い金利水準や高いイールドスプレッド、安定した賃貸市況、高い流動性といった良好な投資環境を背景に、国内資本の購買意欲は堅調だ。また、グローバル投資家の注目度も高いことから、利上げの影響は限定的ではないだろうか。今後は国内外の資金の動向などにも留意しながら、不動産取引市場を注視する必要がありそうだ。
国内では日銀の追加利上げの影響が懸念される。しかし、国内不動産市場は依然として低い金利水準や高いイールドスプレッド、安定した賃貸市況、高い流動性といった良好な投資環境を背景に、国内資本の購買意欲は堅調だ。また、グローバル投資家の注目度も高いことから、利上げの影響は限定的ではないだろうか。今後は国内外の資金の動向などにも留意しながら、不動産取引市場を注視する必要がありそうだ。
(2025年02月26日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
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