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2025年01月21日
EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2024-ソルベンシーIIの改正指令が最終化-
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1―はじめに
EU(欧州連合)におけるソルベンシーIIのレビュー(見直し)に関しては、2019年2月11日のEC(欧州委員会)からの助言要請1を受けて、EIOPA(欧州保険年金監督局)において検討が開始され、そのプロセスがスタートした。EIOPAは、2020年12月17日に、ECに対して、ソルベンシーIIレビューに関する最終意見2を提出した。このEIOPAの最終意見の内容については、一連の保険年金フォーカスのシリーズ「EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する意見をECに提出(1)-意見書の全体概要と保険業界等からの反応-」(2020.12.28)等で報告した。
ECは、EIOPAの最終意見を踏まえて、検討を進め、2021年9月22日に、影響評価を含めて、ソルベンシーIIのレビューの提案内容を公表3した。併せて、2つの立法提案(ソルベンシーII指令の改正とIRRD(保険再建・破綻処理指令))を行った。このECの提案内容については、保険年金フォーカス「欧州委員会がソルベンシーIIのレビューに関する提案を公表-提案の具体的内容とその影響-」(2021.10.22)等で報告した。
その後、このECの提案内容について、欧州連合理事会(EU理事会)や欧州議会での検討が行われてきた。欧州連合理事会は2022 年6 月17 日に欧州委員会の提案に関する見解に同意した一方で、欧州議会は、2023 年7 月に、いくつかの点で欧州委員会の案とは異なる修正案を承認した。これを受けて、トリローグ(三者対話)4が行われてきたが、2023年12月14日には、欧州連合理事会と欧州議会が暫定合意したとの発表5が行われた。この内容については、保険年金フォーカス「EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2023-EU理事会と欧州議会がソルベンシーIIのレビューとIRRDについて暫定合意-」(2023.12.27)で報告した。
この案が2024年4月23日に欧州議会で承認され、2024年11月5日に欧州連合理事会で採択6されて、(比例原則、監督の質、報告、長期保証措置、マクロプルーデンスツール、サステナビリティリスク、グループ及び国境を越えた監督を改正する)改正指令が確定した。この改正指令は、EU官報に掲載されて、その60日後に発効することになっており、2025年1月28日が発効日となっている。加盟国は発効後2年以内にこの改正指令を導入する必要があり、発効の2年後から適用開始されることになる。
今回のレポートは、この「レベル1」と呼ばれるソルベンシーII指令の改正内容の概要及びそれに関連しての欧州委員会やEIOPAにおける「レベル2以下」の委任規則等の検討状況について報告する。なお、必ずしも改正の最終案ではないものの、改正の背景や考え方等の詳しい内容については、先に述べたEIOPAの最終意見やECの提案に関するレポートで報告しているので、こちらのレポートも参照していただきたい。また、ソルベンシーII指令の改正に併せて採択されたIRRDについては、今回のレポートでは触れていないので、別途の機会に譲ることとする。
1 https://eiopa.europa.eu/Publications/Requests%20for%20advice/RH_SRAnnex%20-%20CfA%202020%20SII%20review.pdf
2 https://www.eiopa.europa.eu/content/solvency-ii-review-balanced-update-challenging-times_en
3 https://ec.europa.eu/info/publications/210922-solvency-2-communication_en
4 欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会の三者によるEU 法案の内容を交渉する会合。
5 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/14/solvency-ii-and-irrd-council-and-parliament-agree-on-new-rules-for-the-insurance-sector/
6 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/11/05/solvency-ii-and-irrd-council-signs-off-new-rules-for-the-insurance-sector/
ECは、EIOPAの最終意見を踏まえて、検討を進め、2021年9月22日に、影響評価を含めて、ソルベンシーIIのレビューの提案内容を公表3した。併せて、2つの立法提案(ソルベンシーII指令の改正とIRRD(保険再建・破綻処理指令))を行った。このECの提案内容については、保険年金フォーカス「欧州委員会がソルベンシーIIのレビューに関する提案を公表-提案の具体的内容とその影響-」(2021.10.22)等で報告した。
その後、このECの提案内容について、欧州連合理事会(EU理事会)や欧州議会での検討が行われてきた。欧州連合理事会は2022 年6 月17 日に欧州委員会の提案に関する見解に同意した一方で、欧州議会は、2023 年7 月に、いくつかの点で欧州委員会の案とは異なる修正案を承認した。これを受けて、トリローグ(三者対話)4が行われてきたが、2023年12月14日には、欧州連合理事会と欧州議会が暫定合意したとの発表5が行われた。この内容については、保険年金フォーカス「EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2023-EU理事会と欧州議会がソルベンシーIIのレビューとIRRDについて暫定合意-」(2023.12.27)で報告した。
この案が2024年4月23日に欧州議会で承認され、2024年11月5日に欧州連合理事会で採択6されて、(比例原則、監督の質、報告、長期保証措置、マクロプルーデンスツール、サステナビリティリスク、グループ及び国境を越えた監督を改正する)改正指令が確定した。この改正指令は、EU官報に掲載されて、その60日後に発効することになっており、2025年1月28日が発効日となっている。加盟国は発効後2年以内にこの改正指令を導入する必要があり、発効の2年後から適用開始されることになる。
今回のレポートは、この「レベル1」と呼ばれるソルベンシーII指令の改正内容の概要及びそれに関連しての欧州委員会やEIOPAにおける「レベル2以下」の委任規則等の検討状況について報告する。なお、必ずしも改正の最終案ではないものの、改正の背景や考え方等の詳しい内容については、先に述べたEIOPAの最終意見やECの提案に関するレポートで報告しているので、こちらのレポートも参照していただきたい。また、ソルベンシーII指令の改正に併せて採択されたIRRDについては、今回のレポートでは触れていないので、別途の機会に譲ることとする。
1 https://eiopa.europa.eu/Publications/Requests%20for%20advice/RH_SRAnnex%20-%20CfA%202020%20SII%20review.pdf
2 https://www.eiopa.europa.eu/content/solvency-ii-review-balanced-update-challenging-times_en
3 https://ec.europa.eu/info/publications/210922-solvency-2-communication_en
4 欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会の三者によるEU 法案の内容を交渉する会合。
5 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/14/solvency-ii-and-irrd-council-and-parliament-agree-on-new-rules-for-the-insurance-sector/
6 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/11/05/solvency-ii-and-irrd-council-signs-off-new-rules-for-the-insurance-sector/
2―ソルベンシーII指令の改正内容
今回のソルベンシーII指令の改正の主な内容を、ソルベンシーIIの構造に従って、筆者の判断に基づいて、第1の柱、第2の柱、第3の柱に区分して報告する。また、比例原則や簡素化については、これらの3つの柱に横断的に関係しているので、別途の項目として報告する。
1|第1の柱(定量的要件)
1.RFR(リスクフリーレート)の期間構造の補外
技術的準備金を算出する際に使用するRFRの期間構造において、市場データ等が得られない超長期の値については、補外が必要となるが、この補外の手法として、UFR(終局フォワードレート)が使用されている。改正指令では、市場で観測されるRFRからUFRへの接続方法について、以下のような変更が行われる。
各通貨に対して、FSP(First Smoothing Point)を、(a)当該満期の金融商品の市場が深く、流動性があり、透明性があると認められ、(b)全ての発行済み債券のうちの当該満期以上の発行済み債券の割合が十分に高い、との条件を満たす最長の満期とし、補外はこのFSPから開始される(因みに、改正指令の発効日におけるユーロのFSPは20年とする)。
RFRの期間構造の補外は、FSPで適用可能なフォワードレートからUFRに滑らかに収束するフォワードに基づき、補外フォワードレートは(金融商品が深く、流動性があり、透明性がある市場で観測される最長の満期でのフォワードレートに基づく)流動性の高いフォワードレートとUFRの加重平均となる。補外においては、市場が深く、流動性があり、透明性がある債券以外の金融商品からの情報を利用する。また、FSPから40年以上経過した満期におけるUFRの加重を少なくとも77.5%とする7。
これにより、市場の情報がより反映されることになり、UFRへの収束が遅くなる。
なお、監督当局の事前承認を得て、2032年1月1日時点での適用までの段階的導入ができるが、この場合には、その適用及び財務状況への影響の定量化について、SFCR(ソルベンシー財務状況報告書)で公表する必要がある。
また、正確な計算式や重み付けを含む主要なパラメータ等の詳細は、委任規則等で規定されることになる。
7 これは、スミス・ウイルソン法における収束パラメータαを約11%~12%とした場合に相当している。
1.RFR(リスクフリーレート)の期間構造の補外
技術的準備金を算出する際に使用するRFRの期間構造において、市場データ等が得られない超長期の値については、補外が必要となるが、この補外の手法として、UFR(終局フォワードレート)が使用されている。改正指令では、市場で観測されるRFRからUFRへの接続方法について、以下のような変更が行われる。
各通貨に対して、FSP(First Smoothing Point)を、(a)当該満期の金融商品の市場が深く、流動性があり、透明性があると認められ、(b)全ての発行済み債券のうちの当該満期以上の発行済み債券の割合が十分に高い、との条件を満たす最長の満期とし、補外はこのFSPから開始される(因みに、改正指令の発効日におけるユーロのFSPは20年とする)。
RFRの期間構造の補外は、FSPで適用可能なフォワードレートからUFRに滑らかに収束するフォワードに基づき、補外フォワードレートは(金融商品が深く、流動性があり、透明性がある市場で観測される最長の満期でのフォワードレートに基づく)流動性の高いフォワードレートとUFRの加重平均となる。補外においては、市場が深く、流動性があり、透明性がある債券以外の金融商品からの情報を利用する。また、FSPから40年以上経過した満期におけるUFRの加重を少なくとも77.5%とする7。
これにより、市場の情報がより反映されることになり、UFRへの収束が遅くなる。
なお、監督当局の事前承認を得て、2032年1月1日時点での適用までの段階的導入ができるが、この場合には、その適用及び財務状況への影響の定量化について、SFCR(ソルベンシー財務状況報告書)で公表する必要がある。
また、正確な計算式や重み付けを含む主要なパラメータ等の詳細は、委任規則等で規定されることになる。
7 これは、スミス・ウイルソン法における収束パラメータαを約11%~12%とした場合に相当している。
2.VA(ボラティリティ調整)
VAの適用は全ての国で監督当局の事前承認が必要になる。VAの基礎となるリスク修正後のスプレッドの適用比率(参照ポートフォリオ(代表ポートフォリオ)に含まれる資産から得られる金利と関連するRFRの期間構造の金利との間のリスク修正スプレッドの一定割合)を65%から85%に引き上げる。
また、オーバーシュート問題8に対処するために、会社固有の「VAの変化による最良推計負債の感応度」に対する「信用スプレッドの変化による債券投資の感応度」の比率として計算される「信用スプレッド感応度比率(Credit Spread Sensitivity Ratio:CSSR)」(0以上1以下)を導入する。
さらに、VAは「通貨要素」と(2018年6月の改正で導入された)「国別要素」で構成されるが、クリフエッジ効果9を回避するために、VAのユーロ圏各国の国別要素は、各国固有の参照ポートフォリオに基づいて算出される各国固有のリスク修正スプレッド、ユーロの参照ポートフォリオに基づいて算出されるユーロのリスク修正スプレッド、ユーロのCSSR等に基づいて算出される、各国の「マクロVA」に置き換えられる。
具体的には、以下の通りとなる。
通貨cuのVAは、以下の算式による。
VAcu=85%・CSSRcu・RCScu
CSSRcuは、通貨cuのCSSR、RCScuは、通貨cuのリスク修正スプレッド
国coのマクロVAEuro,macroは、以下の算式による。
VA Euro,macro=85%・CSSREuro・max(RCSco-1.3・RCS Euro;0)・ωco
CSSREuroは、ユーロのCSSR、RCScoは、国coのリスク修正スプレッド
RCS Euroは、ユーロのリスク修正スプレッド、
ωcoは、国coの国別調整係数で、以下の算式による。
ωcoは=max(min(((RCSco*-0.6%)/0.3%);1);0)
RCSco*は、RCScuに、当該国で認可された保険会社が保有する総資産に対する債券投資の割合を乗じたもの
なお、会社の債券ポートフォリオの特性を考慮して、事前承認を条件に、通貨のリスク修正スプレッドに会社固有の調整を適用できる。ここで、調整は、105%と、会社の債券ポートフォリオに基づいて計算されたリスク修正スプレッドと当該通貨の参照ポートフォリオに基づいて計算されたリスク修正スプレッドとの比率、のいずれか低い方となる。ただし、通貨のリスク修正スプレッドが2四半期連続で増加した場合には、調整の適用を停止しなければならない。
主要なパラメータ(例えば、デフォルトによる損失を考慮してVAを調整するリスク補正)等の詳細は、委任規則等で規定されることになる。
8 スプレッドのストレスに対して資産を上回る負債の価値の変動が起こる問題。
9 リスクの規模のわずかな増加で、はるかに大きな影響が生じる可能性。
VAの適用は全ての国で監督当局の事前承認が必要になる。VAの基礎となるリスク修正後のスプレッドの適用比率(参照ポートフォリオ(代表ポートフォリオ)に含まれる資産から得られる金利と関連するRFRの期間構造の金利との間のリスク修正スプレッドの一定割合)を65%から85%に引き上げる。
また、オーバーシュート問題8に対処するために、会社固有の「VAの変化による最良推計負債の感応度」に対する「信用スプレッドの変化による債券投資の感応度」の比率として計算される「信用スプレッド感応度比率(Credit Spread Sensitivity Ratio:CSSR)」(0以上1以下)を導入する。
さらに、VAは「通貨要素」と(2018年6月の改正で導入された)「国別要素」で構成されるが、クリフエッジ効果9を回避するために、VAのユーロ圏各国の国別要素は、各国固有の参照ポートフォリオに基づいて算出される各国固有のリスク修正スプレッド、ユーロの参照ポートフォリオに基づいて算出されるユーロのリスク修正スプレッド、ユーロのCSSR等に基づいて算出される、各国の「マクロVA」に置き換えられる。
具体的には、以下の通りとなる。
通貨cuのVAは、以下の算式による。
VAcu=85%・CSSRcu・RCScu
CSSRcuは、通貨cuのCSSR、RCScuは、通貨cuのリスク修正スプレッド
国coのマクロVAEuro,macroは、以下の算式による。
VA Euro,macro=85%・CSSREuro・max(RCSco-1.3・RCS Euro;0)・ωco
CSSREuroは、ユーロのCSSR、RCScoは、国coのリスク修正スプレッド
RCS Euroは、ユーロのリスク修正スプレッド、
ωcoは、国coの国別調整係数で、以下の算式による。
ωcoは=max(min(((RCSco*-0.6%)/0.3%);1);0)
RCSco*は、RCScuに、当該国で認可された保険会社が保有する総資産に対する債券投資の割合を乗じたもの
なお、会社の債券ポートフォリオの特性を考慮して、事前承認を条件に、通貨のリスク修正スプレッドに会社固有の調整を適用できる。ここで、調整は、105%と、会社の債券ポートフォリオに基づいて計算されたリスク修正スプレッドと当該通貨の参照ポートフォリオに基づいて計算されたリスク修正スプレッドとの比率、のいずれか低い方となる。ただし、通貨のリスク修正スプレッドが2四半期連続で増加した場合には、調整の適用を停止しなければならない。
主要なパラメータ(例えば、デフォルトによる損失を考慮してVAを調整するリスク補正)等の詳細は、委任規則等で規定されることになる。
8 スプレッドのストレスに対して資産を上回る負債の価値の変動が起こる問題。
9 リスクの規模のわずかな増加で、はるかに大きな影響が生じる可能性。
3.リスクマージン
「修正資本コスト法」(新しい漸減パラメータであるλを導入して、予想される将来の資本要件の各年に与えられる重みを徐々に低下させていく手法)を導入するとともに、資本コスト率を6%から4.75%に引き下げる。具体的には、以下の算式による。
(1) 指令改正前

CoC(資本コスト率)は6%
rt+1 は(t+1)年における基本RFR
SCRt は参照会社に対して算出されるt 年のSCR(ソルベンシー資本要件)
(2) 指令改正後

CoCは4.75%
rt+1 は(t+1)年における基本リスクフリーレート
SCRtは参照会社に対して算出されるt年のSCR
λはリスク漸減ファクター(水準は委任規則で規定される)
なお、CoCは、全ての保険会社で同一で、欧州委員会によって、定期的に見直される 。ただし、改正指令施行から、少なくとも5年間は変更できない。その後は、4%から5%の範囲内で委任規則により改正できる。
この改正により、リスクマージンの規模が引き下げられる。
「修正資本コスト法」(新しい漸減パラメータであるλを導入して、予想される将来の資本要件の各年に与えられる重みを徐々に低下させていく手法)を導入するとともに、資本コスト率を6%から4.75%に引き下げる。具体的には、以下の算式による。
(1) 指令改正前

CoC(資本コスト率)は6%
rt+1 は(t+1)年における基本RFR
SCRt は参照会社に対して算出されるt 年のSCR(ソルベンシー資本要件)
(2) 指令改正後

CoCは4.75%
rt+1 は(t+1)年における基本リスクフリーレート
SCRtは参照会社に対して算出されるt年のSCR
λはリスク漸減ファクター(水準は委任規則で規定される)
なお、CoCは、全ての保険会社で同一で、欧州委員会によって、定期的に見直される 。ただし、改正指令施行から、少なくとも5年間は変更できない。その後は、4%から5%の範囲内で委任規則により改正できる。
この改正により、リスクマージンの規模が引き下げられる。
4.長期株式投資(LTEI)
これまで委任規則に規定されていた長期株式投資について、22%の資本要件とともに、指令に規定される。既存の長期株式投資の適格性基準を見直して、39%又は49%の標準的な株式への資本要件と比較して、より低い22%の資本要件の対象となる資産を増やすことで、長期株式投資を優遇する。
新しい基準には、(1)LTEIのサブセットの明確な識別と別個管理、(2)平均5年を超える期間保有するという会社のコミットメントを反映した長期投資管理方針の設定、(3)EEA(欧州経済領域)又はOECD加盟国の上場株式、又はこれらに本社を置く会社の非上場株式のみで構成、(4)継続的かつストレス状況下で強制売却を回避できる。(5)(2)や(4)を反映したリスク管理、ALM及び投資方針、(6)適切な分散、(7)参加(participation)10は含まれない、が含まれている。
具体的には、欧州長期投資ファンド(ELTIF)やオルタナティブ投資ファンド(AIF)内で保有され、より低いリスクプロファイルを有する株式も、ファンドが一定の要件を満たせば、LTEIに分類される可能性がある(なお、対称調整はLTEIには適用されない)。
10 会社の議決権又は資本の20%以上を直接又は支配によって所有すること。子会社・関連会社の持分等が該当している。
これまで委任規則に規定されていた長期株式投資について、22%の資本要件とともに、指令に規定される。既存の長期株式投資の適格性基準を見直して、39%又は49%の標準的な株式への資本要件と比較して、より低い22%の資本要件の対象となる資産を増やすことで、長期株式投資を優遇する。
新しい基準には、(1)LTEIのサブセットの明確な識別と別個管理、(2)平均5年を超える期間保有するという会社のコミットメントを反映した長期投資管理方針の設定、(3)EEA(欧州経済領域)又はOECD加盟国の上場株式、又はこれらに本社を置く会社の非上場株式のみで構成、(4)継続的かつストレス状況下で強制売却を回避できる。(5)(2)や(4)を反映したリスク管理、ALM及び投資方針、(6)適切な分散、(7)参加(participation)10は含まれない、が含まれている。
具体的には、欧州長期投資ファンド(ELTIF)やオルタナティブ投資ファンド(AIF)内で保有され、より低いリスクプロファイルを有する株式も、ファンドが一定の要件を満たせば、LTEIに分類される可能性がある(なお、対称調整はLTEIには適用されない)。
10 会社の議決権又は資本の20%以上を直接又は支配によって所有すること。子会社・関連会社の持分等が該当している。
5.対称調整
SCRの標準式の株式リスクの算出において、株価水準の状況に応じて調整を行う「対称調整」がある。これは、(株式市場の上昇が過去の平均と比べて一定水準以上の場合、プラス(資本要件がより高く)となり、そうでない場合、マイナス(資本要件がより低く)となる。具体的には、対称調整の水準SAは、現行の委任規則に規定されているように、以下の算式による。

ここで、CIは現在の株価指標水準、AIは過去36カ月の日次株価指標平均
株価指標は、保険会社によって典型的に保有される株式の性質を代表する分散化されたポートフォリオの株価で測定
改正指令により、株式の資本要件の対称調整による増減の最大は10%から13%に引き上げられる。
SCRの標準式の株式リスクの算出において、株価水準の状況に応じて調整を行う「対称調整」がある。これは、(株式市場の上昇が過去の平均と比べて一定水準以上の場合、プラス(資本要件がより高く)となり、そうでない場合、マイナス(資本要件がより低く)となる。具体的には、対称調整の水準SAは、現行の委任規則に規定されているように、以下の算式による。

ここで、CIは現在の株価指標水準、AIは過去36カ月の日次株価指標平均
株価指標は、保険会社によって典型的に保有される株式の性質を代表する分散化されたポートフォリオの株価で測定
改正指令により、株式の資本要件の対称調整による増減の最大は10%から13%に引き上げられる。
6.DBER(デュレーションベースの株式リスク・サブモジュール)
実際の適用会社が限られていることもあり、LTEIのカテゴリーの対象拡大に伴い、DBERは削除される。ただし、既適用会社にはグランドファザー条項(継続的な適用の認容)が適用される。
実際の適用会社が限られていることもあり、LTEIのカテゴリーの対象拡大に伴い、DBERは削除される。ただし、既適用会社にはグランドファザー条項(継続的な適用の認容)が適用される。
(2025年01月21日「基礎研レポート」)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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