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2024年12月03日
英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その8)-2024年における動き(Brexit後の4年間の取組みが最終化)-
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1―はじめに
英国は、2020年2月1日にEU(欧州連合)から離脱したが、2020年12月31日までは移行期間としてEU法が適用されてきた。それまではEU加盟国として、EUのソルベンシーII制度下にあった英国であるが、2021年からは、独自の新たな規制を構築していくことが可能になり、英国政府(財務省)と保険監督当局であるPRA(健全性規制機構)により、各種の規制改革の方向性や提案がなされてきた1(なお、英国におけるソルベンシーIIは、EUのソルベンシーIIとは異なる独自の制度であることを明確にするために「ソルベンシーUK」とも呼ばれている2)。
英国におけるソルベンシーIIのレビュー(見直し)を巡る動向については、これまで、複数回のレポートで報告してきた。例えば、2023年1月に2回のレポートで、PRAが2022年11月10日に公表3した、ソルベンシーIIの報告改革に関する協議文書(CP)「CP14/22-ソルベンシーIIレビュー:報告フェーズ2」、財務省(HMT)が2022年11月17日に公表した4、「ソルベンシーIIのレビュー:協議-対応(Review of Solvency II:Consultation – Response)」及び、PRAが2022年11月18日に公表5した、フィードバックステートメント(FS)「FS1/22-ソルベンシーII内のリスクマージンとMA(マッチング調整)に対する潜在的な改革」の概要について報告した。また、2023年12月には、基礎研レポート「英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その7)-2023年に入ってからの動き(財務省とPRAが具体的な提案を公開)-」(2023.12.6)(以下、「前回の基礎研レポート」という)において、2023年に財務省やPRAによって公表されてきたソルベンシーIIの改革提案の概要や、それに対する利害関係者の評価と反応等について、その概要を報告した。
その後も、財務省やPRAにおいて、検討が進められ、法令の改正や各種のCP(Consultation Paper:協議文書)やPS(Policy Statement:政策声明)が公表されてきたが、PRAは2024年11月15日に、政策声明(PS)「PS15/24 – ソルベンシーIIのレビュー: 統合法の再記述」6を公表した。このPSの公表により、ソルベンシーIIの4年間のレビューが終了し、Brexit(英国のEUからの離脱)後の新たな規制枠組みである「ソルベンシーUK」への移行が図られることになった。2024年12月31日に発効する最終的な規則と政策資料により、これまでのEU由来の法律に代わって、英国固有の健全性制度が開始されることになる。
今回は、前回のレポート以降に財務省やPRAによって行われてきたソルベンシーIIの改革に向けた動きと、その結果としての(主として)2024年12月31日から適用される、EU由来のソルベンシーIIを改正した英国固有のソルベンシーUKの概要について報告する。
1 英国において、ソルベンシーIIのレビューの下での改革は、金融サービスおよび市場法(FSMA)(維持されたEU法の削除を含む)、財務省(HMT)のSI(statutory instrument:行政委任立法)、PRAの規則と方針の変更の組み合わせによって、実施されることになり、これまで、EUの法体系の中で規定されていた法令を廃止して、新たに英国の法体系等の中に設定していくための取組み等が行われてきた。
2 以下の財務省やPRAによる法令・規制の改正等のプロセスにおいては、これらが段階的に行われていくことから、引き続き「ソルベンシーII」の呼称が使用されている。今回の4年間の取組みの最終化を受けて、一連の改革が一段落したことになるが、PRAは全ての関連資料でソルベンシーIIへの言及が変更されるまでは、引き続き「ソルベンシーII」の呼称を使用するとしている。ただし、最終的には「ソルベンシーUK」の呼称に統一されていくことになる。
3 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2022/november/review-solvency-ii-reporting-phase-2
4 https://www.gov.uk/government/consultations/solvency-ii-review-consultation
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1118359/Consultation_Response_-_Review_of_Solvency_II_.pdf
5 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2022/november/fs1-22-potential-reforms-to-risk-margin-and-matching-adjustment-within-solvency-ii
6 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2024/november/review-of-solvency-ii-restatement-of-assimilated-law-policy-statement
英国におけるソルベンシーIIのレビュー(見直し)を巡る動向については、これまで、複数回のレポートで報告してきた。例えば、2023年1月に2回のレポートで、PRAが2022年11月10日に公表3した、ソルベンシーIIの報告改革に関する協議文書(CP)「CP14/22-ソルベンシーIIレビュー:報告フェーズ2」、財務省(HMT)が2022年11月17日に公表した4、「ソルベンシーIIのレビュー:協議-対応(Review of Solvency II:Consultation – Response)」及び、PRAが2022年11月18日に公表5した、フィードバックステートメント(FS)「FS1/22-ソルベンシーII内のリスクマージンとMA(マッチング調整)に対する潜在的な改革」の概要について報告した。また、2023年12月には、基礎研レポート「英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その7)-2023年に入ってからの動き(財務省とPRAが具体的な提案を公開)-」(2023.12.6)(以下、「前回の基礎研レポート」という)において、2023年に財務省やPRAによって公表されてきたソルベンシーIIの改革提案の概要や、それに対する利害関係者の評価と反応等について、その概要を報告した。
その後も、財務省やPRAにおいて、検討が進められ、法令の改正や各種のCP(Consultation Paper:協議文書)やPS(Policy Statement:政策声明)が公表されてきたが、PRAは2024年11月15日に、政策声明(PS)「PS15/24 – ソルベンシーIIのレビュー: 統合法の再記述」6を公表した。このPSの公表により、ソルベンシーIIの4年間のレビューが終了し、Brexit(英国のEUからの離脱)後の新たな規制枠組みである「ソルベンシーUK」への移行が図られることになった。2024年12月31日に発効する最終的な規則と政策資料により、これまでのEU由来の法律に代わって、英国固有の健全性制度が開始されることになる。
今回は、前回のレポート以降に財務省やPRAによって行われてきたソルベンシーIIの改革に向けた動きと、その結果としての(主として)2024年12月31日から適用される、EU由来のソルベンシーIIを改正した英国固有のソルベンシーUKの概要について報告する。
1 英国において、ソルベンシーIIのレビューの下での改革は、金融サービスおよび市場法(FSMA)(維持されたEU法の削除を含む)、財務省(HMT)のSI(statutory instrument:行政委任立法)、PRAの規則と方針の変更の組み合わせによって、実施されることになり、これまで、EUの法体系の中で規定されていた法令を廃止して、新たに英国の法体系等の中に設定していくための取組み等が行われてきた。
2 以下の財務省やPRAによる法令・規制の改正等のプロセスにおいては、これらが段階的に行われていくことから、引き続き「ソルベンシーII」の呼称が使用されている。今回の4年間の取組みの最終化を受けて、一連の改革が一段落したことになるが、PRAは全ての関連資料でソルベンシーIIへの言及が変更されるまでは、引き続き「ソルベンシーII」の呼称を使用するとしている。ただし、最終的には「ソルベンシーUK」の呼称に統一されていくことになる。
3 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2022/november/review-solvency-ii-reporting-phase-2
4 https://www.gov.uk/government/consultations/solvency-ii-review-consultation
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1118359/Consultation_Response_-_Review_of_Solvency_II_.pdf
5 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2022/november/fs1-22-potential-reforms-to-risk-margin-and-matching-adjustment-within-solvency-ii
6 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2024/november/review-of-solvency-ii-restatement-of-assimilated-law-policy-statement
2―2024年における財務省とPRAの動き―ソルベンシーUKの最終化-
2024年におけるソルベンシーIIの改革に向けた財務省及びPRAの動きは、以下の通りとなっており、各種のCPやPSを発出するとともに、これらに基づいて、関連する法令や規則の改正を行ってきた。なお、財務省は、よりカスタマイズされた、より明確でシンプルな規制制度を実現することにより、経済成長を促進することを目指した改革の内容を、2022 年 11 月の「ソルベンシーIIのレビュー:協議への対応」で発表し、2023年6月22日には、早期の取組みを可能とすべく、規制案を公表7しているが、今回のソルベンシーIIの改革はこれに沿ったものとなっている8。
7 https://www.gov.uk/government/publications/draft-insurance-and-reinsurance-undertakings-prudential-requirements-regulations
8 財務省の方針に基づいて、既存のソルベンシーIIの法的規制に関して、ソルベンシーII制度のうち、行政委任立法に基づいて修正又は維持されていない部分は、PRAの新しい規則に置き換えられる。行政委任立法の中の「PRAの規則制定権限」において、各種規則を制定する権限をPRAに付与している。また、「PRAによる監督及び執行」において、行政委任立法の規則によって課される義務を、PRAが監督し、執行する機能を有することを規定している。これにより、政府が法律で定めた包括的な規制枠組みを維持しつつ、詳細な規制が法令集から削除され、制度が2000年金融サービスおよび市場法(FSMA 2000)規制モデルに沿ったものとなる。
7 https://www.gov.uk/government/publications/draft-insurance-and-reinsurance-undertakings-prudential-requirements-regulations
8 財務省の方針に基づいて、既存のソルベンシーIIの法的規制に関して、ソルベンシーII制度のうち、行政委任立法に基づいて修正又は維持されていない部分は、PRAの新しい規則に置き換えられる。行政委任立法の中の「PRAの規則制定権限」において、各種規則を制定する権限をPRAに付与している。また、「PRAによる監督及び執行」において、行政委任立法の規則によって課される義務を、PRAが監督し、執行する機能を有することを規定している。これにより、政府が法律で定めた包括的な規制枠組みを維持しつつ、詳細な規制が法令集から削除され、制度が2000年金融サービスおよび市場法(FSMA 2000)規制モデルに沿ったものとなる。
1|CPやPSの公表
2024年末等からの実施に向けて、以下のCPやPSが公表されてきた。
1.CP19/23-ソルベンシーIIのレビュー:マッチング調整9の改革(2023年9月28日発行)
保険会社によるマッチング調整ポートフォリオへのより広範かつ迅速な投資を可能にする改革案が示された。
9 マッチング調整(Matching Adjustment:MA)は、保険会社の資産と負債がマッチングしており、区分管理される等の一定の要件を満たしている場合に、資産のスプレッドの一定部分を反映して、リスクフリーレートの期間構造を調整することを認めるものである。英国における年金契約に対して、幅広く適用されている。具体的には、MAは、マッチング資産のポートフォリオのスプレッドから、当該資産の信用リスクのための引当であるFS(Fundamental Spread:ファンダメンタル・スプレッド)を控除することによって算出される。
2.PS2/24-ソルベンシーIIのレビュー:英国保険市場への適応10(2024年2月28日発行)
ソルベンシーII要件の一部を簡素化し、その他の要件の柔軟性を高め、英国保険市場への参入を促進する措置に関するPRAの最終方針(ほぼ最終版の規則と更新されたほぼ最終版の政策資料の形式)が含まれており、これらの提案は、技術的準備金に関する移行措置(TMTP)、内部モデル(IM)および第三国支店の規則の合理化等の分野に関連していた。
3.PS3/24-ソルベンシーIIのレビュー:報告および開示フェーズ2のほぼ最終版11(2024年2月29日発行)
PRA の最終的な報告および開示方針(ほぼ最終版の規則と更新されたほぼ最終版の政策資料の形式)として、ソルベンシーIIの報告および開示要件を合理化し、英国の保険セクターの一部の領域でデータ収集を改善するための改革が含まれていた。
4.CP5/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述12(2024年4月22日発行)
PRAの規則、政策資料(SS(Supervisory Statements:監督声明)およびSoP(Statements of policy:方針声明))、報告および開示テンプレートと指示、およびソルベンシーII統合法に代わる保険特別目的会社(ISPV)テンプレートと指示を最終決定するためのPRAの提案を示した。
2024年末等からの実施に向けて、以下のCPやPSが公表されてきた。
1.CP19/23-ソルベンシーIIのレビュー:マッチング調整9の改革(2023年9月28日発行)
保険会社によるマッチング調整ポートフォリオへのより広範かつ迅速な投資を可能にする改革案が示された。
9 マッチング調整(Matching Adjustment:MA)は、保険会社の資産と負債がマッチングしており、区分管理される等の一定の要件を満たしている場合に、資産のスプレッドの一定部分を反映して、リスクフリーレートの期間構造を調整することを認めるものである。英国における年金契約に対して、幅広く適用されている。具体的には、MAは、マッチング資産のポートフォリオのスプレッドから、当該資産の信用リスクのための引当であるFS(Fundamental Spread:ファンダメンタル・スプレッド)を控除することによって算出される。
2.PS2/24-ソルベンシーIIのレビュー:英国保険市場への適応10(2024年2月28日発行)
ソルベンシーII要件の一部を簡素化し、その他の要件の柔軟性を高め、英国保険市場への参入を促進する措置に関するPRAの最終方針(ほぼ最終版の規則と更新されたほぼ最終版の政策資料の形式)が含まれており、これらの提案は、技術的準備金に関する移行措置(TMTP)、内部モデル(IM)および第三国支店の規則の合理化等の分野に関連していた。
3.PS3/24-ソルベンシーIIのレビュー:報告および開示フェーズ2のほぼ最終版11(2024年2月29日発行)
PRA の最終的な報告および開示方針(ほぼ最終版の規則と更新されたほぼ最終版の政策資料の形式)として、ソルベンシーIIの報告および開示要件を合理化し、英国の保険セクターの一部の領域でデータ収集を改善するための改革が含まれていた。
4.CP5/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述12(2024年4月22日発行)
PRAの規則、政策資料(SS(Supervisory Statements:監督声明)およびSoP(Statements of policy:方針声明))、報告および開示テンプレートと指示、およびソルベンシーII統合法に代わる保険特別目的会社(ISPV)テンプレートと指示を最終決定するためのPRAの提案を示した。
5.PS10/24-ソルベンシーIIのレビュー:マッチング調整の改革13(2024年6月6日発行)
マッチング調整に大幅な改革をもたらすPRAの最終的な方針と規則(およびPRAルールブック14の報告部分を改正するほぼ最終的な規則)を定めた。これらの方針は、MAに関する法律の枠組みの中で、保険会社によるMAポートフォリオへのより広範かつ迅速な投資を可能にし、リスクへの対応を改善し、会社のリスク管理責任を強化することを目的としている。PS10/24に別段の記載がない限り、これらの規則は全て 2024年6月30日に発効した。
13 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2024/june/review-of-solvency-ii-reform-of-the-matching-adjustment-policy-statement
14 PRAルールブック(PRA Rulebook)は、PRA が制定した PRA 認可会社に適用される規定が含まれているものであり、保険については、ソルベンシーII適用会社とソルベンシーII非適用会社のものがある。
6.PS12/24-PRAの規則承認および免除へのアプローチ15(2024年9月25日発行)
テーマ固有の SoPの公表に対するPRAのアプローチとPRAの法定基準の使用について説明し、2000年金融サービスおよび市場法(FSMA 2000)の第138BA条に基づいて、承認がどのように付与されるかを概説している。FSMA 2000の第138BA条は、必要に応じて企業に適切な承認を与えることにより、PRAが規則のいずれかの適用を中止または変更する柔軟性を与えている。このPSの内容は、PS12/24に従って作成されている。
7.ソルベンシーIIのレビュー-既存のソルベンシーII規則の免除および修正に関するPRAの声明16(2024年9月25日発行)
ソルベンシーIIの最終規則の発効に向けた企業の準備を支援するため、この声明の目的は、PRA規則の免除または修正に関する既存のPRA指示を保持している企業に最新情報を提供することにある。声明に記載されているように、PRA は、この PSの発行後に、影響を受ける企業に連絡して、さらなる指示を提供し、2024年12月31日からも有効なままであるように、既存の指示の文言を(必要に応じて)変更することの同意を求めた。
8.ソルベンシーIIのレビュー-標準式による繰延税金の損失吸収能力の計算に関する提案された承認要件に関するPRA声明(「LACDT 声明」)17(2024年10月23日発行)
ソルベンシーIIの最終規則の発効に向けた企業の準備を支援するため、この声明の目的は、繰延税金の損失吸収能力(LACDT)に関する第138BA条承認要件を導入する最終方針の一時的な延期をPRAが検討していることを示すことにある。PRAの最終方針は、このPSで示されている。
マッチング調整に大幅な改革をもたらすPRAの最終的な方針と規則(およびPRAルールブック14の報告部分を改正するほぼ最終的な規則)を定めた。これらの方針は、MAに関する法律の枠組みの中で、保険会社によるMAポートフォリオへのより広範かつ迅速な投資を可能にし、リスクへの対応を改善し、会社のリスク管理責任を強化することを目的としている。PS10/24に別段の記載がない限り、これらの規則は全て 2024年6月30日に発効した。
13 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2024/june/review-of-solvency-ii-reform-of-the-matching-adjustment-policy-statement
14 PRAルールブック(PRA Rulebook)は、PRA が制定した PRA 認可会社に適用される規定が含まれているものであり、保険については、ソルベンシーII適用会社とソルベンシーII非適用会社のものがある。
6.PS12/24-PRAの規則承認および免除へのアプローチ15(2024年9月25日発行)
テーマ固有の SoPの公表に対するPRAのアプローチとPRAの法定基準の使用について説明し、2000年金融サービスおよび市場法(FSMA 2000)の第138BA条に基づいて、承認がどのように付与されるかを概説している。FSMA 2000の第138BA条は、必要に応じて企業に適切な承認を与えることにより、PRAが規則のいずれかの適用を中止または変更する柔軟性を与えている。このPSの内容は、PS12/24に従って作成されている。
7.ソルベンシーIIのレビュー-既存のソルベンシーII規則の免除および修正に関するPRAの声明16(2024年9月25日発行)
ソルベンシーIIの最終規則の発効に向けた企業の準備を支援するため、この声明の目的は、PRA規則の免除または修正に関する既存のPRA指示を保持している企業に最新情報を提供することにある。声明に記載されているように、PRA は、この PSの発行後に、影響を受ける企業に連絡して、さらなる指示を提供し、2024年12月31日からも有効なままであるように、既存の指示の文言を(必要に応じて)変更することの同意を求めた。
8.ソルベンシーIIのレビュー-標準式による繰延税金の損失吸収能力の計算に関する提案された承認要件に関するPRA声明(「LACDT 声明」)17(2024年10月23日発行)
ソルベンシーIIの最終規則の発効に向けた企業の準備を支援するため、この声明の目的は、繰延税金の損失吸収能力(LACDT)に関する第138BA条承認要件を導入する最終方針の一時的な延期をPRAが検討していることを示すことにある。PRAの最終方針は、このPSで示されている。
2|最終的な政策声明の公表
以上のプロセスを経て、PRAは、2024年11月15日に、ソルベンシーIIレビューの結論を実施するためのPRAの最終的な政策声明として、「PS15/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述」6を公表した。
「PS15/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述」は、EUから継承された英国の保険会社に対する健全性規制を、英国の金融サービス規制へのアプローチと一致する枠組みに適応させる重要なステップを締めくくるものである。このPSは、「PS2/24-ソルベンシーIIのレビュー:英国保険市場への適応」、「PS3/24-ソルベンシーIIのレビュー:報告および開示フェーズ2のほぼ最終版」、 および「PS10/24-ソルベンシーIIのレビュー:マッチング調整の改革」で定められた報告ルールで最終版に近い規則が提供された分野について、PRAの最終規則と政策資料も確認しており、これらも2024年12月31日に発効する。
さらに、このPSでは、PRAの規則および政策資料におけるソルベンシーII統合法およびEU指令への参照も更新しており、これらの更新は、可能な限り、要件への相互参照が全てこのPSで公開された最終規則を参照し、統合法に相当するものを参照しないようにし、政策資料におけるEU指令への参照を、必要に応じて英国の規制枠組みの関連部分に更新するためのものとなっている。また、利害関係者への支援として、このPSには、付録8に記載されているマッピングテーブル一式も含まれており、関連するソルベンシーII統合法およびその他の資料が PRAの規則および政策資料に再記述されている場所を概説している。
このPSには、2024年12月31日に発効するPRAの最終的なソルベンシーII規則、監督声明および政策声明、報告および開示テンプレートと指示、保険特別目的会社テンプレートと指示、標準式付録、および第138BA条承認申請書が含まれている。また、PRA は、このPS、PS2/24、PS3/24、PS10/24 を通じて、オンショア化された委員会委任規則(EU)2015/35(CDR)、ソルベンシーII規則2015、および関連する技術基準(TS)の全ての要素を考慮している。
なお、PRAは一般的に、企業が引き続きEIOPA(欧州保険年金監督局)が発行するガイドラインを必要に応じて考慮することを期待しているとしている。これは、方針声明「EUガイドラインおよび勧告の解釈:英国のEU離脱後のイングランド銀行と PRA のアプローチ」18に記載されているEUガイドラインへのアプローチと一致している。
以上のプロセスを経て、PRAは、2024年11月15日に、ソルベンシーIIレビューの結論を実施するためのPRAの最終的な政策声明として、「PS15/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述」6を公表した。
「PS15/24-ソルベンシーIIのレビュー:統合法の再記述」は、EUから継承された英国の保険会社に対する健全性規制を、英国の金融サービス規制へのアプローチと一致する枠組みに適応させる重要なステップを締めくくるものである。このPSは、「PS2/24-ソルベンシーIIのレビュー:英国保険市場への適応」、「PS3/24-ソルベンシーIIのレビュー:報告および開示フェーズ2のほぼ最終版」、 および「PS10/24-ソルベンシーIIのレビュー:マッチング調整の改革」で定められた報告ルールで最終版に近い規則が提供された分野について、PRAの最終規則と政策資料も確認しており、これらも2024年12月31日に発効する。
さらに、このPSでは、PRAの規則および政策資料におけるソルベンシーII統合法およびEU指令への参照も更新しており、これらの更新は、可能な限り、要件への相互参照が全てこのPSで公開された最終規則を参照し、統合法に相当するものを参照しないようにし、政策資料におけるEU指令への参照を、必要に応じて英国の規制枠組みの関連部分に更新するためのものとなっている。また、利害関係者への支援として、このPSには、付録8に記載されているマッピングテーブル一式も含まれており、関連するソルベンシーII統合法およびその他の資料が PRAの規則および政策資料に再記述されている場所を概説している。
このPSには、2024年12月31日に発効するPRAの最終的なソルベンシーII規則、監督声明および政策声明、報告および開示テンプレートと指示、保険特別目的会社テンプレートと指示、標準式付録、および第138BA条承認申請書が含まれている。また、PRA は、このPS、PS2/24、PS3/24、PS10/24 を通じて、オンショア化された委員会委任規則(EU)2015/35(CDR)、ソルベンシーII規則2015、および関連する技術基準(TS)の全ての要素を考慮している。
なお、PRAは一般的に、企業が引き続きEIOPA(欧州保険年金監督局)が発行するガイドラインを必要に応じて考慮することを期待しているとしている。これは、方針声明「EUガイドラインおよび勧告の解釈:英国のEU離脱後のイングランド銀行と PRA のアプローチ」18に記載されているEUガイドラインへのアプローチと一致している。
(2024年12月03日「基礎研レポート」)
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中村 亮一のレポート
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