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- Googleの運用型広告訴訟-米国司法省等から競争法違反との訴え
2024年04月16日
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■要旨
2023年1月、米国司法省および7州はGoogleを相手方として、競争法違反に関する訴訟を提起した。これはウェブ上の運用型広告サービスを提供するソフトウェアであるアドテクに関するものである。具体的には、ウェブ上の広告枠について入札依頼を行う媒体社向けのサービス(媒体社サービス)、入札依頼のあった広告枠について入札する広告主向けサービス(広告主サービス)および、この二つのサービスのマッチングを行う広告取引所の3つのサービスについてGoogleが独占を確保、維持したことが競争法に違反したとするものである。
Googleは、いずれも自社のサービスであるDFP媒体社サービスとAdX広告取引所との間で、競合する他の広告取引所からの入札情報を共有することにより、DFP媒体社サービスからの広告枠の入札依頼について、AdX広告取引所経由の入札が優先的に落札できる仕組みを構築した。このような仕組みによって、多くの広告主がAdX広告取引所経由での入札を希望するようになった。
ここでGoogleは、AdX広告取引所経由で入札に参加できるのは、自社のGoogle Ads広告主サービスを利用する広告主のみからとしたことで、多くの優良な広告主をGoogle Ads広告主サービスに囲い込んだ。
他方、多くの媒体社は、多くの優良な広告主が利用するGoogle Ads広告主サービスからの入札を望んだ。媒体社がGoogle Ads広告主サービスからの入札をうけるためには、AdX広告取引所へ入札依頼を出す必要がある。そしてAdX広告取引所へ入札依頼を行うためには、媒体社はDFP媒体社サービスを利用しなければならないとするとともに、他の媒体社サービスとの併用を事実上禁止した。
これらの結果、アドテク全体でのGoogleのシェアは90%を超えた。米国司法省らはこれらの独占の確保、維持に伴いGoogleは超過的な利潤を得て、広告主等の利益を毀損したなどとして競争法(シャーマン法)違反と主張している。
■目次
1――はじめに
2――Googleのアドテク支配の経緯
1|Googleによるアドテクの構築・買収
2|アドテクの支配力構築
3――ウォーターフォール方式とGoogleの対応
1|ウォーターフォール方式の入札
2|ダイナミックアロケーション
4――Googleによる競合社の排除と顧客利益の阻害
1|総論
2|二つの入札により広告主の利益を害する
3|手数料の操作により価値の高い広告枠を確保
4|自社の独占を脅かす企業等の買収・消滅
5|AdX広告取引所の規約変更
5――ヘッダー入札における競合社の排除
1|ヘッダー入札
2|ヘッダー入札への対応―公開入札
3|FacebookとAmazonへの対応
6――Googleによる媒体社サイドでの対応
1|セルサイド・ダイナミック・レベニュー・シェア
2|プロジェクト・ポアロ
3|統一価格ルールの強制
4|Accelerated Mobile Pages(AMP)の導入
5|スマート入札の導入
7――法的救済の訴え
1|米国司法省等の主張する違法行為
2|要請する救済
8――解説および検討
1|TVCMに当てはめた例え話
2|運用型広告でのGoogleの優位性
3|運用型広告でのGoogleの独占の確保、維持
4|運用型広告でのGoogleの競争法上の問題
9――おわりに
2023年1月、米国司法省および7州はGoogleを相手方として、競争法違反に関する訴訟を提起した。これはウェブ上の運用型広告サービスを提供するソフトウェアであるアドテクに関するものである。具体的には、ウェブ上の広告枠について入札依頼を行う媒体社向けのサービス(媒体社サービス)、入札依頼のあった広告枠について入札する広告主向けサービス(広告主サービス)および、この二つのサービスのマッチングを行う広告取引所の3つのサービスについてGoogleが独占を確保、維持したことが競争法に違反したとするものである。
Googleは、いずれも自社のサービスであるDFP媒体社サービスとAdX広告取引所との間で、競合する他の広告取引所からの入札情報を共有することにより、DFP媒体社サービスからの広告枠の入札依頼について、AdX広告取引所経由の入札が優先的に落札できる仕組みを構築した。このような仕組みによって、多くの広告主がAdX広告取引所経由での入札を希望するようになった。
ここでGoogleは、AdX広告取引所経由で入札に参加できるのは、自社のGoogle Ads広告主サービスを利用する広告主のみからとしたことで、多くの優良な広告主をGoogle Ads広告主サービスに囲い込んだ。
他方、多くの媒体社は、多くの優良な広告主が利用するGoogle Ads広告主サービスからの入札を望んだ。媒体社がGoogle Ads広告主サービスからの入札をうけるためには、AdX広告取引所へ入札依頼を出す必要がある。そしてAdX広告取引所へ入札依頼を行うためには、媒体社はDFP媒体社サービスを利用しなければならないとするとともに、他の媒体社サービスとの併用を事実上禁止した。
これらの結果、アドテク全体でのGoogleのシェアは90%を超えた。米国司法省らはこれらの独占の確保、維持に伴いGoogleは超過的な利潤を得て、広告主等の利益を毀損したなどとして競争法(シャーマン法)違反と主張している。
■目次
1――はじめに
2――Googleのアドテク支配の経緯
1|Googleによるアドテクの構築・買収
2|アドテクの支配力構築
3――ウォーターフォール方式とGoogleの対応
1|ウォーターフォール方式の入札
2|ダイナミックアロケーション
4――Googleによる競合社の排除と顧客利益の阻害
1|総論
2|二つの入札により広告主の利益を害する
3|手数料の操作により価値の高い広告枠を確保
4|自社の独占を脅かす企業等の買収・消滅
5|AdX広告取引所の規約変更
5――ヘッダー入札における競合社の排除
1|ヘッダー入札
2|ヘッダー入札への対応―公開入札
3|FacebookとAmazonへの対応
6――Googleによる媒体社サイドでの対応
1|セルサイド・ダイナミック・レベニュー・シェア
2|プロジェクト・ポアロ
3|統一価格ルールの強制
4|Accelerated Mobile Pages(AMP)の導入
5|スマート入札の導入
7――法的救済の訴え
1|米国司法省等の主張する違法行為
2|要請する救済
8――解説および検討
1|TVCMに当てはめた例え話
2|運用型広告でのGoogleの優位性
3|運用型広告でのGoogleの独占の確保、維持
4|運用型広告でのGoogleの競争法上の問題
9――おわりに
(2024年04月16日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月 専務取締役保険研究部研究理事
2025年4月 取締役保険研究部研究理事
2025年7月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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【Googleの運用型広告訴訟-米国司法省等から競争法違反との訴え】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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