2024年02月28日

少子化でも拡大、ランドセル市場-平均価格の上昇で市場規模は563億円へ

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 少子化にも関わらずランドセル市場は拡大し、2023年では推計563億円にのぼる。10年前と比べて市場規模は約3割増えているが、その理由はランドセル平均価格の上昇であり、2023年は平均5.85万円である(10年前より+1.89円)。ただし、5年後の平均価格が現在より+5千円とすると、市場規模は2023年頃をピークに縮小する。
     
  • 平均価格上昇の背景には「6ポケット」(両親と両祖父母の経済ポケット)と言われるように1人の子どもに充てられる予算が増えていることがある。祖父母による購入が増え(現在、過半数)帰省時に選ぶ家庭が増えたことや近年の「ラン活」によって、購入時期のピークは入学の約1年前の4・5月へと前倒しされている。
     
  • ランドセルの色も多様化しており、かつては男児は黒、女児は赤一辺倒だったが、現在は男児では黒が最多だが5割台へと減り、その他は紺や青、緑など。女児では最多は紫/薄紫が約3割で、その他は桃や水色、赤などと多様化している。また、6年間で需要も変わるために、ランドセルのサブスクリプションサービスも登場している。
     
  • 祖父母の購入が増えた背景には、親世代の経済状況の厳しさもある。35~44歳の男性の非正規雇用率は現在、約1割で祖父母世代の3倍に増え、正規雇用者でも、足元では大企業を中心に賃上げ傾向はあるが、10年ほど前と比べて30・40歳代で男女とも賃金が伸びにくくなっている。物価高が継続する中では「次元の異なる少子化対策」で進められている経済支援に加えて、中長期的に安定した就業環境の整備が必要だ。


■目次

1――少子化でもランドセル市場は拡大~2023年は563億円へ
2――ランドセル市場拡大の背景
 ~祖父母の購入で価格上昇と購入時期の前倒し、「ラン活」が助長
3――ランドセルの色の多様化
 ~男児は黒が過半数、女児は薄紫など多様化、サブスクサービスも登場
4――小学生の親世代の経済状況の厳しさ
 ~人手不足・賃上げでも正規雇用者の賃金カーブは平坦化
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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