2023年07月20日

新型コロナ5類移行後の消費者行動(2)働き方編-在宅勤務低頻度層で出社が増えるが、ビジネスチャットの毎日利用は2割へ

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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1――はじめに~新型コロナ5類移行後の働き方は?

今年5月8日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけがインフルエンザと同じ5類へと引き下げられた。前稿1にて消費行動の変化について見たところ、著しい変化ではないが、これまで外出控え傾向の強かったシニアを中心に外食や飲み会、デパートでの買い物といった外出関連行動が一層、活発になっていた。

本稿では、同じ調査データ2を用いて、5類変更後の出社や在宅勤務の頻度など働き方の変化を捉える。なお、分析はテレワーク利用が比較的多い正規雇用者を対象とする。
 
1 久我尚子「新型コロナ5類移行後の消費者行動(1)買い物・食事偏」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2023/7/13)
2 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」・「生活に関する調査」、詳細は前稿参照。

2――働き方の変化

2――働き方の変化~若者や大都市圏の在宅勤務低頻度層などで出社増、ビジネスチャット毎日利用2割

1全体の状況~在宅勤務低頻度層を中心に出社増加、ビジネスチャット利用は週5以上の高頻度層増加
まず、20~74歳全体の正規雇用者の仕事に関わる各種行動の頻度の変化について見ると、「勤務先への出社」については、「週5回以上」の高頻度層が増えるとともに(2022年6月72.7%→2023年6月は78.6%で+5.9%pt)、「対面会議・打合せ」の頻度も高まっている(「週1~2回」以上が同24.9%→同32.3%で+7.4%pt)(図表1)。

一方、出社が増えることで「在宅勤務などによるテレワーク」は減っており(全体から「利用していない」割合を差し引いた利用率は同40.0%→同33.1%で▲6.9%pt)、利用者の中では「月3回以下」の低頻度層の減少が目立つ(同19.4%→同13.3%で▲6.1%pt)。また、「オンライン会議・打合せ」については、テレワークほどではないが、わずかに減っており(利用率は同51.2%→同49.7%で▲1.5%pt)、利用頻度もやや低下している(「週1~2回」以上が同25.7%→同22.8%で▲2.9%pt)。一方、「ビジネスチャットの利用」については、利用率は変わらないが、「週5回以上」の高頻度層が増え(同18.0%→同21.3%で+3.3%pt)、「月3回以下」の低頻層がやや減っている(同16.0%→同13.5%で▲2.5%pt)。

つまり、5類移行後、正規雇用者では在宅勤務の利用頻度が低かった層を中心に、出社や対面での会議が増えている様子がうかがえる。一方、在宅勤務が減っても、ビジネスチャットなどのデジタルツールについては、むしろ積極的に利用する層がやや増えている。コロナ禍でテレワークの浸透とともにデジタルツールも普及してきたが、出社が増えても、利便性が高く生産性向上への貢献が期待されるツールの利用は引き続き進展しているようだ。
図表1 仕事に関わる各種行動の頻度の変化(20~74歳、正規雇用者)
2年代別の状況~若者と60歳代の在宅勤務低頻度層で出社増加、高年齢ほどビジネスチャット利用増加
年代別に見ると、「勤務先への出社」については、全ての年代で「週5回以上」の高頻度層が増えており、1年前に7割を下回って比較的少なかった30歳代(2022年6月67.3%→2023年6月79.1%で+11.8%pt)や60歳代(同66.7%→同75.3%で+8.6%pt)では約1割増えている(図表2(a))。また、20歳代(同74.2%→同80.3%で+6.1%pt)でも増えている。

出社が増えることで「対面会議・打合せ」については、全ての年代で「週1~2回」以上が増えており、特に60歳代(同20.8%→同39.6%で+18.8%pt)や50歳代(同26.6%→同38.0%で+11.4%pt)で大幅に増えているほか、30歳代(同26.6%→同32.8%で+6.2%pt)や20歳代(同25.8%→同31.3%で+5.5%pt)でも増えている(図表2(b))。また、全ての年代で「週5回以上」の高頻度層も増えており、高年齢層で目立つ(60歳代は同1.0%→同6.2%で+5.2%pt、50歳代は同6.1%→同9.6%で+3.5%pt)。

一方、出社が増えることで「在宅勤務などによるテレワーク」については、全ての年代で減っており、もともと利用率が比較的高い20歳代(同40.0%→同29.3%で▲10.7%pt)や30歳代(同43.9%→同35.6%で▲8.3%pt)、60歳代(同42.7%→同34.6%で▲8.1%pt)で目立つ(図表2(c))。また、「月3回以下」の低頻度層の減少が目立つ年代が多い(20歳代は同23.2%→同13.6%で▲9.6%pt、30歳代は同23.8%→同14.7%で▲9.1%pt、60歳代は同20.8%→同11.1%で▲9.7%pt)。

また、「オンライン会議・打合せ」については、テレワークと同様に20歳代(同53.5%→同47.6%で▲5.9%pt)や30歳代(同57.9%→同54.2%で▲3.7%pt)での利用減少が目立つ(図表2(d))。また、「週5以上」や「週3~4回」などの高頻度層は30~50歳代を中心に減っている。

一方、「ビジネスチャットの利用」については、もともと利用率が比較的高い30歳代(同51.4%→同46.3%で▲5.1%pt)や20歳代(同51.6%→同48.3%で▲3.3%pt)では減っているが、40歳代以上では、利用率の低い高年齢層ほど増えている(60歳代は同34.4%→同43.2%で+8.8%pt、50歳代は同38.0%→同42.4%で+4.4%pt)(図表2(e))。また、全ての年代で「週3~4回」以上が増えており、特に60歳代(同12.5%→同21.0%で+8.5%pt)や20歳代(同25.2%→同32.0%で+6.8%pt)で目立つ。
図表2 年代別に見た仕事に関わる各種行動の頻度の変化
以上より、5類移行後、正規雇用者では20歳代や30歳代、60歳代の在宅勤務低頻度層を中心に、出社や対面での会議が増えている様子がうかがえる。また、ビジネスチャットなどのデジタルツールについては、もともと利用率が比較的高かった若い年代では在宅勤務の減少とともに利用が減る一方、利用率の低かった高年齢層では利用がむしろ増え、全体で見ると変化が相殺されているようだ。なお、全体では高頻度層が増えていたが、これは20歳代と60歳代での増加が影響しているようだ。

(2023年07月20日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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