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2023年02月21日
マスク着用について、親子の考え方は似ている
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1――はじめに
マスク着用について、国は、2022年5月に屋外では原則不要、屋内でも距離が確保でき会話をほとんど行わない場合は不要との見方を示し、場面に応じた適切な着脱を促してきた1,2。さらに、2023年の5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行することが予定されている3。それに先立ち、3月13日以降は、屋内外を問わず、マスク着用は個人の判断で行う4こととなった。文部科学省は、学校の卒業式について児童生徒と教職員は「着用せずに出席を基本」とする通知を教育委員会などに出した。緩和日より前に式がある場合も出席時の着用は求めていない5。
ニッセイ基礎研究所では、2022年10月にマスク着用について、子育て世帯を対象にインターネット調査を行った6。大人と子どもが、それぞれどのように感じているかは「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」で、大人と子どもの違いは「マスク着用において、子どもは大人よりも周囲に合わせる傾向」で紹介した。
マスク着用について、個人の判断と言っても、子どもは家庭の判断に依存する可能性がある。そこで、本稿では、親子がマスク着用について、どの程度似た(あるいは異なった)考え方をもっているのかを紹介する。
1 厚生労働省「屋外・屋内でのマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf 2023年2月17日アクセス)
2 厚生労働省「子どものマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942602.pdf 2023年2月17日アクセス)
3 2023年1月19日 日本経済新聞「コロナ「5類」今春移行へ、20日に閣僚協議 政府」等
4 2023年2月10日 日本経済新聞「マスク「個人判断」3月13日から 政府、屋内外問わず」等
5 文部科学省「卒業式におけるマスクの取扱い等について」(https://www.mext.go.jp/content/20230210-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf 2023年2月17日アクセス)
6 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
ニッセイ基礎研究所では、2022年10月にマスク着用について、子育て世帯を対象にインターネット調査を行った6。大人と子どもが、それぞれどのように感じているかは「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」で、大人と子どもの違いは「マスク着用において、子どもは大人よりも周囲に合わせる傾向」で紹介した。
マスク着用について、個人の判断と言っても、子どもは家庭の判断に依存する可能性がある。そこで、本稿では、親子がマスク着用について、どの程度似た(あるいは異なった)考え方をもっているのかを紹介する。
1 厚生労働省「屋外・屋内でのマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf 2023年2月17日アクセス)
2 厚生労働省「子どものマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942602.pdf 2023年2月17日アクセス)
3 2023年1月19日 日本経済新聞「コロナ「5類」今春移行へ、20日に閣僚協議 政府」等
4 2023年2月10日 日本経済新聞「マスク「個人判断」3月13日から 政府、屋内外問わず」等
5 文部科学省「卒業式におけるマスクの取扱い等について」(https://www.mext.go.jp/content/20230210-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf 2023年2月17日アクセス)
6 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
2――調査の概要
本稿で使用したデータは、ニッセイ基礎研究所が、小学生から中学生の子と同居する全国の24~64歳の男女と、その小学生から中学生の子を対象に、2022年10月に実施したインターネット調査によって得られたものである。有職男性:無職男性:有職女性:無職女性の割合が、なるべく全国の分布7に近づくように配信し、1000組の親子から回答を得た。
本稿では、マスクをつけることについて感じていることに回答することを承諾した865人の子8と、その親を対象に分析を行った。
7 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職・無職分布。
8 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないことから、本調査に回答した子の分布は必ずしも日本全体の小・中学生の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。
本稿では、マスクをつけることについて感じていることに回答することを承諾した865人の子8と、その親を対象に分析を行った。
7 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職・無職分布。
8 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないことから、本調査に回答した子の分布は必ずしも日本全体の小・中学生の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。
3――大人と子どもの考え方の違い
1|大人(親)と子どもでマスクをつけたい理由に違い
小中学生と同居する親とその小中学生の子に対して、マスクをつけることについて感じていることとして、つけたくない理由とつけたい理由を親と子、それぞれに対して提示し、それぞれあてはまる意見をすべて選んでもらった。親と子に提示した意見は、おおむね同様の内容とした。
因子分析の結果(最終ページを参照のこと)を参考にすると、マスクをつけることについての考え方は、「つけたくない(暑い、面倒)」「つけたくない(コミュニケーション)」「つけたい(感染予防)」「つけたい(周囲の目)」「つけたい(落ち着く、はずかしい)」の5つと、「その他・特に感じることは無い」の計6つのグループに分けることができた(図表2)。親子の考え方の比較を単純化するために、以下では、個々の選択肢ではなく、6つのグループ別に比較する。
マスクについて感じていることを、親と子で比較したところ、「つけたい(感染予防)」は親(大人)が高く、「つけたい(周囲の目)」は子が高かったが、「つけたくない(暑い、面倒)」「つけたくない(コミュニケーション)」「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は同様だった9(図表1)。
小中学生と同居する親とその小中学生の子に対して、マスクをつけることについて感じていることとして、つけたくない理由とつけたい理由を親と子、それぞれに対して提示し、それぞれあてはまる意見をすべて選んでもらった。親と子に提示した意見は、おおむね同様の内容とした。
因子分析の結果(最終ページを参照のこと)を参考にすると、マスクをつけることについての考え方は、「つけたくない(暑い、面倒)」「つけたくない(コミュニケーション)」「つけたい(感染予防)」「つけたい(周囲の目)」「つけたい(落ち着く、はずかしい)」の5つと、「その他・特に感じることは無い」の計6つのグループに分けることができた(図表2)。親子の考え方の比較を単純化するために、以下では、個々の選択肢ではなく、6つのグループ別に比較する。
マスクについて感じていることを、親と子で比較したところ、「つけたい(感染予防)」は親(大人)が高く、「つけたい(周囲の目)」は子が高かったが、「つけたくない(暑い、面倒)」「つけたくない(コミュニケーション)」「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は同様だった9(図表1)。
9 詳細は、村松・岩崎「マスク着用において、子どもは大人よりも周囲に合わせる傾向」をご参照ください。
子の性別や年齢を考慮したうえで詳細をみるために、子の考え方を被説明変数とし、子の性、年齢、親の考え方(6つのグループ別にあてはまるか否か)、および、アンケートを回答するにあたりどの程度親が関与したかを説明変数として、線形確率モデルで推計した。親の性、年齢は調整変数として投入した。アンケートを回答するにあたっての親の関与は、「本人が回答し、本人が入力した(48.9%)」「本人の回答を、親が入力した(49.6%)」「本人の立場に立って、親が回答した(1.5%)」で、本稿では、「本人が回答し、本人が入力した」を「関与なし」、「本人の回答を、親が入力した」「本人の立場に立って、親が回答した」を「関与あり」とした。
結果は図表4に示したとおりである。子の性別、子の年齢、回答における親の関与、親の性別、親の年齢を調整しても、なお、親と子で似た考えを回答していることがわかる。家庭内で新型コロナウイルス感染症について、あるいはマスク着用等の対策について話す中で、子どもの考えも決まっていくものと思われる。
また、親の考えを考慮しても、女の子の方が「つけたい(周囲の目)」や「つけたい(落ち着く、はずかしい)」といった考えを持ちがちであること、年齢が大きい子の方が「つけたくない(暑い、面倒)」や「つけたい(周囲の目)」、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」と考えがちであることがわかる。
回答における親の関与をみると、「つけたくない(コミュニケーション)」は、親が関与している場合にあてはまり、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は親が関与していない場合にあてはまる傾向がみられた。親が子の考えをすべてわかっているわけでもない可能性がある。「つけたくない(コミュニケーション)」は、子どもの話等から、親が推測し懸念している可能性が考えられる。また、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は、日ごろ子どもが親に訴えることが少ないのかもしれない。
結果は図表4に示したとおりである。子の性別、子の年齢、回答における親の関与、親の性別、親の年齢を調整しても、なお、親と子で似た考えを回答していることがわかる。家庭内で新型コロナウイルス感染症について、あるいはマスク着用等の対策について話す中で、子どもの考えも決まっていくものと思われる。
また、親の考えを考慮しても、女の子の方が「つけたい(周囲の目)」や「つけたい(落ち着く、はずかしい)」といった考えを持ちがちであること、年齢が大きい子の方が「つけたくない(暑い、面倒)」や「つけたい(周囲の目)」、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」と考えがちであることがわかる。
回答における親の関与をみると、「つけたくない(コミュニケーション)」は、親が関与している場合にあてはまり、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は親が関与していない場合にあてはまる傾向がみられた。親が子の考えをすべてわかっているわけでもない可能性がある。「つけたくない(コミュニケーション)」は、子どもの話等から、親が推測し懸念している可能性が考えられる。また、「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は、日ごろ子どもが親に訴えることが少ないのかもしれない。
4――おわりに
本稿では、マスク着用に関する親子の回答を比較した。その結果、親子で似た考えを持っている(家庭の方針がある)ことが推測された。ただし、親が子の考えをすべてわかっているわけでもない可能性がある。
大人は、自分自身の判断と職場等周囲の状況に応じてマスクを着脱しうるが、子どもは自分自身の判断以外に学校等周囲の状況、さらに親(家庭)の言いつけを守ろうとすることから、大人よりは制約が多くなるのかもしれない。家庭でも、子どもが周囲との関係で嫌な思いをしないよう着脱それぞれのメリットを伝えつつ、子どもの考え方や家庭の考え方を探っていくことが必要になるだろう。
大人は、自分自身の判断と職場等周囲の状況に応じてマスクを着脱しうるが、子どもは自分自身の判断以外に学校等周囲の状況、さらに親(家庭)の言いつけを守ろうとすることから、大人よりは制約が多くなるのかもしれない。家庭でも、子どもが周囲との関係で嫌な思いをしないよう着脱それぞれのメリットを伝えつつ、子どもの考え方や家庭の考え方を探っていくことが必要になるだろう。
参考――因子分析の結果
(2023年02月21日「基礎研レター」)


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