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東京一極集中、ほぼ完全復活へ(1)-2022年1-9月「住民基本台帳」転入超過人口都道府県ランキング

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
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【はじめに】
筆者の暮らす東京都でも日々外出者数が増える一方で、飲食業なども休日には従前のような活況を呈している。ここで、統計的にもコロナ禍による人流の変化は終焉を迎えたともいえるようなデータが示されているので紹介しておきたい。
【東京圏ではなく、再び東京都集中へ】
- 地方の転出超過数の減少は、地方からの感染警戒による転出抑制(マイナス要因の減少)によるものであり、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)から多くの人口を引き寄せた(プラス要因の増加)ことに起因する現象ではなかった。このため、マイナス要因の原因であるコロナ禍が緩和されることにより、従前通りの人口移動に戻るであろうことが予想された。
- コロナ禍における地方からの人口転出の男女格差(女性が男性より多く減少する現象)はさらに強化された。地方における人口転出は主に就職時に発生することから、今回のようにコロナ禍で経済が不安定になった場合などは、女性の就業場所が地方では限られるなどの弊害もより明らかになった。
- 男女の就業場所格差が明らかになる中で、男女の4年制大学進学率は年々平等化(ほぼ拮抗)に向かっており、男女平等の教育理念と労働市場の男女偏在のダブルスタンダードがさらに浮き彫りになっている。
- 第16回出生動向基本調査(2021年)の結果から、18歳から34歳までの若い未婚男女が目指すライフデザインにおいて、男女共働きで女性が出産育児期にも仕事を辞めない「両立型」の支持層がさらに増加(男性39%、女性34%)しており、今の50歳代から60歳代が理想とした家族ライフデザインとは真逆の結果となっている1。
コロナ禍前は、年間における人口シャッフル(各エリアの人口純増減を生み出す流出入の差)によって人口が増加したエリアの人口純増数の50~55%程度を東京都が占めていた。さらに東京都のベッドタウンエリアでもある神奈川県、埼玉県、千葉県(東京圏)における純増数を加算すると、人口増加エリアにおける人口純増数の8割から9割が東京圏の人口増加であった。ただ、コロナ禍の2020年と2021年においては、テレワークの拡大もあり、東京都に隣接する神奈川県、埼玉県へ人口流入が増加し、「東京圏一極集中」の状況となっていた。
コロナ禍による人流制限が緩和された2022年も9月末で既に年間の4分の3の期間が経過した。人口移動の「天下分け目」月といわれる3月の移動結果も含まれるため、残る四半期での大きな人口変動は期待薄である。そのような状況下で東京都が再び人口増加エリアの首位に返り咲き、同期間を通じて転入超過数も4万人以上(占有率38%)となった。2位の神奈川県を1万5千人以上、1.6倍も引き離す独走状態となっている。
そして相変わらず、未来人口の増加につながる若い女性を中心に男性の1.4倍となる2.4万人を東京都は集めており、女性人口の純増数でみると、2位神奈川県1.3万人の1.9倍、3位埼玉県1.1万人の2.3倍、4位千葉県5.3千人の4.5倍、5位大阪府4.8千人の4.9倍、6位福岡県2.9千人の8.0倍という不動の女性誘致力を誇っている。
未来の出生数を考えるならば、圧倒的な未来人口の勝ち組、それが東京都であり、そのパワーの源は「就職期に女性を集める力がダントツである」に尽きる。これについてのエビデンスを最後に紹介しておきたい。
1 「激変した「ニッポンの理想の家族」-第16回出生動向基本調査「独身者調査」分析/ニッポンの世代間格差を正確に知る」2022年10月3日 基礎研レポートを参照。
17位から19位は東京都から社会減している女性の年齢ゾーンのメインであるが、30歳代の女性と乳幼女児である。地方創生における女性誘致でメインに上がることが多い「子育て期のママとその子どもの地方誘致」2の対象となっている層であるものの、このような対策では、とても地元から失った独身女性人口を補えないことも併せて確認しておきたい。
筆者が(公財)東北活性化研究センターと実施した調査では、進学先の大学がどこにあっても、自分たちが望む仕事に就くことができるのか、というのが彼女たちのライフデザインにとっての主たる決定要因であった。
女性活躍推進は「女性への配慮」などではない。エリアの存続をかけた、人口戦略の要であることを、人口動態を研究する立場から何度でも訴えたい。
2 これまでの地方創生政策において、女性人口の誘致、特にその仕事に主眼を置いた誘致策はほとんど見られなかった。地方の社会減のメインとなっている女性人口を誘致するための施策としては「子育て世帯誘致」がほとんどの地方において謳われている。しかしこれでは最も人口流出の激しい20代前半の独身女性の就職による大きな人口減を食い止めることはできない。
(2022年11月14日「研究員の眼」)
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- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は年度最新順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
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