2022年09月21日

米住宅着工・許可件数(22年8月)-着工件数は予想を上回る一方、許可件数は大幅に予想を下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:着工件数は市場予想を上回った一方、許可件数は市場予想を大幅に下回る

9月20日、米国センサス局は8月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は157.5万件(前月改定値:140.4万件)と144.6万件から下方修正された前月、市場予想の145.0万件(Bloomberg集計の中央値)を上回った(図表1、図表3)。

着工許可件数(季節調整済、年率)は151.7万件(前月改定値:168.5万件)と167.4万件から小幅上方修正された前月、市場予想の160.4万件を大幅に下回った(図表2、図表5)。許可件数は20年6月(133.8万件)以来、26ヵ月ぶりの水準となった。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:着工件数は増加も、戸建てを中心に許可件数は大幅減少

住宅着工件数の伸びは前月比+12.2%(前月:▲10.9%)と前月から2桁のプラスに転じた(図表3)。内訳をみると、戸建てが+3.4%(前月:▲10.8%)と6ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、集合住宅も+28.0%(前月:▲11.0%)とプラスに転じた(図表4)。

前年同月比でも▲0.1%(前月:▲10.7%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、集合住宅が+33.1%(前月:+11.4%)と3ヵ月連続で2桁のプラスを維持した一方、戸建てが▲14.6%(前月:▲19.6%)と4ヵ月連続でマイナスとなっており、戸建ての不振が目立っている。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が▲2.4%ポイント(前月:+4.4%ポイント)と前月からマイナスに転じた。一方、それ以外の地域では中西部が+1.9%ポイント(前月:▲4.2%ポイント)、南部が+12.4%ポイント(前月:▲10.4%ポイント)、西部が+0.3%ポイント(前月:▲0.6%ポイント)といずれも前月からプラスに転じた。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比▲10.0%(前月:▲0.6%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、マイナス幅が大幅に拡大した(図表5)。戸建てが▲3.5%(前月:▲3.9%)と6ヵ月連続でマイナスとなったほか、集合住宅も▲17.9%(前月:+3.7%)と2桁のマイナスに転じて全体を押し下げた(図表6)。

前年同月比は▲14.4%(前月:+1.8%)とこちらも7ヵ月ぶりにマイナスに転じた。戸建てが▲15.3%(前月:▲11.3%)と6ヵ月連続でマイナスとなったほか、集合住宅も▲13.1%(前月:+24.7%)と20年12月(▲0.2%)以来、20カ月ぶりにマイナスに転じた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、9月が20年5月(37)以来となる46(前月:49)と市場予想の47を下回り、9ヵ月連続の低下となった(図表7)。内訳は販売現況が54(前月:57)、販売見込みが46(前月:47)、客足が31(前月:32)となり、いずれも新型コロナの影響で経済活動が大幅に制限された20年5月以来の水準に悪化した。

NAHBのチーフエコノミストは「建設業者のセンチメントは22年に入り毎月低下している。建設業者は建設コストの上昇とFRBの積極的な金融政策により住宅ローン金利が先週6%を超えて08年以来の高水準となる中、住宅不況は緩和の兆しが見えない」と述べた。

8月の住宅着工件数は前月比で大幅な増加に転じたものの、先行指標は戸建てを中心に軟調となっているほか、建設業者のセンチメントも悪化するなど、住宅市場を取り巻く環境は引き続き厳しいため、9月以降は再び悪化しよう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年09月21日「経済・金融フラッシュ」)

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