2022年02月28日

米個人所得・消費支出(22年1月)-個人消費支出(前月比)は10ヵ月ぶりの水準に上昇、個人所得とともに市場予想を上回る。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を上回る

2月25日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比横這い(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲0.3%は上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+2.1%(前月改定値:▲0.8%)と▲0.6%から小幅下方修正された前月からプラスに転じ、市場予想の+1.6%を上回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+1.5%(前月改定値:▲1.3%)とこちらも▲1.0%から下方修正された前月からプラスに転じ、市場予想の+1.2%を上回った(図表5)。貯蓄率1は6.4%(前月:8.2%)と、前月から▲1.8%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.6%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から小幅上方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.6%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.5%(前月:+0.5%)と前月、市場予想(+0.5%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.1%(前月:+5.8%)と前月、市場予想(+6.0%)を上回った。コア指数は+5.2%(前月:+4.9%)と前月を上回った一方、市場予想(+5.2%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費(前月比)が10ヵ月ぶりの水準に上昇

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 1月の個人消費は前月比で21年3月(+3.3%)以来10ヵ月ぶりの水準に上昇した(図表1)。米国ではオミクロン株の感染拡大に伴い、1月中旬には新型コロナの新規感染者数が80万人と新型コロナ流行以来最高となったことから、消費への影響が懸念された。しかしながら、対面型サービス消費では減少がみられたものの、財消費は全般的に堅調を維持しており、新型コロナの消費への影響は限定的となった。また、1月が好調となった要因として、21年の年末商戦が10月から活発となるなど、商品の売り切れを恐れて、例年より財消費の出だしが早く、12月には消費が減少に転じたことの反動も影響したとみられる。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数の上昇基調が持続しており、FRBの物価目標(2%)を11ヵ月連続で上回ったほか、82年2月(+6.2%)以来およそ40ぶりの水準となった。物価の基調を示すコア指数も21年9月から5ヵ月連続で上昇したほか、83年4月(+5.5%)以来の水準まで上昇しており、足元で物価上昇圧力の高い状況が持続していることを示す結果となった。

3.所得動向:児童税額控除の支給減少に伴い移転所得が減少

1月の個人所得(前月比)は、移転所得が▲1.3%(前月:▲横這い)と前月から減少幅が拡大した(図表2)。移転所得は金額ベースでは前月比年率▲519億ドル(前月:▲14億ドル)となったが、このうち、米国救済計画に盛り込まれた児童税額控除の還付金が▲1,207億ドル(前月:+37億ドル)と大幅な支給減少となったことが大きい。移転所得以外では、賃金・給与が+0.5%(前月:+0.7%)、利息配当収入が+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化した一方、自営業者所得は+0.4%(前月:▲1.3%)と前月からプラスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、1月の名目が+0.1%(前月:+0.2%)と前月から伸びが鈍化したほか、価格変動の影響を除いた実質ベースは▲0.5%(前月:▲0.3%)と6ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費が広範な分野で回復

1月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びとなった一方、財消費が+5.2%(前月:▲3.3%)と21年3月(+10.7%)以来10ヵ月ぶりの伸びとなり、個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が+9.7%(前月:▲5.1%)、非耐久財が+2.6%(前月:▲2.2%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+13.3%(前月:▲1.3%)、家具・家電が+8.7%(前月:▲6.7%)、娯楽財・スポーツカーが+8.5%(前月:▲7.5%)と、いずれも前月からプラスに転じ広範な分野で消費が回復したことを示した。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが▲3.1%(前月:+1.4%)と前月からマイナスに転じた一方、食料・飲料が+2.1%(前月:▲0.9%)、衣料・靴が+5.6%(前月:▲5.9%)とプラスに転じるなど、マチマチの結果となった。

サービス消費は、オミクロン株の感染拡大もあって対面型サービスの輸送が▲2.1%(前月:+2.1%)、外食・宿泊が▲1.4%(前月:+0.6%)、娯楽が▲0.3%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じた。また、医療サービスが+0.7%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化した。一方、金融サービスが+1.1%(前月:+0.5%)、住宅・公共料金が+1.3%(前月+0.3%)と伸びが加速した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前年同月比でエネルギーは11ヵ月連続2桁の上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.1%(前月:+0.9%)と8ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。食料品価格指数は+0.9%(前月:+0.3%)と、こちらも12ヵ月連続のプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+25.9%(前月:+28.9%)と前月から伸びは鈍化したものの、11ヵ月連続で2桁上昇となった(図表7)。また、食料品価格指数は+6.7%(前月:+5.7%)と55ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年02月28日「経済・金融フラッシュ」)

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