2021年05月12日

2020年のマンション市場と今後の動向-今マンションは買うべきなのか

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.290]

金融研究部 准主任研究員   渡邊 布味子

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1―はじめに

2020年のマンション市場では、コロナ禍により販売戸数が大きく減少した。

一方で、現在のマンション価格は高値水準にある。マンションを買いたい人は、今買うべきなのだろうか。

2―住宅市場と需要者の購入動機

そもそも、新築マンションの供給量は需要者の購入動機に少なからず影響を受ける。しかし、住宅の購入動機は、価格や税制の変化などの経済的理由とは必ずしも結びつかない。
 
この点、住宅金融支援機構が2013年6月に行った「住宅を取得した動機」についてのアンケートが参考になる。当時の消費税は5%であり、翌年に8%へ、翌々年に10%へと税率を引き上げる法案が可決されていた。住宅購入を検討する人々は、建物の購入に必要な費用が消費増税分だけ増加することを容易に想像できたはずであり、また、金利も低かったので、「買い時」や「金利が安い」といった経済的理由が重視されてもおかしくはない。
 
しかし、実際は、「結婚を機に」「子供や家族のため」といったライフステージや、「もっと質の良い住宅に住みたい」「もっと広い部屋に住みたい」といった生活・環境の向上が動機であるとの回答が多かった。いずれも価格や税制の変化等には左右されにくいものであり、住宅市場では、常にこうした経済的理由以外の需要が一定程度見込めるといえるだろう。

3―コロナ禍の購入動機への影響

また、最近、巣ごもり需要やテレワークの影響などで、今の住まいの広さや設備に不満を持つ人が増加している。リクルート住まいカンパニーによる今の住宅への不満についてのアンケートでは、「仕事専用スペースが欲しくなった」との意見が28%と最も多く、次いで「通信環境の良い家に住みたくなった」との意見が27%と多かった。
 
少なくとも、コロナ収束までは、在宅勤務を導入する企業が一定数あり、今の住宅に対する不満を増加させ、生活・環境の向上のため、住み替えを検討し始める人が増加する可能性がある。
 
一方で、SMBC日興証券が行った大企業マネジメントへのヒアリング調査(調査期間2020/10/26~12/2)では、現在と比べたコロナ収束後の在宅勤務の頻度について「方針は未定」と答えた企業が43%となった。コロナ後の勤務状況に関する全体的な方向性はまだ不透明であり、現時点で、郊外の広い住宅や地方へ移住する、といった思い切った行動をとる人は少ないであろう。
 
また、仮に、週の半分以上の出社を求められるとすれば、通勤利便性はある程度重視する必要がある。コロナ収束後も、都市部の通勤利便性の高い住宅は、引き続き相対的に高い競争力を保つと思われる

4―現在のマンション供給戸数の動向

一方で、マンションの供給量は減少している。新築マンションと中古マンションの取引戸数は、2020年以降のコロナ禍で、いずれも前年比で大きく減少した。
 
なお、新築マンションについては、発売サイドが発売初月の売行きを見て発売戸数を調整し、高い価格を維持している。売行きの好不調は、初月契約率70%がラインと言われている。月次の初月契約率は2016年以降に70%を下回る月が増え、2018年11月には54%、2019年10月には43%にまで落ち込むととともに、発売戸数は大幅に減少した。しかし、2020年は、コロナ禍で供給量が減ったこと、4-5月の緊急事態宣言で購入を先送りした層が2020年後半に購入したと見られることなどから、初月契約率が一時的に70%を回復した月も出てきた[図表1]。
新築マンション
供給量の調整の動きは続くだろうが、発売戸数は、徐々に増えてくる可能性がある。

ただし、2020年の新築マンション供給戸数は約2.7万戸(前年比で▲16%)と少ない。不動産経済研究所の予測によると、2021年の新築マンションの供給戸数は3.2万戸(前年比+18%)と、2019年と同程度であり、コロナ禍前の状況まで回復する見込みであるが、大幅な増加ではない[図表2]。

また、中古マンションの場合はすでに居住者がおり、その人が売却するには、別の住宅に住み替える必要があるため、売却は容易ではない。従って、価格が多少上がって、新築マンションの供給量が減ったとしても、中古マンションの供給量が大きく増加することはないだろう[図表2]。
マンション取引戸数
マンション需要は今後も引き続き強いと見られ、マンション市場の需要超過は当面続くと予想される。また、新築マンション用地の取得価格の高さから、リーマン・ショック前のように、手ごろな価格のマンションが供給される可能性も低い。マンション価格は、今後も上昇傾向が続くであろう。

5―マンションの面積・単価の動向

また、不動産の価格を見る際には、価格総額に加えて、面積当たりの単価についても必ず確認する必要がある。
 
長谷工総合研究所の調査によると、改正前の2020年までの首都圏の平均単価を見てみると、年々高くなっている一方で、1戸当たりの平均面積は小さくなっている[図表3]。
 
新築マンションの平均面積

つまり、今のマンションの購入価格は、単価の上昇がプラスに、面積の縮小がマイナスに作用しているが、単価上昇がより大きいため価格総額も上昇している。
 
マンションの価格は、「面積」だけではなく、「立地」、「設備」、「間取り」など、様々な条件に応じて価格が決まる。「縮小した面積」というマイナス条件を、「良い設備」などの他のプラス条件で拡充して競争力を保ったことで、「平均総額」と「平均単価」が高まっていると見ることができる。
 
また、2021年度の住宅ローン減税では、その年分の合計所得金額が1000万円以下であれば、対象物件の規模が50㎡以上から40㎡以上に緩和される。新築の40㎡であれば、間取りは1LDKとなることが多い。ターゲット層はDINKSや一人暮らしであり、新たな需要を掘り起こすだろう。また、この制度改正は、小規模の住宅需要の高まりを呼び、全体的な価格の上昇傾向を後押しするのではないだろうか。

6―コロナ禍でマンション価格は下がるのか

では、コロナ禍市況でマンション価格が下がることはあるだろうか。
 
まず、供給者は資金調達が容易にできる状況であり、投げ売りが生じるような事態は想像できない。また、コロナ禍によっても住宅ローンの審査は厳格化しないと考えられるため、購入希望者の資金調達が困難となり、需要全体が大幅に減少して、価格が崩れるということも想定しづらい。
 
しかし、実体経済が痛んでいるのは確かであり、一部企業の業績悪化や働く人々の所得にまで影響が及んできている。なかでもボーナスや時間外手当は企業業績悪化の影響を受けやすい[図表4]。
コロナ禍での賃金の推移(前年比)
所得が減少すれば、ほぼ同じ割合で住宅ローンの借入可能額が減少し、需要者の予算も減少する。このため、マンション市場の一部では需要が減退する可能性がある。
 
ただし、マンション供給量が少ない現在の市場では、一部の需要者が購入できないとしても、他の需要者が購入する可能性が高い。潜在的なマンションの購入者層には今回のコロナ禍でも収入にあまり影響のない人も数多く存在すると考えられるため、現在のマンション市場においては、一部の需要者の年収低下が全体のマンション価格の下落に及ぼす影響はあまり大きくないのではないだろうか。

7―数年以内にマンションが欲しいのであれば買ってもよい

一度購入した住宅は一生付き合うことも多い。どのタイミングで購入するかは多くの人が迷うところであろう。
 
住宅は高額の買い物であるため、一時の勢いで決めずに、何度か見に行くなどの慎重さは当然に求められる。しかし、新築マンションも、中古マンションも、現在は超売り手市場といってよい。価格は高値水準であるが、新築マンションの供給調整は続くと思われ、また中古マンションの供給も限定されている。当面はこの価格水準が維持されると思われ、さらに上がる可能性もあるだろう。数年のうちにマンションを買いたい、と考えていて、気に入った物件があれば、購入を検討してもよいのではないかと思う。
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

(2021年05月12日「基礎研マンスリー」)

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