2021年02月03日

リスク・リターンの推移から日本国債への投資について考える

金融研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター兼任   福本 勇樹

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残存1年以上、残存1~10年のみ、残存10年超のみで日本国債(固定利付債のみ)をそれぞれ時価総額加重で保有(以降、「残存1年以上」、「残存1~10年のみ」、「残存10年超のみ」と呼ぶ)した場合について、期待収益率(最終利回り+ロールダウン)とリスク指標の一つである修正デュレーションの過去10年間の推移を以下に示した(図表1)。
図表1:日本国債の期待収益率と修正デュレーションの推移
この10年間で「残存1年以上」の期待収益率が0.9%程度低下して約0.3%に、修正デュレーションが2.3程度長期化して約9.8になっている。2020年12月末時点で「残存1~10年のみ」の期待収益率がゼロ%近辺にあることが分かる。日本国債への投資で期待収益率を確保するには残存10年超の銘柄を中心に選択する必要がある。

図表2は図表1の期待収益率を最終利回りとロールダウンに分解して示したものである。2016年以降、「残存1~10年のみ」の期待収益率はゼロ%近辺を推移しているが、マイナス金利政策(金融機関が保有する日銀当座預金の一部に▲0.1%を適用する)とイールドカーブ・コントロール(マイナス金利政策に加えて、日本国債利回り(10年)がおおむねゼロ%近辺で推移するように国債の買入を行う)を受けて形成された残存10年以下の順イールドから得られるプラスのロールダウンを、マイナスの最終利回りが相殺している。さらに、「残存10年超のみ」の最終利回りも低下基調にあり、2020年12月末に「残存1年以上」を保有すると、期待収益率のほとんどをロールダウンが占める状況になっている。
図表2:日本国債の期待収益率の最終利回りとロールダウンへの分解
次に図表1の修正デュレーションの推移を確認すると、「残存1~10年のみ」の水準に大きな変化はないものの、「残存10年超のみ」で徐々に長期化したことが分かる。(1)最終利回りが低下した、(2)低金利環境下の長期化により相対的に低いクーポンでの発行が増えた、(3)30年国債や40年国債を中心に、全体に占める残存10年超の国債の割合が大きくなったことが、「残存1年以上」の修正デュレーションが長期化した要因として挙げられる。

「残存1年以上」を保有した場合、(2)について、0.2%以下のクーポンを持つ日本国債が占める割合は2011年12月末時点で1%(時価ベース)程度であったが、2020年12月末時点で約31%(同)にまで拡大している。また(3)については、残存10年超の日本国債の割合は、2011年12月末時点で約27%(同)であったのが、2020年12月末時点で約37%(同)にまで増えている。低金利環境が長期化している中で、発行時のクーポンの水準が低下し、かつ、償還期間も長期化する傾向にある。今後も、低金利環境が継続すれば、クーポンの水準低下や償還期間の長期化がますます進んでいくものと考えられる。

国内債券投資の役割として、インカム・ゲインの獲得や負債や株式投資の変動に対するヘッジ機能の提供などが挙げられる。しかし、今後もクーポン水準の低下が進むと、日本国債への投資にインカム・ゲインを求めるのは一層困難になる。日本国債でデュレーションの長期化を検討するだけではなく、日本国債以外の国内債券や為替リスクをヘッジした外国債券でクレジットリスクをとるなどの方法も含めて、対応策として検討すべきだろう。

見方を変えて、クーポンがほぼゼロ%の日本国債が様々な残存年限で購入できる環境になれば、キャッシュフローやデュレーションの管理目的での利便性が相対的に高まることになる。金利上昇への備えという観点だと、負債を時価評価する市場参加者であっても、負債の変動リスクをヘッジする必要性は感じられないかもしれない。一方で、新型コロナウイルス感染症による経済環境の不確実性から、追加緩和によるさらなる金利低下に備える、株式市場の大幅下落等の悲観シナリオにも一定程度の対応力のあるポートフォリオを作るといった目的であれば、日本国債投資の役割が期待できることになる。
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金融研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融市場・決済・価格評価

(2021年02月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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