2020年05月29日

鉱工業生産20年4月-リーマン・ショック時を上回る減産幅に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4月の生産はリーマン・ショック後を上回る低下幅

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が5月29日に公表した鉱工業指数によると、20年4月の鉱工業生産指数は前月比▲9.1%(3月:同▲3.7%)と3ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲5.1%、当社予想は同▲8.4%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲8.8%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲0.3%と2ヵ月ぶりの低下となった。生産指数の単月の落ち込み幅は東日本大震災時(11年3月)の前月比▲16.5%よりは小さかったが、リーマン・ショック後の前月比▲8.9%(09年1月)を上回った。また、4月の生産指数は87.1(2015年=100)となり、東日本大震災が発生した2011年3月(87.3)を下回る低水準となった。

4月の生産を業種別に見ると、生産用機械(前月比2.5%)を除く全ての業種が低下したが、輸出の落ち込みやサプライチェーン障害の影響を強く受けた自動車工業が前月比▲33.3%の大幅減産となった。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は20年1-3月期の前期比▲0.4%の後、4月は前月比1.9%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は20年1-3月期の前期比▲1.8%の後、4月は前月比▲1.3%となった。20年4月の水準を1-3月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲4.2%、建設財は▲3.9%低い。GDP統計の設備投資は20年1-3月期に前期比▲0.5%と2四半期連続で減少したが、4-6月期には減少幅が大きく拡大する可能性が高い。

消費財出荷指数は20年1-3月期の前期比0.0%の後、4月は前月比▲10.7%となった。非耐久消費財は前月比▲0.6%(1-3月期:前期比1.1%)と小幅な低下にとどまったが、自動車を含む耐久消費財が前月比▲31.7%(1-3月期:前期比▲0.9%)と急低下した。

4月の消費関連指標を確認すると、緊急事態宣言の発令に伴う外出自粛、休業要請の影響で、自動車をはじめとした財消費、外食、旅行などのサービス消費がともに大きく落ち込んだ。

GDP統計の民間消費は、20年1-3月期の前期比▲0.7%の後、4-6月期は減少幅が急拡大する可能性が高い。

2.4-6月期はリーマン・ショック以来の減産幅に

製造工業生産予測指数は、20年5月が前月比▲4.1%、6月が同3.9%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲10.4%、▲12.9%であった。4月の実現率、5月の予測修正率のマイナス幅は東日本大震災発生時(11年3月の実現率は▲19.8%、予測修正率が▲15.9%)よりは小さかったが、リーマン・ショック時よりも大きい。

予測指数を業種別にみると、4月に前月比▲31.7%の大幅減産となった輸送機械は5月も同▲23.6%とさらなる減産が計画されている(6月は同24.2%)。4月の輸送機械の生産量は直近のピーク(17年4月)時の60%弱となっているが、5月の生産が計画通りとすると50%を割り込むことになる。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
20年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、20年4-6月期は前期比▲12.8%の大幅減産となる。ここにきて世界各国で工場再開の動きが出てきているが、フル稼働にはほど遠い状況にあり、サプライチェーン障害の影響はしばらく残る可能性が高い。

今回の予測指数は、緊急事態宣言の期間延長が決まった後の5/10時点で調査されているため、生産実績の計画からの下振れ幅は4月よりも小さくなることが見込まれる。ただし、もともと生産実績は予測指数の伸びよりも低くなる傾向があるため、実際の減産幅は予測指数で先延ばししたよりも大きくなる可能性が高い。現時点では、20年4-6月期の鉱工業生産は前期比▲15%程度のマイナスになると予想している(四半期ベースの過去最大の減産幅は09年1-3月期の前期比▲20.5%)。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年05月29日「経済・金融フラッシュ」)

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