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1.中国経済の概況

2.需要項目別の動き
個人消費の代表的な指標である小売売上高の動きを見ると、19年は前年比8.0%増の約41兆元で、日本円に換算すると約650兆円(1元=15.8円)だった。18年の同9.0%増を1.0ポイント下回った。足元の動きを見ると、19年に入りネットセールとその前の買い控えや反動減などで乱高下したものの、基本的には緩やかな減速傾向を示している(図表-3)。
業種別の内訳が分かる限額以上企業の統計を見ると、日用品類は前年比13.9%増と18年の同13.7%増を上回り、化粧品は同12.6%増と18年の同9.6%増を上回り、飲食も同7.1%増と18年の同6.4%増を上回ったものの、住宅販売の低迷を背景に家電類が同5.6%増、家具類も同5.1%増と低位に留まるとともに18年の伸びを下回り、自動車は同0.8%減で2年連続の前年割れとなった。但し、足元の動きを見ると、12月の自動車販売は前年比0.1%減まで持ち直しており、自動車生産が2ヵ月連続でプラスになるなど底打ちの兆しが見えてきている(図表-4)。
なお、個人消費への影響が大きい雇用情勢を見ると、都市部の登録失業率は3.62%と低位を維持、都市部の求人倍率も1.27倍と1倍を上回っているものの、都市部の調査失業率が5.2%と高止まりしている点が懸念材料だ。また、消費者信頼感指数は引き続き高水準を維持している。
投資の代表的な指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ると、19年は前年比5.4%増の約55兆元で、日本円に換算すると約870兆円(1元=15.8円)だった。18年の同5.9%増を0.5ポイント下回った。足元の動きを見ると、10月の前年比3.4%増(ニッセイ基礎研の独自推計)を直近ボトムに、11月は同5.2%増、12月は同7.6%増と2ヵ月連続で持ち直してきた(図表-5)。
投資を3大セクター別に見ると、不動産開発投資は前年比9.9%増と18年の同9.5%増を小幅に上回り、インフラ投資は同3.8%増で横ばいだったものの、製造業が同3.1%増と18年の同9.5%増を大幅に下回った。製造業の投資が低迷している背景には、米中対立の影響がある。槍玉に挙げられたのが「中国製造2025」で、その関連投資に対する不確実性が高まったからである。また、関税引き上げ合戦が激化したため、対米輸出拠点を中国以外へ移転する動きが広がったことも背景だ。
但し、製造業の投資には底打ちの9月は兆しがでてきている。足元の動きを見ると、4-6月期の前年比1.4%増(ニッセイ基礎研の独自推計)を直近のボトムとして、7-9月期には同1.5%増、10-12月期には同4.6%増と2四半期連続の回復となった(図表-6)。その回復を牽引しているのが「中国製造2025」の柱のひとつであるコンピュータ・通信・電子設備製造で、10-12月期には同32.2%増と極めて高い伸びを示し、19年1-3月期の同5.5%増をボトムにV字回復してきた(図表-6)。米中対立の長期化を覚悟した中国政府が、国民に「自力更生」の必要性を訴えかけるとともに、5Gへの移行を積極的に推進し始めたことが背景にある。
消費・投資と並ぶ第3の柱である輸出(ドルベース)を見ると、19年は前年比0.5%増の約2.5兆ドルとなり、18年の同9.9%増から大幅に伸びが鈍化した。足元の動きを見ると、19年に入り±0%を挟んで一進一退を繰り返していたが、12月には前年比7.0%増と持ち直した(図表-7)。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注指数を見ても12月には19ヵ月ぶりに拡張・収縮の境界(50%)を上回った。但し、今年は春節(旧正月)が1月で駆け込みが早まった可能性もあるため、上向いたか否かは1-2月期の動向を見てから判断しても遅くないだろう(図表-8)。また、米中両政府はこの1月15日に「第一段階の合意」に達したが、制裁関税の引き下げはほんの一部に限られる上、ファーウェイ問題を象徴とする覇権争いは今後も続くと見られるため、対米輸出拠点を中国以外に移す流れは、ペースはダウンしても止まらず、輸出の持ち直しは小幅に留まるだろう。
(2020年01月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
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