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- 消費者物価(全国19年11月)-低空飛行が続く消費者物価
2019年12月20日
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1.制度要因を除けば、コアCPI上昇率は鈍化傾向が続く
総務省が12月20日に公表した消費者物価指数によると、19年11月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.5%(10月:同0.4%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.5%、当社予想も0.5%)通りの結果であった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.8%(10月:同0.7%)、総合は前年比0.5%(10月:同0.2%)であった。

10月から11月にかけて押し上げ幅が拡大したのは、10月には経過措置で旧税率が適用されていた電気代、ガス代などに11月から新税率が適用されたためである。
なお、消費税率引き上げ(8%→10%)によるコアCPI上昇率への影響は1.0%ポイント程度だが、11月時点の押し上げ幅は0.9%ポイントとなっている。これは一部の品目(経過措置品目、季節調査品目)で引き続き旧税率が適用されているためである。
コアCPIの内訳をみると、灯油(10月:前年比▲4.6%→11月:同▲6.6%)は減少幅が拡大したが、ガソリン(10月:前年比▲6.7%→10月:同▲6.3%)、電気代(10月:前年比▲1.0%→11月:同▲0.2%)の下落幅が縮小し、ガス代(10月:前年比▲0.4%→11月:同0.8%)が上昇に転じたため、エネルギー価格の下落率は10月の前年比▲2.7%から同▲2.1%へと縮小した。ただし、電気代、ガス代は11月から10%の消費税率が適用されるようになっており、この影響を除くとエネルギー価格の下落率は若干拡大している。

一方、電子レンジ、電気冷蔵庫、電気洗濯機などの家庭用耐久財は10月の前年比6.4%から同5.4%へと伸びが鈍化した。消費税率引き上げ後の売上げの落ち込みが価格低下につながっている可能性がある。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.33%(10月:▲0.27%)、食料(生鮮食品を除く)が0.32%(10月:0.29%)、その他が0.20%(10月:0.18%)であった(当研究所試算による消費税、幼児教育無償化の影響を除くベース)。
2.コアCPI上昇率は当面ゼロ%台半ばの推移が続く見込み
コアCPI上昇率は19年10、11月と上昇率が拡大したが、制度要因(消費税率引き上げ+幼児教育無償化)を除いた上昇率は19年4月の前年比0.9%をピークに11月には同0.2%まで鈍化している。
原材料費、物流費、人件費などのコスト増を背景とした食料(生鮮食品を除く)の上昇率は高止まりしており、これまでコアCPI上昇率を押し下げてきたエネルギー価格も12月以降は下落幅が若干縮小することが見込まれる。一方、消費税率引き上げ後の個人消費の低迷によって需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。消費税率引き上げと幼児教育無償化の影響を含めたコアCPI上昇率は当面ゼロ%台半ばで推移することが予想される。
原材料費、物流費、人件費などのコスト増を背景とした食料(生鮮食品を除く)の上昇率は高止まりしており、これまでコアCPI上昇率を押し下げてきたエネルギー価格も12月以降は下落幅が若干縮小することが見込まれる。一方、消費税率引き上げ後の個人消費の低迷によって需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。消費税率引き上げと幼児教育無償化の影響を含めたコアCPI上昇率は当面ゼロ%台半ばで推移することが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年12月20日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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