- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 消費者物価(全国19年8月)-コアCPI上昇率は約2年ぶりの低水準。消費税率引き上げ後も1%を下回る見込み
2019年09月20日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント縮小
総務省が9月20日に公表した消費者物価指数によると、19年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.5%(7月:同0.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.5%、当社予想も0.5%)通りの結果であった。コアCPI上昇率は19年4月の前年比0.9%をピークに鈍化傾向が続き、17年7月(同0.5%)以来の低い水準となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.6%(7月:同0.6%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品の下落率が7月の前年比▲0.7%から同▲4.9%へと拡大したため、総合は前年比0.3%(7月:同0.5%)とコアCPIの伸びを下回った。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(7月:前年比▲4.3%→8月:同▲4.8%)、灯油(7月:前年比▲1.1%→8月:同▲1.3%)の下落幅が拡大し、電気代(7月:前年比2.7%→8月:同1.8%)、ガス代(7月:前年比3.0%→8月:同1.8%)の上昇幅が縮小したことから、エネルギー価格が前年比▲0.3%(7月:同0.6%)と2年7ヵ月ぶりの下落となった。
2.上昇品目数の割合は高水準を維持
消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は298品目(7月は302品目)、下落品目数は164品目(7月は164品目)となり、上昇品目数が前月から若干減少した。上昇品目数の割合は57.0%(7月は57.7%)、下落品目数の割合は31.4%(7月は31.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は25.6%(7月は26.4%)であった。コアCPI上昇率が鈍化傾向を続ける中でも、現時点では、上昇品目数は高水準を維持している。ただし、消費税率引き上げ後には消費の低迷が見込まれるため、値下げの動きが広がる可能性がある。
3.コアCPI上昇率は消費税率引き上げ後も1%を下回る見込み
コアCPIを押し上げてきたエネルギー価格の上昇率は、2年7ヵ月ぶりのマイナスとなった。原油価格(ドバイ)は、サウジアラビアの石油施設への攻撃を受け、一時1バレル=50ドル台後半から60ドル台後半へと急上昇したが、その後、9月末までに産油量が攻撃前の水準まで戻るとの見通しが示されたことなどから60ドル台前半まで下落している。エネルギー価格の下落幅は年末にかけて拡大する公算が大きい。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。9月のコアCPI上昇率は0.3%程度まで鈍化する可能性が高い。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。9月のコアCPI上昇率は0.3%程度まで鈍化する可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年09月20日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/10/30 | 潜在成長率は変えられる-日本経済の本当の可能性 | 斎藤 太郎 | 基礎研レポート |
| 2025/10/24 | 消費者物価(全国25年9月)-コアCPI上昇率は拡大したが、先行きは鈍化へ | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/22 | 貿易統計25年9月-米国向け自動車輸出が数量ベースで一段と落ち込む。7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.4%程度のマイナスに | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/03 | 雇用関連統計25年8月-失業率、有効求人倍率ともに悪化 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年10月30日
潜在成長率は変えられる-日本経済の本当の可能性 -
2025年10月30日
米FOMC(25年10月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。バランスシート縮小を12月1日で終了することも決定 -
2025年10月30日
試練の5年に踏み出す中国(後編)-「第15次五カ年計画」建議にみる、中国のこれからの針路 -
2025年10月30日
米国で進む中間期の選挙区割り変更-26年の中間選挙を見据え、与野党の攻防が激化 -
2025年10月29日
生活習慣病リスクを高める飲酒の現状と改善に向けた対策~男女の飲酒習慣の違いに着目して
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【消費者物価(全国19年8月)-コアCPI上昇率は約2年ぶりの低水準。消費税率引き上げ後も1%を下回る見込み】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
消費者物価(全国19年8月)-コアCPI上昇率は約2年ぶりの低水準。消費税率引き上げ後も1%を下回る見込みのレポート Topへ












