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中国経済の見通し-7月の景気インデックスは5.99%へ低下、中国経済はこのまま失速するのか?

三尾 幸吉郎
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1.中国経済の概況
中国経済は昨年、「債務圧縮(デレバレッジ)」による景気下押し圧力と、それに追い討ちをかけた「米中対立」を背景に減速し始めた。中国政府がデレバレッジに舵を切ったのは、17年の党大会後に開催された中央経済工作会議でのことで、20年までの中期的な目標とされている。非金融企業が抱える債務残高はGDP比約150%とG20諸国で最大、このまま放置すれば大きな禍根を残すと考えたからだ。債務が拡大した発端はリーマンショック後の4兆元の景気対策だが、15年に株価が急落した時(チャイナショック)の景気対策でも債務が上乗せされた。そして、デレバレッジを推進した18年、インフラ投資は急減速することなった。また、「米中対立」は、中国経済の将来を担う「中国製造2025」関連産業で先行き不透明感を高め、中国株は大きく下落して16年1月の安値を割り込み、消費者マインドを冷やして自動車販売は前年割れに落ち込んだ。さらに、「産業のコメ」と言われる集積回路(IC)にも悪影響を及ぼし、データセンター建設ラッシュは沈静化、中国における仮想通貨バブル崩壊によるマイニング需要の落ち込みや次世代通信規格(5G)への移行期に差し掛かったスマホの買い控えも重なり、ITサイクルはピークアウトした(図表-2)。
そこで、中国共産党・政府は18年12月に開催された中央経済工作会議で「反循環調節(景気減速の押し戻し政策)」と呼ばれる景気対策に舵を切り、「地方債券の発行規模を大幅に増やす」とするとともに、金融政策を「穏健中立」から「穏健」に切り替え、デレバレッジの方針を微調整し、金融(預金や融資)の伸びをGDP名目成長率につり合う伸びに設定した。これを受けて、社会融資総量(企業や個人の資金調達総額)は緩やかに伸びを高め、製造業や建築業・不動産業の減速にも歯止めが掛かったため、19年第1四半期(1-3月期)の成長率は横ばい(前年比6.4%増)に留まった。しかし、「デレバレッジ」による景気下押し圧力は減じたものの、「米中対立」による景気下押し圧力は残ったため、第2四半期の成長率は前年比6.2%増へ再び減速することとなった。特に、輸出や製造業の投資への悪影響が鮮明化している。
一方、19年1-7月期の消費者物価は前年比2.3%上昇で、今年度の抑制目標である「3%前後」を下回っている。また、食品・エネルギーを除くコア部分は同1.7%上昇に留まっており、家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」の蔓延で、豚肉価格が同10.3%上昇した以外は概ね安定している。
2.消費の動向
今後の個人消費を考えると、消費者信頼感指数が高水準を維持しているため、個人消費が失速する恐れは今のところ小さいと見ている(図表-4)。また、個人消費への影響が大きい雇用情勢も概ね良好な状態が維持されており、都市部の登録失業率は低下してきている。但し、4-6月期の都市部求人倍率は1.22倍に低下、農民工が含まれる都市部の調査失業率も5%台に上昇してきており、農村部からの出稼ぎ労働者に余剰感がでてきた可能性がある(図表-5)。今後さらに米中対立の影響が広がり、雇用情勢がもう一段悪化するようだと、個人消費の足かせとなる恐れもあるだけに注視する必要がある。
3.投資の動向
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
(2019年08月23日「Weekly エコノミスト・レター」)
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