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- 2019・2020年度経済見通し(19年8月)
2019年08月13日
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1. 2019年4-6月期は前期比年率1.8%と3四半期連続のプラス成長
2019年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.4%(前期比年率1.8%)と3四半期連続のプラス成長となった。
海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みを背景に輸出が前期比▲0.1%と低迷を続ける中、輸入が同1.6%と増加したことから外需寄与度が▲0.3%(年率▲1.2%)と成長率を押し下げた。
一方、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同1.5%)を中心に民間需要が好調だったことに加え、政府消費(前期比0.9%)、公的固定資本形成(同1.0%)も堅調な動きとなったことから、国内需要が前期比0.7%(年率3.0%)の高い伸びとなった。
外需のマイナスを国内需要のプラスが大きく上回ったことにより日本経済は3四半期連続で1%程度とされる潜在成長率を上回る高成長となった。実質GDP成長率は2019年1-3月期の前期比年率2.8%から4-6月期は同1.8%へと減速したが、1-3月期は輸入の大幅減少による外需の押し上げが高成長の主因だったのに対し、4-6月期は国内需要の柱である民間消費、設備投資を中心とした国内需要の高い伸びが外需のマイナスをカバーしており、1-3月期よりも成長の中身は良い。
海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みを背景に輸出が前期比▲0.1%と低迷を続ける中、輸入が同1.6%と増加したことから外需寄与度が▲0.3%(年率▲1.2%)と成長率を押し下げた。
一方、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同1.5%)を中心に民間需要が好調だったことに加え、政府消費(前期比0.9%)、公的固定資本形成(同1.0%)も堅調な動きとなったことから、国内需要が前期比0.7%(年率3.0%)の高い伸びとなった。
外需のマイナスを国内需要のプラスが大きく上回ったことにより日本経済は3四半期連続で1%程度とされる潜在成長率を上回る高成長となった。実質GDP成長率は2019年1-3月期の前期比年率2.8%から4-6月期は同1.8%へと減速したが、1-3月期は輸入の大幅減少による外需の押し上げが高成長の主因だったのに対し、4-6月期は国内需要の柱である民間消費、設備投資を中心とした国内需要の高い伸びが外需のマイナスをカバーしており、1-3月期よりも成長の中身は良い。
(消費税率引き上げの影響)
2019年10月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)まで2ヵ月を切った。消費税率引き上げによる経済への影響は、(1)物価上昇による実質所得の減少が個人消費を中心とした国内需要を下押しする効果、(2)税率引き上げ前の駆け込み需要と税率引き上げ後の反動減、に分けて考えられる。
当研究所のマクロモデルによるシミュレーションでは、消費税率を1%引き上げた場合、物価上昇による実質所得低下の影響で、実質GDPは1年間で▲0.24%、実質民間消費は1年間で▲0.37%低下する。当研究所では、前回(2014年4月)の消費税率引き上げ前の駆け込み需要は4.0兆円(個人消費3.0兆円、住宅投資1.0兆円)、GDP比で0.8%程度だったと推計している。
今回は、前回(2014年4月:5%→8%)よりも税率の引き上げ幅が小さいこと、飲食料品(酒類と外食を除く)及び新聞に対する軽減税率、教育無償化、年金生活者支援給付金、キャッシュレス決済時のポイント還元、プレミアム商品券などの増税対策が講じられることから、景気への悪影響は前回よりも小さくなる公算が大きい。

軽減税率、教育無償化、キャッシュレス決済時のポイント還元などの消費増税対策を含めた消費税率引き上げによる実質GDPの押し下げ幅は▲0.2%程度、実質民間消費の押し下げ幅は▲0.4%程度と試算される。2019年度下期からの引き上げとなるため、2019年度の影響はこの半分となる。実質GDP成長率への影響は2019、2020年度ともに▲0.1%程度、実質民間消費(前年比)への影響は2019、2020年度ともに▲0.2%程度である。
(増税前の駆け込み需要は限定的か)
駆け込み需要とその反動の規模も前回増税時を大きく下回るだろう。もともと、2019年10月の消費税率引き上げによる影響は、前回(2014年4月)よりも税率の引き上げ幅が小さいこと、軽減税率の導入が予定されていたことから、実質的な引き上げ幅は前回の約半分であり、政府の追加的な施策がなくても消費増税による影響は前回よりも小さくなることが見込まれていた。また、住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については前回の引き上げ時に前倒しで購入されている割合が高く、潜在的な需要が少なくなっていることも駆け込み需要の抑制要因と考えられる。
駆け込み需要が早めに顕在化する耐久消費財、住宅着工戸数の動きを確認すると、耐久消費財については一部に駆け込み需要とみられる動きがあるが、前回増税時に比べれば盛り上がりは限定的となっている。また、住宅着工戸数は持家で駆け込み需要がみられるものの、貸家が低迷していることから全体では一進一退の動きにとどまっている。住宅は引き渡しが2019年10月以降でも現行の8%の消費税率が適用される契約期限が2019年3月末となっている。増税前の駆け込み需要はほぼ出尽くした可能性が高く、その規模は限定的にとどまった模様だ。
駆け込み需要とその反動の規模も前回増税時を大きく下回るだろう。もともと、2019年10月の消費税率引き上げによる影響は、前回(2014年4月)よりも税率の引き上げ幅が小さいこと、軽減税率の導入が予定されていたことから、実質的な引き上げ幅は前回の約半分であり、政府の追加的な施策がなくても消費増税による影響は前回よりも小さくなることが見込まれていた。また、住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については前回の引き上げ時に前倒しで購入されている割合が高く、潜在的な需要が少なくなっていることも駆け込み需要の抑制要因と考えられる。
駆け込み需要が早めに顕在化する耐久消費財、住宅着工戸数の動きを確認すると、耐久消費財については一部に駆け込み需要とみられる動きがあるが、前回増税時に比べれば盛り上がりは限定的となっている。また、住宅着工戸数は持家で駆け込み需要がみられるものの、貸家が低迷していることから全体では一進一退の動きにとどまっている。住宅は引き渡しが2019年10月以降でも現行の8%の消費税率が適用される契約期限が2019年3月末となっている。増税前の駆け込み需要はほぼ出尽くした可能性が高く、その規模は限定的にとどまった模様だ。
(国内需要は底堅さを維持するが、前回増税前よりは弱め)
このように、消費増税自体の影響は前回よりも小さくなる公算が大きいが、消費増税後の景気悪化が回避できるとは限らない。景気の実勢が前回増税前よりも弱いと考えられるためである。
輸出、生産が低迷する一方、消費、設備などの国内需要は底堅さを維持している。ただし、その勢いは前回の増税前に比べると弱く、特に民間消費は2019年4-6月期には一部で駆け込み需要が発生したこともあり前期比0.6%と高めの伸びとなったが、それまでほぼ横ばいの動きにとどまっていた。民間消費については、消費増税前は駆け込み需要によって押し上げられるため基調が読み取りにくくなるが、駆け込み需要が本格化する前の段階で比較しても今回の消費の基調は明らかに弱い。消費税率引き上げ3年前から半年前までの民間消費の伸び率は前回増税前が年平均2.5%だったのに対し、今回は年平均0.8%にとどまっている。
このように、消費増税自体の影響は前回よりも小さくなる公算が大きいが、消費増税後の景気悪化が回避できるとは限らない。景気の実勢が前回増税前よりも弱いと考えられるためである。
輸出、生産が低迷する一方、消費、設備などの国内需要は底堅さを維持している。ただし、その勢いは前回の増税前に比べると弱く、特に民間消費は2019年4-6月期には一部で駆け込み需要が発生したこともあり前期比0.6%と高めの伸びとなったが、それまでほぼ横ばいの動きにとどまっていた。民間消費については、消費増税前は駆け込み需要によって押し上げられるため基調が読み取りにくくなるが、駆け込み需要が本格化する前の段階で比較しても今回の消費の基調は明らかに弱い。消費税率引き上げ3年前から半年前までの民間消費の伸び率は前回増税前が年平均2.5%だったのに対し、今回は年平均0.8%にとどまっている。
(2019年08月13日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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