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平成の労働市場を振り返る-働き方はどのように変わったのか
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
雇用の非正規化は、労働市場全体の雇用を不安定化させる可能性がある。一般的に、非正規雇用は正規雇用に比べて契約期間が短い。たとえば、厚生労働省の「派遣労働者実態調査(2017年)」によれば、派遣労働者の契約期間は3ヵ月以下が全体の5割以上、1年以下が9割以上を占めている。また、厚生労働省の「パートタイム労働者総合実態調査(2016年)」によれば、パートタイム労働者の67.5%が「雇用期間の定めがある」となっている。雇用期間の定めがあるパートタイム労働者の中では、雇用契約期間「12ヵ月」が42.3%と最も多く、それに続くのが「6ヵ月」の29.3%となっている(図表23)。パートタイム労働者の平均雇用契約期間は9.6ヵ月である。
正規雇用の失業化率、非労働力化率はともに低水準で安定している。正規雇用の失業化率は、リーマン・ショック後の2009年には一時3%まで上昇する局面もあったが、近年は概ね1%程度で推移している。また、正規雇用の非労働力化率は概ね1%台の低水準で推移しており、足もとでは1%を割り込む水準となっている。
パートタイム労働者の場合には、離職した後に職探しをせずに非労働力化する者が多いのに対し、派遣社員の場合には契約期間が終了した場合でも派遣会社に登録を続け、次の派遣先を待つケース(求職活動をしているため失業者となる)が多いことが推測される。このことが派遣社員の失業化率が高い理由のひとつだろう。いずれにしても、パートタイム労働者、派遣社員などの非正規雇用は、失業化率、非労働力化率が高く、正規雇用に比べて安定性に欠ける雇用形態とみることができる。
4――潜在的な労働力の活用が重要
生産年齢人口が1995年をピークに20年以上にわたって減少する中でも、平成の終わりにかけて就業者数が増加を続けたのは、景気回復の長期化によって雇用情勢が大きく改善したことに加え、それまで就業を希望しているにもかかわらず様々な理由で求職活動を行わないために非労働力化していた者(以下、潜在労働力人口)の多くが労働市場に参入するようになったためである。
潜在労働力の希望している仕事を雇用形態別にみると、男女ともに非正規が正規を大きく上回っており、女性は雇われてする仕事の8割以上が非正規となっている(図表28)。今後新たに労働市場に参入する者の多くが非正規となることが想定される。日本では、非正規労働者と正規労働者の待遇格差の大きさが指摘されることが多いが、雇用の非正規化がさらに進む中では、同一労働同一賃金を徹底することの重要性はより高いものとなるだろう。
また、現在は労働市場が非常に良好な状態にあるが、雇用の安定性に欠ける非正規雇用の割合が高まる中で景気が悪化した場合には、従来よりも速いペースで雇用調整が進む可能性がある。雇用情勢の悪化に備えて雇用保険の拡充など非正規労働者に対するセーフティーネットを強化しておく必要がある。政府は非正規労働者の雇用保険の適用範囲の拡大を段階的に行っているが、非正規化の進展に合わせて一段の要件緩和も検討に値するだろう。
さらなる増加が予想される女性、高齢者、非正規雇用は相対的に労働時間が短い傾向がある。政府が推進する働き方改革の影響もあり、労働時間の減少ペースは今後加速することが見込まれる。こうした中で日本経済全体の付加価値を高めるためには、一人当たりの生産性を向上させることがこれまで以上に重要となることは言うまでもない。
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
(2019年07月22日「ニッセイ基礎研所報」)
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