2018年04月20日

消費者物価(全国18年3月)-コアCPI上昇率は再び1%割れ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は再び1%割れ

消費者物価指数の推移 総務省が4月20日に公表した消費者物価指数によると、18年3月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.9%(2月:同1.0%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.9%、当社予想も0.9%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.5%(2月:同0.5%)と上昇率は前月と変わらず、総合は前年比1.1%(2月:同1.5%)と上昇率が前月から0.4ポイント縮小した。総合指数は1、2月とコアCPIの伸びを大きく上回っていたが、3月は生鮮食品の上昇率が2月の前年比12.4%から同6.3%へと鈍化したため、コアCPIとの差が縮まった。4月に入り生鮮食品の価格はさらに低下しているため、両者の差はほぼなくなるだろう。
コアCPIの内訳をみると、灯油(2月:前年比12.8%→3月:同13.3%)の上昇幅は拡大したが、電気代(2月:前年比5.8%→3月:同5.2%)、ガス代(2月:前年比3.3%→3月:同2.8%)、ガソリン(2月:前年比10.9%→3月:同7.5%)の上昇幅が縮小したため、エネルギー価格の上昇率は2月の前年比7.0%から同5.7%へと縮小した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 また、宿泊料(2月:前年比5.2%→3月:同0.4%)、外国パック旅行費(2月:前年比8.8%→3月:同5.9%)の上昇幅縮小から、教養娯楽が2月の前年比1.3%から同0.5%へと伸びが鈍化したこともコアCPIを押し下げた。

CPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.43%(2月:0.53%)、食料(生鮮食品を除く)が0.25%(2月:0.28%)、その他が0.21%(2月:0.20%)であった。

2.物価上昇品目数が減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、3月の上昇品目数279品目(2月は301品目)、下落品目数は193品目(2月は169品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は53.3%(2月は57.6%)、下落品目数の割合は36.9%(2月は32.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は16.4%(2月は25.2%)であった。

現時点では上昇品目数の割合は50%を上回っているが、円高に伴う輸入物価下落の影響が広がることを主因として減少傾向が続き、50%を割り込む可能性が高いだろう。

3.コアCPI上昇率は当面1%弱の推移が続く見込み

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 コアCPI上昇率は18年2月に3年6ヵ月ぶりに1%(消費税を除くベース)に達したが、エネルギー価格の上昇率鈍化などから3月には再び1%割れとなった。

先行きについては、外食や運送料など人手不足に起因した値上げが進むこと、原油価格上昇の影響からエネルギー価格の上昇率が再び高まることが物価を押し上げる一方、年明け以降の円高による下押し圧力が徐々に高まることが見込まれる。また、4月の年度替わりの値上げの影響も限定的にとどまりそうだ。コアCPI上昇率は当面1%弱の推移が続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年04月20日「経済・金融フラッシュ」)

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