2018年04月18日

貿易統計18年3月-アジア向け、IT関連輸出が弱い動き、1-3月期の外需寄与度はほぼゼロに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易収支(季節調整値)が黒字に転換

財務省が4月18日に公表した貿易統計によると、18年3月の貿易収支は7,973億円と2ヵ月連続の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:3,821億円、当社予想は7,941億円)を上回る結果となった。輸出は前年比2.1%(2月:同1.8%)と前月と同程度の伸びだったが、輸入が前年比▲0.6%(2月:同16.6%)と1年3ヵ月ぶりに減少したため、貿易収支は前年に比べ1,939億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比1.8%(2月:同▲2.1%)、輸出価格が前年比0.3%(2月:同4.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲4.5%(2月:同11.7%)、輸入価格が前年比4.1%(2月:同4.4%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は1,192億円(2月は▲2,122億円)と2ヵ月ぶりの黒字となった。輸出入ともに減少したが、輸入の減少幅(前月比▲6.9%)が輸出の減少幅(同▲2.2%)を上回ったことが貿易収支の改善に寄与した。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 貿易収支(季節調整値)は中華圏の春節の影響で赤字となった2月から黒字に転換したが、その水準は低い。3月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=66.8ドル(当研究所による試算値)と、2月の68.4ドルから低下したが、足もとのドバイ原油価格はシリア情勢の緊迫化などから60ドル台後半まで上昇している。通関ベースの原油価格は4月まで低下した後、5月以降は70ドル程度まで上昇するだろう。先行きの貿易収支(季節調整値)は黒字幅が縮小することが見込まれ、再び赤字に転落する可能性もあるだろう。

2.アジア向け、IT関連輸出が弱い動き

3月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比3.4%(2月:同5.1%)、EU向けが前年比▲7.5%(2月:同▲0.9%)、アジア向けが前年比2.5%(2月:同▲8.5%)となった。

1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲0.2%(10-12月期:同▲2.0%)、EU向けが前期比0.2%(10-12月期:同0.0%)、アジア向けが前期比▲2.6%(10-12月期:同3.6%)、全体では前期比▲1.2%(10-12月期:同1.7%)となった。米国向け、EU向けはほぼ横ばいだったが、これまで高い伸びを続けてきたアジア向けが大きく落ち込んだ。また、輸出の牽引役となっていたIT関連は2月に春節の影響で落ち込んだ後、3月の戻りも弱く、変調の兆しも見られる。米中貿易摩擦の悪影響も懸念されることから、ここにきて輸出の先行き不透明感は高まっている。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移

3.1-3月期の外需寄与度はほぼゼロに

3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、18年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出入ともに前期比0%台前半の伸びとなることが見込まれる。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%(10-12月期:同▲0.0%)となることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、4/27のweeklyエコノミストレターで1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、10-12月期に続き外需がほぼ横ばいとなる中、民間消費、設備投資の増加を住宅投資の減少、民間在庫変動のマイナス寄与が打ち消し国内需要も横ばいとなることから、ほぼゼロ成長になると予想している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年04月18日「経済・金融フラッシュ」)

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