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- 【東南アジア経済】ASEANの消費者物価(3月号)~原油高を背景とする上昇傾向は継続
2017年03月24日
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シンガポールの17年2月のCPI上昇率は前年同月比0.7%増(前月:同0.6%増)と小幅に上昇した(図表5)。CPI上昇率は今年5月を底に緩やかな上昇が続いており、2月もエネルギー価格に関連する商品・サービスを中心に上昇した。
主要品目別に見ると、輸送は同4.2%増(前月:同2.8%増)と、ガソリン価格の値上げを受けて上昇した。また住宅・光熱費は同3.1%減(前月:同3.2%減)と、賃貸住宅市場が軟調で下落傾向こそ続いているものの、ガス料金の上昇を受けてマイナス幅が小幅に縮小した。一方、食品は同1.3%増(前月:同1.9%増)と、春節後の需要減によって未加工食品を中心に低下した。
MAS(シンガポール金融管理局)が公表したコアCPI上昇率(政府の政策の影響を受けやすい自動車と住宅を除く)は、昨年からごく緩やかな上昇傾向が見られるが、2月は1.2%増(前月:同1. 5%増)となり、食品価格とその他の財・サービス価格を中心に低下した。
なお、MASは2017年のインフレ率が0.5%~1.5%と、ガソリン価格や政府の統制価格の値上げを背景に2016年の▲0.5%から緩やかに上昇すると予測している。

フィリピンの17年2月のCPI上昇率は前年同月比3.3%増(前月:同2.7%増)と上昇した(図表6)。CPI上昇率は昨年から食品や燃料の価格上昇を受けて緩やかな上昇傾向が続いており、2月は卒業シーズンに伴う需要増を受けて2014年11月以来となる3%台に達した。
主要品目別に見ると、まず全体の4割を占める食品・飲料(酒類除く)は同4.1%増(前月:同3.4%増)となり、コメや魚、肉類、野菜など幅広い品目が上昇した。輸送は同2.8%増(前月:同2.4%増)と、ガソリン価格やジプニー運賃の値上げを受けて上昇した。また、昨春から上昇傾向が続いている住宅・水・電気・ガス・燃料は同2.9%増(前月:同1.8%増)と、電気・ガス料金を中心に上昇した。
食品とエネルギーの一部を除いたコアCPI上昇率は、強い消費需要を背景に緩やかな上昇傾向にあり、2月は同2.7%増(前月:同2.5%増)と小幅に上昇した。
中央銀行は3月23日に開催した金融委員会では、先行きのインフレ見通しについて17年が3.4%、18年が3.0%と予測し、17-20年の物価目標(2-4%)の範囲内で推移するとしている。なお、政策金利は、インフレ率が今後も管理可能な範囲で推移することから据え置かれた。

ベトナムの17年2月のCPI上昇率は前年同月比5.02%増(前月:同5.22%増)と、今年の旧正月の開催時期が1月に早まった影響で2月の消費需要が減退したことから小幅に低下した(図表7)。CPI上昇率は2月こそ低下したものの、基調としては上昇傾向にあり、17年に入って政府目標の4%を上回る状況が続いている。
主要品目別に見ると、まず食品は同0.50%増(前月:同2.37%増)と、需給が緩んだ豚肉や野菜を中心に低下した。また衣服・帽子・靴も同1.00%増(前月:同1.51%増)と、テト休暇後の需要後の落ち込みを受けて低下した。一方、輸送は同9.97%増(前月:同5.02%増)と、ガソリン価格の値上げを受けて一段と上昇した。また住宅・建材も同4.77%増(前月:同3.54%増)と上昇した。なお、保健・ヘルスケアはウェイトが全体の5%と大きくないものの、伸び率が同57.21%増と昨年からの段階的な医療費の引上げを受けて高止まり、また教育も同10.07%増と新学年が始まった9月から二桁増が続いている。
食料品とエネルギー、政府の価格統制品目(医療・教育)を除いたコアCPI上昇率は昨年から続いた横ばい圏で推移していたものの、2月は同1.51%増(前月:同1.88%増か)と、テト休暇後の需要後の落ち込みを受けて低下した。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年03月24日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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