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- 中国経済見通し~景気は一旦持ち直しも、成長率の鈍化傾向は続く
2016年05月27日
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1.供給面の動き

この「緩やかな減速」の内訳を見ると、第2次産業が「急ピッチな減速」だったのに対し、第3次産業は「8%前後の比較的高い伸び」を維持して、合わせて「緩やかな減速」となったことが分かる。第2次産業は、2010年の前年比12.7%増をピークに、2015年には同6.0%増そして2016年1-3月期には前年同期比5.8%増と通算7ポイント弱の「急ピッチな減速」となった。一方、第3次産業は、2012年は前年比8.0%増、2013年は同8.3%増、2014年は同7.8%増、2015年は同8.3%増、そして2016年1-3月期は前年同期比7.6%増と、2012年以降も「8%前後の比較的高い伸び」を維持している(図表-1)。その結果、GDPに占める第2次産業の比率は46.2%(2010年)から40.5%(2015年)へ低下、第3次産業は同44.2%(2010年)から50.5%(2015年)へ上昇して、2010年には第2次産業の比率が第3次産業より2ポイント大きかったが、2015年には逆転して第3次産業の比率が第2次産業より10ポイントも大きくなった。
供給面から中国経済の行方を見る上では3つのシナリオが描ける。第2次産業の「急ピッチな減速」と第3次産業の「8%前後の比較的高い伸び」が継続し「緩やかな減速」が続く(現状維持シナリオ)、第2次産業の「急ピッチな減速」が第3次産業にも波及し減速ピッチが速まる(悲観シナリオ)、第2次産業の「急ピッチな減速」に歯止めが掛かって安定成長に移行する(楽観シナリオ)の3つである。

1 第2次産業・第3次産業と製造業・非製造業の区分は一致せず、第2次産業に含まれる建築業が非製造業に位置付けられるなどの違いがある。但し、他に有効な統計指標がないため、「第2次産業≒製造業」、「第3次産業≒非製造業」と見なしてモニタリングしている。
2.需要面の動き
1|消費
2015年の消費は比較的高い伸びを維持した。個人消費の代表指標である小売売上高は前年比10.7%増と前年の同12.0%増を1.3ポイント下回ったものの、原油価格などの下落を受けて商品販売価格指数の上昇率が鈍化したことから、価格要因を除いた実質では前年比10.6%増と前年の同10.9%増からわずかな鈍化に留まった(図表-3)。内訳を見ると、自動車や化粧品などは伸びが鈍化したものの、反腐敗キャンペーンの余波で落ち込んでいた飲食は7%の伸びを回復、住宅販売の持ち直しに伴って家具類や家電類も伸びを高めた(図表-4)。
2016年に入っても比較的高い伸びを維持しているがやや伸び悩んでいる。1-4月期の小売売上高は前年同期比10.3%増と前年の伸びをわずかに下回った程度だが、原油価格などの反転を受けて商品販売価格指数が上昇し始めたため、当研究所で推定した実質では同9.7%増と前年の伸びを0.9ポイント下回った(図表-3)。内訳を見ると、自動車は2015年10月に再開された小型車減税(排気量1.6L以下)が支援となって7%の伸びを回復、家具類や化粧品も伸びを高めたものの、衣類等の伸びは鈍化傾向が続いており、家電類も2016年に入って伸びが鈍化している(図表-4)。
2015年の消費は比較的高い伸びを維持した。個人消費の代表指標である小売売上高は前年比10.7%増と前年の同12.0%増を1.3ポイント下回ったものの、原油価格などの下落を受けて商品販売価格指数の上昇率が鈍化したことから、価格要因を除いた実質では前年比10.6%増と前年の同10.9%増からわずかな鈍化に留まった(図表-3)。内訳を見ると、自動車や化粧品などは伸びが鈍化したものの、反腐敗キャンペーンの余波で落ち込んでいた飲食は7%の伸びを回復、住宅販売の持ち直しに伴って家具類や家電類も伸びを高めた(図表-4)。
2016年に入っても比較的高い伸びを維持しているがやや伸び悩んでいる。1-4月期の小売売上高は前年同期比10.3%増と前年の伸びをわずかに下回った程度だが、原油価格などの反転を受けて商品販売価格指数が上昇し始めたため、当研究所で推定した実質では同9.7%増と前年の伸びを0.9ポイント下回った(図表-3)。内訳を見ると、自動車は2015年10月に再開された小型車減税(排気量1.6L以下)が支援となって7%の伸びを回復、家具類や化粧品も伸びを高めたものの、衣類等の伸びは鈍化傾向が続いており、家電類も2016年に入って伸びが鈍化している(図表-4)。

もうひとつのマイナス材料がインフレ率の上昇である。昨年は原油価格などの下落を受けて、実質ベースでの都市部一人当たり可処分所得は前年比6.6%増と前年の同6.8%増をやや下回る程度に留まった。しかし、1-3月期の都市部一人当たり可処分所得(実質ベース)は前年同期比5.8%増と前年の前年比6.6%増を0.8ポイントも下回っている(図表-5)。
2|投資
2015年の投資は大きく減速した。投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)は前年比10.0%増と前年の同15.7%増を5.7ポイント下回った。内訳を見ると、製造業は前年比8.1%増と前年の同13.5%増から5.4ポイント低下、不動産業も同2.5%増と前年の同11.1%増から8.6ポイント低下した。一方、インフラ関連と消費サービス関連は増加率こそ鈍化したものの、それぞれ同17.1%増、同14.3%増と高い伸びを維持した。
2016年に入ると昨年大きく減速した投資は持ち直した。1-4月期の固定資産投資(除く農家の投資)は前年同期比10.5%増と前年の伸びを0.5ポイント上回った(図表-6)。内訳を見ると、製造業が前年同期比6.0%増と2.1ポイント低下し、消費サービス関連も同10.0%増と4.3ポイント低下した一方、不動産業は同8.4%増と5.9ポイント上昇し、インフラ関連も同19.8%増と2.7ポイント上昇した(図表-7)。インフラ関連が伸びを高めたのは、中国政府が景気テコ入れのために「中央予算内の投資は上半期に全て実行」する方針で臨んだことが効いたものと見られる。また、不動産業が伸びを高めたのは、住宅販売が増勢を強めるとともに、住宅価格は上昇し始め、在庫は減って新規着工が増えて、住宅サイクルが悪循環を脱したことが効いている。
2015年の投資は大きく減速した。投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)は前年比10.0%増と前年の同15.7%増を5.7ポイント下回った。内訳を見ると、製造業は前年比8.1%増と前年の同13.5%増から5.4ポイント低下、不動産業も同2.5%増と前年の同11.1%増から8.6ポイント低下した。一方、インフラ関連と消費サービス関連は増加率こそ鈍化したものの、それぞれ同17.1%増、同14.3%増と高い伸びを維持した。
2016年に入ると昨年大きく減速した投資は持ち直した。1-4月期の固定資産投資(除く農家の投資)は前年同期比10.5%増と前年の伸びを0.5ポイント上回った(図表-6)。内訳を見ると、製造業が前年同期比6.0%増と2.1ポイント低下し、消費サービス関連も同10.0%増と4.3ポイント低下した一方、不動産業は同8.4%増と5.9ポイント上昇し、インフラ関連も同19.8%増と2.7ポイント上昇した(図表-7)。インフラ関連が伸びを高めたのは、中国政府が景気テコ入れのために「中央予算内の投資は上半期に全て実行」する方針で臨んだことが効いたものと見られる。また、不動産業が伸びを高めたのは、住宅販売が増勢を強めるとともに、住宅価格は上昇し始め、在庫は減って新規着工が増えて、住宅サイクルが悪循環を脱したことが効いている。
今後の投資動向に関しては、過剰設備・過剰債務を抱える製造業には引き続き多くは期待できない。「中国製造2025」に関連する領域では積極的な投資が期待できるものの、過剰生産設備を抱える分野などでは安価で豊富な労働力を求めて後発新興国へ工場を移転する企業が増えているため、製造業全体では二桁の伸びを回復するのは難しいだろう。
不動産業の投資に関しては、住宅サイクルが悪循環を脱したことを受けて、当面は伸びが回復する局面にある。しかし、上海や深圳などの巨大都市では住宅価格の急騰でバブル懸念が高まっており、地方政府は既に不動産規制の強化に動き出していることから、2017年には再び一桁台前半(3~5%程度)へと伸びが鈍化すると見ている。
消費サービス関連に関しては、中間所得層の充実や店舗販売から電子商取引(EC)へのシフトなど潮流が大きく変化する局面にあることから、二桁の伸びを維持すると見ている。特に、中間所得層の充実が追い風となる文化・体育・娯楽や教育、ECでは物流網整備関連(農村のサービス拠点、コールドチェーン構築など)の伸びが高まると見ている。
インフラ関連に関しては、前述のとおり中国政府が予算を前倒し執行したことを受けて、当面は高い伸びを示すと見られる。しかし、今年の成長率目標(6.5%~7.0%)の達成に確信が持てる状況となれば、下半期には反動減が予想される。一方、成長率目標の達成が危ぶまれる状況となれば、追加の景気テコ入れ策を打ち出す可能性もある。中国では、大気汚染対策、水質汚染対策、土壌汚染対策、ごみ処理能力増強など環境関連の需要や、中国共産党・政府が2014年3月に発表した「新型都市化計画(2014~2020年)2」に伴う交通物流関連の需要は依然として大きい。
2 新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元(約800兆円)に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。なおこれに関連して、2016年5月11日には投資総額4.7兆元に及ぶ交通インフラ整備3ヵ年計画(2016-18年)が発表された。
不動産業の投資に関しては、住宅サイクルが悪循環を脱したことを受けて、当面は伸びが回復する局面にある。しかし、上海や深圳などの巨大都市では住宅価格の急騰でバブル懸念が高まっており、地方政府は既に不動産規制の強化に動き出していることから、2017年には再び一桁台前半(3~5%程度)へと伸びが鈍化すると見ている。
消費サービス関連に関しては、中間所得層の充実や店舗販売から電子商取引(EC)へのシフトなど潮流が大きく変化する局面にあることから、二桁の伸びを維持すると見ている。特に、中間所得層の充実が追い風となる文化・体育・娯楽や教育、ECでは物流網整備関連(農村のサービス拠点、コールドチェーン構築など)の伸びが高まると見ている。
インフラ関連に関しては、前述のとおり中国政府が予算を前倒し執行したことを受けて、当面は高い伸びを示すと見られる。しかし、今年の成長率目標(6.5%~7.0%)の達成に確信が持てる状況となれば、下半期には反動減が予想される。一方、成長率目標の達成が危ぶまれる状況となれば、追加の景気テコ入れ策を打ち出す可能性もある。中国では、大気汚染対策、水質汚染対策、土壌汚染対策、ごみ処理能力増強など環境関連の需要や、中国共産党・政府が2014年3月に発表した「新型都市化計画(2014~2020年)2」に伴う交通物流関連の需要は依然として大きい。
2 新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元(約800兆円)に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。なおこれに関連して、2016年5月11日には投資総額4.7兆元に及ぶ交通インフラ整備3ヵ年計画(2016-18年)が発表された。
(2016年05月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
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