2016年03月10日

企業物価指数(2016年2月)~原油安・円高で下落幅は拡大

岡 圭佑

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1.原油安・円高で下落幅は拡大

国内企業物価変化率の寄与度分解 3月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年2月の国内企業物価は前年比▲3.4%(1月:同▲3.2%)と事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲3.3%)を下回る結果となった。前月比では▲0.2%(1月:同▲1.0%)と前月から下落幅が縮小した。

国内企業物価注1の前月比寄与度をみると、為替・海外市況連動型(前月比▲0.2%)、素材(その他)(同▲0.1%)、鉄鋼・建材関連(同▲0.0%)、電力・都市ガス・水道(同▲0.1%)が物価下落に寄与した。為替・海外市況連動型は、石油・石炭製品や非鉄金属の下落を反映して、大幅なマイナスを続けている。素材(その他)は、アジア需給の悪化を背景とした化学製品の弱さを反映して、下落幅を拡大している。鉄鋼・建材関連も、アジア需給の悪化に伴うスクラップ類や鉄鋼の下落を主因に、マイナスを続けている。電力・都市ガス・水道は、原油価格の下落を反映した電力・都市ガスの燃料調整から下落を続けている。
 
注1  1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
   2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
   3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
   4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属 
   5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物

2.輸入物価は円高による押し下げ圧力が強まる

2月の輸入物価(円ベース)は前年比▲17.8%(1月:同▲18.2%)と大幅なマイナスが続いている。契約ベースでは前年比▲15.1%(1月:同▲17.1%)と下落幅が縮小し、円ベースでは▲17.8%(1月:同▲18.2%)と契約ベースでの下落幅を上回っている。
輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみると、石油・石炭・液化天然ガス(前年比▲11.1%)、金属・同製品(同▲2.7%)、食料品・飼料(同▲1.0%)、化学製品(同▲0.6%)、機械器具(同▲1.7%)、その他(同▲0.6%)といずれも輸入物価の押し下げに寄与した。
石油・石炭・液化天然ガスは、2015年12月以降の急激な原油安を反映して大幅なマイナスが続いている。原油価格(ドバイ、月中平均)は、2015年11月時点で1バレル=40ドル程度であったが、2016年2月には1バレル=30ドル程度まで下落している。また、金属・同製品は需要の弱さから資源価格が低迷している鉄鉱石や非鉄金属を中心に下落が続いている。
輸入物価は、国際商品市況の悪化や円安の一巡により下落圧力を高めている。輸入物価(円ベース)の変動を為替要因と需給要因に分解してみると、2014年夏場以降、原油価格の下落などを反映し需給要因が大幅なマイナス寄与となる一方で、為替要因は円安の進行もあり2013年並みのプラス寄与を維持していた。しかし、2016年に入ってからはドル円レートが前年を下回る水準まで円高が進行し、輸入物価の下落圧力を緩和していた為替要因は逆に輸入物価を押し下げる方向に作用している。
足元の原油価格(ドバイ)は1バレル=30ドル台半ばで推移し、前年比では▲47%と1月(前年比▲40%)から下落幅が拡大している。一方、為替については1ドル113円程度と前年を下回る水準まで円高が進行している。新興国の景気減速懸念が根強いことに加え、米国の景気後退懸念が意識されるなど原油価格の上昇や円高の反転が短期的に見込みにくい状況にあることから、当面輸入物価は大幅な下落を続ける可能性が高い。
 
輸入物価指数変化率の寄与度分解/輸入物価指数の変動要因
 
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
   2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品

3.最終財は下落が続く

2月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲29.5%(1月:同▲31.0%)、中間材が前年比▲6.2%(1月:同▲5.9%)、最終財が前年比▲1.4%(1月:同▲1.0%)となった。  
原油価格の下落を背景に素原材料、中間財がマイナス圏で推移しているが、下落圧力が最終財に徐々に波及している。最終財は価格転嫁の動きが強まったこともあり、2015年2月以降前年比でプラスとなっていたが、国際商品市況下落の影響から2016年に入ってから下落に転じている。2016年夏頃にかけて、前年比でみた原油価格の下落幅は緩やかに縮小することを予想しているが、一定のラグを伴って最終財が明確な上昇基調に転じるのはそれ以降となるだろう。最終財のうち、消費財は2016年夏頃にかけてゼロ近傍での推移が続くと予想するが、その後は緩やかな上昇に向かうとみている。
 
需要段階別指数/最終財と消費者物価

4.国内企業物価は前年比で大幅な下落が続く

中国の景気減速などを受けて下落基調を続けている国際商品市況や原油価格は、当面低調な推移が続くだろう。一方、為替については新興国経済の減速懸念を受けてリスク回避姿勢が高まっていることや米利上げ観測の後退などから、円安基調の再開には時間を要するとみている。円安によるコスト増を価格転嫁する動きが一巡していることや原油価格の下落圧力が依然強いことを踏まえれば、国内企業物価(前年比)は大幅な下落が続く可能性が高い。ただし、2016年中盤以降は原油価格が持ち直すことを前提として、国内企業物価(前年比)は緩やかに下落幅を縮小すると予想する。
 
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岡 圭佑

研究・専門分野

(2016年03月10日「経済・金融フラッシュ」)

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