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- 【マレーシアGDP】10-12月期は前年同期比+4.5%-消費持ち直しも、投資鈍化で4期連続の景気減速
2016年02月18日
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2015年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比4.5%増と前期の同4.7%増から低下したものの、Bloomberg調査の市場予想(同4.1%増)を上回った。
同国はアジア新興国のなかでも石油・ガス産業や中国向け輸出の経済に占めるウェイトが比較的大きい国であるだけに原油価格下落や中国経済の減速の影響を受けやすく、また4月の物品・サービス税(GST)導入も景気に追い打ちをかけている。
前期比(季節調整済)で見ると、実質GDP成長率は1.5%増(前期:同0.7%増)と4期ぶりに上昇した。また2015 年通年の成長率は前年比5.0%増と、2014 年の同6.0%増から低下した。
需要項目別に見ると、民間消費が持ち直したものの、投資の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表1)。
民間部門を見ると、まず民間消費は前年同期比4.9%増と、依然として5%を下回る低調な推移ではあるものの、安定的な雇用・所得環境やインフレ圧力の後退、1月からの自動車の値上げを前にした駆け込み需要が追い風となり、前期の同4.1%増から上昇した。消費者物価上昇率(前年同月比)は昨年2月から7月には通貨安による輸入インフレや4月のGST導入を受けて3%ほど上昇していたが、10-12月には政府系投資会社1MDBの債務問題の改善やナジブ首相の汚職疑惑問題の沈静化、9月の特別経済対策によってリンギ相場が安定したこと、また燃料価格の引下げなどによって9月以降は2%台後半で落ち着きを取り戻している(図表2)。また民間投資は前年同期比5.0%増(前期:同5.5%増)と低下した。原油価格下落を背景とする鉱業の資本支出の減少が影響したと見られる。
同国はアジア新興国のなかでも石油・ガス産業や中国向け輸出の経済に占めるウェイトが比較的大きい国であるだけに原油価格下落や中国経済の減速の影響を受けやすく、また4月の物品・サービス税(GST)導入も景気に追い打ちをかけている。
前期比(季節調整済)で見ると、実質GDP成長率は1.5%増(前期:同0.7%増)と4期ぶりに上昇した。また2015 年通年の成長率は前年比5.0%増と、2014 年の同6.0%増から低下した。
需要項目別に見ると、民間消費が持ち直したものの、投資の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表1)。
民間部門を見ると、まず民間消費は前年同期比4.9%増と、依然として5%を下回る低調な推移ではあるものの、安定的な雇用・所得環境やインフレ圧力の後退、1月からの自動車の値上げを前にした駆け込み需要が追い風となり、前期の同4.1%増から上昇した。消費者物価上昇率(前年同月比)は昨年2月から7月には通貨安による輸入インフレや4月のGST導入を受けて3%ほど上昇していたが、10-12月には政府系投資会社1MDBの債務問題の改善やナジブ首相の汚職疑惑問題の沈静化、9月の特別経済対策によってリンギ相場が安定したこと、また燃料価格の引下げなどによって9月以降は2%台後半で落ち着きを取り戻している(図表2)。また民間投資は前年同期比5.0%増(前期:同5.5%増)と低下した。原油価格下落を背景とする鉱業の資本支出の減少が影響したと見られる。
政府部門を見ると、まず政府消費は前年同期比3.3%増(前期:同3.5%増)と、物品・サービスの購入の鈍化を公務員給与の増加が支えとなって底堅く推移した。また公共投資は前年同期比0.4%増(前期:同1.8%増)と、政府の資本支出が鈍く低下した。
輸出入は、輸出が前年同期比3.7%増(前期:同3.2%増)と、リンギ安によって価格競争力が向上した電気・電子機器を中心に2期連続で上昇した(図表3)。輸入も前年同期比3.6%増(前期:同3.2%増)と上昇した。結果として、純輸出の成長への寄与度は+0.3%ポイントとなり、前期からの変化は見られなかった。
供給側を見ると、主要のサービス業と製造業は堅調を維持したものの、農業と鉱業の悪化や建設業の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表4)。
サービス業は前年同期比5.0%増となり、金融・不動産が低迷した一方、情報・通信の好調や卸売・小売、運輸・倉庫、政府サービスなどの改善などにより前期の同4.4%増から上昇した。また製造業は前年同期比5.0%増(前期:同4.8%増)と上昇した。石油・化学、ゴム・プラスチック製品が3期連続で鈍化したものの、電気・電子製品が2期連続の二桁増を記録して全体を押上げた。
一方、鉱業は前年同期比5.3%増(前期:同6.0%増)と原油・天然ガスの減産、農林水産業は前年同期比2.4%増(前期:同4.6%増)とエルニーニョ現象を背景とする食料やパーム油の減産鈍化が影響した。
建設業は前年同期比7.4%増と、引き続き土木工事(同:20.4%増)が押上げ要因となったものの、前期の同9.9%増から低下した。
政府は1月、2016年度政府予算を見直した。原油一段安や景気減速を背景とする歳入減を考慮し、財政再建路線を維持するために歳出規模を抑制した。原油価格が低迷したままでは石油・ガスの開発投資も見込めない。2016年も原油価格下落を背景とする景気の下押しは続きそうだ。また、これまではリンギ安による製造業の回復が景気を下支えしたものの、昨秋からのリンギの安定化で輸出の伸びは鈍化しつつあり、輸出と製造業の投資は鈍化する恐れもある。
輸出入は、輸出が前年同期比3.7%増(前期:同3.2%増)と、リンギ安によって価格競争力が向上した電気・電子機器を中心に2期連続で上昇した(図表3)。輸入も前年同期比3.6%増(前期:同3.2%増)と上昇した。結果として、純輸出の成長への寄与度は+0.3%ポイントとなり、前期からの変化は見られなかった。
供給側を見ると、主要のサービス業と製造業は堅調を維持したものの、農業と鉱業の悪化や建設業の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表4)。
サービス業は前年同期比5.0%増となり、金融・不動産が低迷した一方、情報・通信の好調や卸売・小売、運輸・倉庫、政府サービスなどの改善などにより前期の同4.4%増から上昇した。また製造業は前年同期比5.0%増(前期:同4.8%増)と上昇した。石油・化学、ゴム・プラスチック製品が3期連続で鈍化したものの、電気・電子製品が2期連続の二桁増を記録して全体を押上げた。
一方、鉱業は前年同期比5.3%増(前期:同6.0%増)と原油・天然ガスの減産、農林水産業は前年同期比2.4%増(前期:同4.6%増)とエルニーニョ現象を背景とする食料やパーム油の減産鈍化が影響した。
建設業は前年同期比7.4%増と、引き続き土木工事(同:20.4%増)が押上げ要因となったものの、前期の同9.9%増から低下した。
政府は1月、2016年度政府予算を見直した。原油一段安や景気減速を背景とする歳入減を考慮し、財政再建路線を維持するために歳出規模を抑制した。原油価格が低迷したままでは石油・ガスの開発投資も見込めない。2016年も原油価格下落を背景とする景気の下押しは続きそうだ。また、これまではリンギ安による製造業の回復が景気を下支えしたものの、昨秋からのリンギの安定化で輸出の伸びは鈍化しつつあり、輸出と製造業の投資は鈍化する恐れもある。
消費については、10-12月期こそ持ち直したものの、これまでの景気減速を受けて雇用の増加ペースは鈍化しているほか、12月の消費者信頼感指数は63.8ポイントと、9月の70.2ポイントから一段と低下するなど、冴えない状況は続いている。また1-3月期は前年同期がGST導入前の駆け込み需要で高めであったことから大幅に鈍化するだろう。しかし、その後は消費に好転の兆しが見えてくる。中央銀行の見通しによるとインフレ率は1-3月にピークを迎え、その後は緩やかな推移が見込まれている。これを受けて、4-6月期には中央銀行が利下げに踏み切ると予想されるほか、7月には最低賃金引き上げによる所得環境の改善も見込まれる。従って、4月以降は徐々に消費主導で景気が回復に向かう可能性があるだろう。
1 2月18日、マレーシア統計庁は2015 年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
1 2月18日、マレーシア統計庁は2015 年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
(2016年02月18日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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