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- 【マレーシア4-6月期GDP】前年同期比+4.9%-駆け込み消費の反動で減速
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実質GDP成長率は前年同期比+4.9%と前期の同+5.6%から低下したが、Bloomberg調査の市場予想の同+4.5%を上回った。前期比(季節調整済)で見ると+1.1%と前期の同+1.2%から低下した。
4-6月期の成長率は輸出不振に加えてGST導入前の駆け込み需要の反動で消費が鈍化し、4%台半ばの低成長を記録した。今後は駆け込み需要の反動が小さくなり、内需主導で景気は上向くだろうが、輸出不振による内需への波及や資源価格低迷の影響を受けて力強さの乏しい展開が続きそうだ。
個人消費は、GST導入による影響として駆け込み需要の反動のほか、企業の価格転嫁に伴う物価上昇が家計の実質所得の減少に繋がったことが重石となった。実際、4-6月期の消費者物価指数は前年同期比+2.2%と前期から1.5%上昇し、4-6月期の流通業売上高は前年同期比+5.0%と小売や自動車販売を中心に前期から2.5%低下している。今後は駆け込み需要の反動による下押し圧力は弱まるだろうが、5-6月の製造業の従業員数が前年同月比でマイナスに転じるなど、これまで底堅い消費を支えてきた良好な雇用・所得環境には陰りが見える。
投資は、設備投資の減少と建設投資の鈍化を受けてゼロ成長となった。電気・電子機器や石油・化学製品などの輸出型製造業は、リンギ安で輸出競争力が向上しているものの、海外経済の弱含みの悪影響が大きく、投資意欲は高まっていないものと見られる。また資源価格の低迷は長期化する可能性が高まっており、業績の回復が遅れる石油関連企業では投資を見送るケースが増えそうだ。
足元ではリンギ相場の下落が著しい。金融市場では、景気の先行き不透明感や資源価格下落による貿易収支・財政収支の悪化、政府系投資会社1MDBの資金を巡る政治不安などを材料にリンギ売りが強まり、アジア通貨危機時に移行した固定相場制の水準(1ドル=3.8リンギ)を割り込んでいる。中央銀行は市場介入で下支えするが、取り崩される外貨準備は短期対外債務比で安全とされる1倍に迫りつつあり、中央銀行は別の通貨防衛策を打ち出す必要に迫られている。仮に利上げや資本取引規制を若干強化したとしても1MDBの問題が燻るなかではリンギ安に歯止めは掛からないだろう。中央銀行はストレステストの結果として金融部門を健全とみなすが、金融市場の不安定化は実体経済の疲弊に繋がるため、リンギ相場は注意深く見ていく必要があるだろう。
(2015年08月13日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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