- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 【6月米雇用統計】悪くはないものの、9月の政策金利引上げを確信させるには程遠い内容
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
【要旨】
1.結果の概要:失業率は低下したものの、労働参加率も低下
7月2日、米国労働省(BLS)は6月の雇用統計を公表した。6月の非農業部門雇用者数は前月対比で+22.3万人の増加1(前月改定値:+25.4万人)となり、前月から伸びが鈍化、市場予想の+23.3万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った。
失業率は5.3%(前月:5.5%、市場予想:5.4%)と、こちらは前月から低下、市場予想も下回った。一方、労働参加率2は62.6%(前月:62.9%)と前月から0.3%ポイント低下した(詳細はPDFファイルを参照)。
2.結果の評価:FRBに9月の利上げを確信させるには程遠い内容
6月の雇用統計は、労働市場の「量」、「質」ともに改善を示した5月に比べ、強弱入り混じる内容となった。
6月の雇用増は、若干市場予想を下回ったものの、20万人超のペースを維持した。この結果、4-6月期の平均月間雇用増は、22.1万人と14年平均の26.0万人には及ばないものの、1-3月期の19.5万人は上回り、雇用者数のモメンタム改善を確認した。
一方、失業率は08年4月以来となる5.3%に低下し、6月に示されたFOMC参加者の15年見通し(5.2~5.3%)の上限に到達した。しかし、6月の失業率改善は、主に職探しを諦めて労働市場から退出する人が増加(労働力人口が減少)した結果を反映したものであり、数字が示すほど評価できる内容でなない。実際、生産年齢人口に対する労働力人口の割合を示す労働参加率は、14年4月から続いていた62.7~62.9%のレンジを下抜けし、実に77年10月以来となる62.6%に低下した。
さらに、時間当たり賃金は、24.96ドル(前月:24.96ドル)と、前月比横這い(前月:+0.3%)となったほか、前年同月比でも+2.0%(前月:+2.3%)となるなど、いずれも前月から伸びが鈍化した。5月が力強い伸びとなり、賃金上昇率は漸く明確な上昇基調に入ったと期待されたが、その確認には暫く時間がかかりそうだ。
このようにみると、6月の雇用統計は雇用者数の伸びは良かったものの、労働参加率や賃金上昇率については、期待外れであったことが分かる。6月のFOMC会合後に行われた記者会見でイエレン議長は、労働市場が全般的に改善基調にあるとした上で、労働参加率や賃金上昇率については、改善が十分ではなく更なる改善余地があることを示していた。6月の数値は、同議長が不十分だと評価した時点から、更に悪化したことになる。
FRBは政策金利引上げの条件として、「更なる労働市場の改善」を挙げているが、6月の雇用統計はその条件を満たしておらず、FRBが9月の利上げに確信を強めるには程遠い内容であった。9月のFOMCまでに発表される7、8月の雇用統計で「更なる労働市場の改善」が確認できるか注目が高まった。
(2015年07月03日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1824
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【【6月米雇用統計】悪くはないものの、9月の政策金利引上げを確信させるには程遠い内容】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【6月米雇用統計】悪くはないものの、9月の政策金利引上げを確信させるには程遠い内容のレポート Topへ