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新しい金融商品に対する敵意と警戒心 - 関西人の描かれ方との共通点

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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関西育ちの僻みかもしれないが、関西人は他の地域出身者に比べてドラマやアニメで悪者扱いされることが多かったように思う。大人になった今でこそ、そこに他意は無く、キャラクター設定しやすい程度の理由だろうと思えるが、子供のころはそうはいかない。「いなかっぺ大将」で意地悪なキャラクターの西一1だけが関西弁を話すことに対する、悲しいような、悔しいような複雑な感情を今でも覚えている2。
数年前の話になるが、ふとしたきっかけで「名探偵コナン」を見た。そこにも関西弁を話すキャラクターが登場していたのだが、意地悪な役どころではなく、また容姿も他のキャラクターと遜色ないことに驚いた。意識してドラマやアニメを見てみると、最近はお調子者な役回りとして関西人が描かれることが多い一方、悪者扱いされることは減ってきた気もする。東海道新幹線が開通して間もない頃と比べると、地域間の交流が相当深まったに違いない。よく知らない者と出会った時の反応として、敵意を持つ第1フェーズから始まり、理解が深まるにつれて、敵意は消え、相違点をありのまま受け入れられる第2フェーズへと移るということかと、勝手に納得していた。
しかし最近になって、この考えも少し間違っているのではないかと思い始めている。日本舞踊の演目で「夕月船頭」という演目があるのだが、関西育ちには気になって仕方がない点がある。歌詞を聴く限り、登場人物は淀川の船頭である。にもかかわらず、江戸前気質でいなせな船頭として演じられる点だ。先の考えに従えば、登場人物は意地悪な人物又は、がめつい人物など悪者扱いされていそうだが決してそうではない。関西人である船頭に対する敵意は微塵も感じられない。
つまり、よく知らない者に対する反応として、第1フェーズの前には、警戒心が多少あろうとも、敵意は持たないフェーズ「第0フェーズ」があるのではないか。そして、第0フェーズでは、まだ互いの相違点に気付いていないため、よく知らない者を既知の者と同じように扱う。理解が進む上で、ある時互いの相違点に気付き、第1フェーズに移るということか。
似たような例として証券化商品がある。日本では1990年代に登場し2000年代中盤にかけて急拡大した。ご存知の通り、サブプライム問題を発端とする金融危機時には諸悪の根源とばかりに扱われた。その後、発行数・発行金額ともに急激に縮小し、未だ低い水準で推移している。先の例になぞらえれば、登場当初の警戒感が程なく薄れ、従来の金融商品と同様に評価されていた2000年代前半までが第0フェーズ、それ以降が第1フェーズといったところだろうか。発行数・発行金額が低水準で止まっているとは言え、引き続き発行されているのだから、早晩第2フェーズに移行することに期待したい。
さて、この手の話になると、「新しい金融商品へ投資するにあたり従来の金融商品との相違を慎重に考慮すべきであった」といった意見が出る。証券化商品が登場した当時から「新しい金融商品は、リスク・リターン特性などについて慎重な検討を行った上で、当面は資産全体に影響を及ぼさないよう投資額を少額にとどめるべきである」という考えは定着していたはずだ。先の意見は慎重な検討をしなかったことに対する批判ということになろう。しかし、証券化商品という未知のものと出合った時も、関西人の例と同じように第0フェーズは避けられないとは考えられないだろうか。つまり、それを評価する手段は既知の情報に限られるのだから、どれほど慎重に検討しようとやはり限界があるのではないか。このように考えると、「新しい金融商品へ投資するにあたり従来の金融商品との相違を慎重に考慮すべきである」などは、正論ではあるが今後の教訓にならないことになる。
投資の世界にも未知のものを理解する過程に第0フェーズがあるのなら、「投資額を少額に抑えるべき当面とは、警戒心が解けるまでの期間ではなく、新しい金融商品特有の問題が顕在化するまでの期間である」ということだろうか。新しい金融商品特有の問題が顕在化するのにどれくらい時間がかかるか分からないだけでなく、特有な問題などそもそも存在しないかもしれない。新しい金融商品に投資するには相当な覚悟と根気が必要ということか。
(2013年06月20日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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