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コラム
2002年09月20日
1.「いつ起るか」それが問題だ 「長期的には我々は皆死んでいる」というのは、大経済学者ケインズの有名なセリフだ。このおかげでエコノミストは大迷惑である。マクロ経済分析の視点から金融市場を見ると、不均衡があれば「いつかは」それが解消されて均衡を取り戻す変化が起きるはずだ、ということは言える。しかしそれが「いつか」を言い当てることは難しい。エコノミストの分析を聞いても株や為替で資産の運用を行っている方々からすれば、「いつそれが起きるのか」を予測してくれなくては、「長期的には我々は皆市場からいなくなっている」というところだろう。 1980年代前半のレーガノミクスの下で米国が高金利を続けドル高が続いた際に、米国の経常収支赤字は拡大し、多くのエコノミストがこのような状態は続かずいつかはドルが下落すると予想した。しかしそれが現実のものになるまでには数年を要したのである。株のバブルも同じ面がある、「このような株価の上昇は異常だ」と一部のエコノミストが騒ぎ出してから、実際にバブルが崩壊して株価が下落するまでに時間がかかった。 この間、「いつかはドルが下落する」「いつかは株価が下落する」というエコノミストの予測ははずれ続けることになる。バブルで株価が上昇する間に、株価の下落を予想した弱気の資金運用者は成績不良で市場から駆逐され、いつしか強気の運用者だけが生き残ったことに見られるように、逆風の中でエコノミストが生き残ることもまた困難である。 2.それでもいつかは必ず起る さて米国の経常収支赤字はITバブル崩壊後も未だに拡大を続け、4-6月期には名目GDP比が5%にも達した。このような状態がいつまでも続くはずはなく、いつかはドルの下落か米国経済の減速によって、米国の輸入が減少し経常収支の赤字は縮小するはずだ。しかし、現実の為替市場ではドルはさして下落することもなく、米国では自動車販売が堅調で米国経済はなかなか減速する気配を見せない。 「ケインジアン政策」が財政赤字累積の原因だということで、ケインズの威光もかなり衰えたので、「長期的には我々は皆死んでいる」という皮肉も以前に比べれば痛烈ではなくなった。とはいうものの、逆風の中でいずれは真実が明らかになると耐えるのはなかなか我慢が必要だ。ガリレオは地動説の放棄を迫られて、「それでも地球は動いている」と言った。「当面」ドルも米国経済も堅調だろうと認めざるを得ないものの、「それでも不均衡は解消される」はずなのだ。それがいつなのか分からないが、我々が皆死んでしまう「前」であることだけは確実だろう。 |
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客員研究員
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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