2017年05月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は5ヵ月連続の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの17年3月の輸出額は前年同月比14.3%増と、テト(旧正月)の影響で営業日数が多かった前月の同29.6%増からは低下したものの、2ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は、16年前半に伸び悩んでいたものの、年後半から主力の電気・電子製品やアパレルを中心に勢いを取り戻しており、足元でも政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額は前年同月比27.2%増と、高水準ながらも前月の同48.5%増から低下した。結果、貿易収支は11.0億ドルの赤字となり、前月から9.4億ドル赤字が縮小した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、コンピュータ・電子部品が同53.7%増(前月:同64.9%増)、織物・衣類は同13.9%増(前月:同14.2%増)、履物は同19.0%増(前月:同34.6%増)とそれぞれ前月から低下したものの、高水準を維持した。また輸出全体の約2割を占める電話・部品が同13.3%減(前月:同3.2%減)と更に低下し、2ヵ月連続のマイナスとなった(図表10)。これはサムスン電子の新型スマホの発売が昨年は2月だったのに対して今年は4月に遅れているためと考えられる。なお、農産品についてはコメ(同5.7%減)が引き続き減少したが、ゴム(同30.6%増)、野菜(同33.4%増)、コーヒー(同26.1%増)など大幅に増加した品目が多かった。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同13.1%増(前月:同26.8%増)、地場企業が同17.2%増(前月:同37.8%増)と、それぞれ前月から低下したものの、二桁増となった。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年3月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比13.8%増と、旧正月の影響で営業日数が多かった前月の同20.4%増から低下したものの、5ヵ月連続のプラスとなった。輸出の伸びは医薬品の変動が大きいために上下に振れているものの、基調としては16年初に資源価格の上昇を受けて底打ちし、年後半には主力の電子製品と化学製品の需要が回復して増加傾向に転じている。なお、総輸出額は前年同月比16.1%増(前月:同20.9%増)と低下した一方、総輸入額は同16.1%増(前月:同6.1%増)と上昇した。結果、貿易収支は43.6億ドルの黒字と、前月から1.3億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同2.8%増と、前月の同16.5%増から大幅に低下した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同28.0%減)やPC(同9.6%減)、ダイオード・トランジスタ(同0.4%減)が低迷した一方、IC(同5.3%増)やPC部品(同30.8%増)、家庭電化製品(同26.9%増)が好調を続けるなど品目毎にバラつきがみられる。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学は同24.4%増と、前月の同20.4%増から上昇した。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同15.0%増(前月:同5.0%減)と3ヵ月ぶりのプラスに転じるとともに、石油化学製品が同39.5%増(前月:同44.4%増)と高水準を維持した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年3月の輸出額は前年同月比21.0%増(前月:同8.7%増)と上昇して5ヵ月連続のプラスとなった。輸出額は16年から資源価格の上昇を受けて一次産品を中心に緩やかに持ち直し、主力の電子製品とその他製品はやや不安定ながらも拡大傾向が続いている。一方、輸入額も前年同月比24.0%増(前月:同15.2%増)と上昇し、依然として力強い内需を背景に高水準の伸びが続いている。結果、貿易収支は23.0億ドルの赤字と、前月から5.3億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同19.0%増(前月:同15.9%増)と上昇して3ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、家庭電化製品(同70.5%減)と電気通信機器(同42.8%減)は昨年から減少傾向にある一方、計測制御機器(同43.2%増)や半導体デバイス(同23.2%増)、電子データ処理機(同27.1%増)は大幅な増加傾向がしている。その他9品目については、電極(同506.3%増)とココナッツオイル(同215.8%増)、金(116.8%増)、その他鉱業製品(同80.0%増)、機械・輸送用機器(同55.9%増)、その他製造品(同47.5%増)、金属部品(同21.8%増)、化学(同21.6%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同20.2%増)がそれぞれ大きく増加した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年05月11日「経済・金融フラッシュ」)

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