2016年09月09日

景気ウォッチャー調査(16年8月)~2ヵ月連続の改善も、猛暑やオリンピック開催で限定的

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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「景気ウォッチャー調査」景気の現状判断(方向性)/景気の先行き判断(方向性)一覧

1.景気の現状判断DI:2ヵ月連続の改善も、景況感は横ばい圏を脱せず

9月8日に内閣府から公表された16年8月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは45.6(前月差0.5ポイント)と2ヵ月連続の改善となったほか、参考系列として公表されている季節調整値も46.0と前月から2.8ポイント改善した。ただし、現状判断DIの水準は好不況の分かれ目である50を下回る状況が続いており、依然として景況感は横ばい圏を脱していないと判断される。

前月調査では、英国のEU離脱を契機とした金融市場の混乱が収束したことや政府・日銀に対する政策期待の高まりなどから、円高・株安に歯止めがかかったことが景況感の好転につながった。今月調査では、海外経済や金融市場の動向への懸念、円高・株安によるマインド面の下押しが残存するなか、16年度当初予算の前倒し執行による公共事業の増加、雇用情勢の改善などがプラスに寄与した模様である。

家計動向関連では、円高や株価低迷による下押しが続いていることに加え、猛暑やオリンピック開催で客足が遠のいたことが景況感の下押し材料となった模様である。また、8月は台風が例年以上に発生したこともあり、一部の地域では天候不順が足を引っ張ったようだ。企業動向関連では、円高への懸念が根強いものの、建設業を中心に公共工事の増加が景況感の改善につながった模様である。コメントをみると、円高・株安関連のコメントが多く見受けられるなか、熊本地震や英国のEU離脱関連のコメントは減少しており下押し圧力は和らぎつつある(最終頁の図参照)。一方、円高などを受けた物価下落を理由にデフレを懸念する声が聞かれている。

2.猛暑やオリンピック開催で小幅な改善にとどまる

現状判断DIの内訳をみると、企業動向関連(前月差2.0ポイント)、雇用関連(同2.9ポイント)は前月から改善する一方で、家計動向関連(同▲0.4ポイント)が2ヵ月連続の悪化となった。家計動向関連のうち、サービス関連(前月差0.2ポイント)、住宅関連(同3.2ポイント)は改善したものの、ウェイトの高い小売関連(同▲1.1ポイント)、飲食関連(同▲0.7ポイント)が悪化したため、全体では前月からマイナスとなった。
景気の現状判断DI(分野別、原数値)/小売関連の要因分解 コメントをみると、家計動向関連のうち小売関連では「猛暑とリオデジャネイロオリンピックによる需要拡大があった。特にエアコンを中心に冷蔵庫、テレビ、ブルーレイレコーダーが好調で、単価も前年を上回っている」(南関東・家電量販店)といったように、猛暑の影響やオリンピック効果で家電販売が好調であったことを指摘するコメントが寄せられた。一方、百貨店では「猛暑に加えてリオデジャネイロオリンピック等もあり、外出しようという意欲が感じられず、来客数が減少している」(東海・百貨店)など猛暑やオリンピック開催は景況感の下押し要因となった模様である。このほか、「株価が不安定なことから、富裕層の財布のひもが固くなっており、時計や宝飾品、海外ブランド品などの高額品の売上が落ち込んでいる」(近畿・百貨店)や「円高傾向もあり、お中元の単価が下がった。また、セール後半の購買が弱く、苦戦を強いられた」(九州・百貨店)など引き続き円高・株安によるマインド面の下押しを懸念するコメントが多数寄せられた。また、7月調査の先行き判断では、残暑で秋物商材の立ち上がりが鈍いとの懸念が示されていたが、「残暑で夏物セール品が動いている反面、秋物商材の立ち上がりが遅い。そのため、売上が確保できても利益の確保が厳しい状態である」(東北・衣料品専門店)と、8月の現状判断でも暑さが続いていることを懸念するコメントが寄せられた。

飲食関連では、「飲食店は天候に左右されやすいが、猛暑で商店街の人通りも少なく、周囲の店舗も暇そうにしている」(近畿・一般レストラン)や「お盆明け、リオデジャネイロオリンピック等の影響があり、夜の動きが非常に悪い」(北関東・一般レストラン)といったように、猛暑やオリンピック開催による客の出控えを指摘するコメントが多数見受けられた。

サービス関連では、「ほぼ例年どおりで、2~3ヵ月前と変化はない。インバウンドも単価が下がってきている」(近畿・都市型ホテル)とのコメントのように、引き続きインバウンド需要による押し上げ効果が薄らいでいる状況が見て取れる。

住宅関連では、「消費税増税の再延期を受け、リフォーム等の高額支出に関しては、客に様子見の雰囲気が感じられる」(南関東・住関連専門店)など消費増税延期の影響を懸念する声が聞かれた一方で、「住宅ローンの低金利によって住宅を取得するには有利な環境であり、たくさんの客が取得に向け動いているが、ローコストの住宅が多く高価格帯への需要は少ない」(北陸・住宅販売会社)とのコメントのように、低金利に支えられる形で住宅市場が底堅さを維持している様子も窺える。
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

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