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2025年07月31日

2024年度生命保険決算の概要-利差益増により基礎利益は増加、国内債券は含み損だがほぼ問題なし

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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1――保険業績(全社)

生命保険協会加盟会社は、2025年4月1日現在41社あり、それを、伝統的生保(17社)、外資系生保(12社)、損保系生保(4社)、異業種系生保等(7社)、かんぽ生命に分類し、2024年度の業績を概観する(図表-1)。
【図表-1】 主要業績(2024年度)
41社合計では、年換算保険料ベースで新契約は2.6%増加しており、うち規模の大きいかんぽ生命では大幅に増加していることを考慮すると、金融機関窓販の増減などで各社バラツキはあるものの、全体としてはほぼ横ばいと言える。保有契約年換算保険料は0.0%増加となった。
 
「伝統的生保」の新契約年換算保険料は、▲3.8%減少(前年度19.2%増加)となった。保有契約年換算保険料は0.8%増加(前年度2.5%増加)。以下同様に保険料ベースでの増減を示す。

「外資系生保」は、新契約が9.0%増加(前年度6.0%増加)し、保有契約は ▲0.7%減少(前年度 2.4%増加)した。

「損保系生保」は、新契約が▲6.0%減少(前年度1.0%増加)で、保有契約は▲0.1%減少(前年度 3.1%増加)となった。

「異業種系生保等」は新契約が13.9%増加(前年度17.1%増加)、保有契約は6.1%増加(前年度 5.5%増加)となった。
【図表-2】新契約年換算保険料(2024年度)
次に、新契約年換算保険料の個人保険、個人年金保険および第三分野の内訳を見たものが図表-2である。40社(かんぽ生命を除く)合計で、個人保険は対前年2.2%増加した(前年度 3.8%増加)。個人年金は、▲5.0%減少(前年度56.7%増加)となった。個人保険は全体として微増だが、個人年金については、2023年度に一時払個人年金が好調であったことの反動減が大きい。第3分野は4.4%増加となった。
 
基礎利益(再び、図表-1を参照)は、全体では対前年度11.7%増加した。規模の大きい伝統的生保における資産運用収支が増加していることが、その他のグループにおける減少を上回っている。基礎利益が増加した会社数は、41社のうち27社である。

2――大手中堅9社の収支状況

2――大手中堅9社の収支状況

以下では、シェアが大きい大手中堅9社に焦点を当て、その収支状況を詳細にみていく。

なお、大手においては、グループ内に複数の保険会社があって、例えば、伝統的な保障・医療保険・金融機関窓販などと役割の分担がなされているようなので、収支の方も、本来はグループ連結でみるべきと考えられるが、今のところ、基礎利益をはじめとして、ほとんどの収支項目においては、グループ内の保険子会社の占める割合が小さいことや、従来からある9社単体の開示情報が比較的多いこと、から、ここでは従来通りそれぞれ単体9社でみることにしている。
1|資産運用環境と有価証券含み益
2024年度までの資産運用環境は図表-3の通りである。
【図表-3】運用環境
国内株価については、企業業績の好調さへの期待などから、最高値を更新するような時期もあったが、関税の問題など米国の状況の不透明感から年度末にかけて下落した。日経平均株価でいうと、前年度末40,369円から、年度末35,617円へと下落した。

国内金利については、日銀の政策金利の段階的引き上げなどから、代表的な10年国債利回りでみると、2025.3月末には1.497%へと、上昇してきた。

為替については、欧米の政策金利の引き下げと日本の政策金利の引き上げにより、円高ドル(およびユーロ)安の方向となり、対米ドルでは2025.3月末には149.52円/ドル、対ユーロでは162.08円/ユーロとなった。従来から外貨建保険で比較的よく使われる豪ドルについても同様であった。
【図表-4】有価証券含み益(大手中堅9社計)
こうした状況を反映して、大手中堅9社の有価証券含み益は、図表-4に示す通りとなった。国内債券の含み益が▲7.7兆円減少、国内株式の含み益が▲3.3兆円減少、外国証券含み益は債券・株式とも減少し合計では▲0.6兆円減少した。その結果、有価証券合計では▲11.8兆円と大幅な減少となった。
 
多くの生保は、従来、国内債券中心の資産運用をしてきたため、国内金利が上昇する中で、9社すべてが多額の含み損を抱える状況となっている。なお大手中堅9社に限らず、国内債券を保有する会社は全て国内債券は含み損となっている模様で、その規模は全体では約▲20兆円(2023年度末は約▲5兆円)となっている。

一方で、生命保険会社の場合、こうして資産側の債券だけみると含み損となっていても、対応する長期負債(責任準備金)の時価評価額の方が、それ以上に減少していると考えられるため、全体としては、財務状況に問題はないと思われる。(その対応状況を、定量的に評価することを試みているのが、後述する「経済価値ベースのソルベンシー指標(ESR)」であるといえる。)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月31日「基礎研レポート」)

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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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