2025年01月15日

景気ウォッチャー調査2024年12月~インバウンド需要は好調継続~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

文字サイズ

1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.5ポイント上昇の49.9

内閣府が1月14日に公表した景気ウォッチャー調査によると、24年12月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.5ポイント上昇の49.9となり、2か月連続の上昇となった。

地域別では、全国12地域中7地域で上昇、5地域で低下であった。最も上昇幅が大きかったのは四国(前月差3.0ポイント上昇)で、最も低下幅が大きかったのは甲信越(同5.4ポイント低下)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差0.6ポイント、企業動向関連が同0.6ポイント、雇用関連が同▲0.2ポイントであった。今回の調査結果をふまえて内閣府は「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている。」との見方を示した。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.インバウンド需要は好調継続で、企業動向関連の非製造業は改善

家計動向関連では、小売関連(前月差1.2ポイント)や住宅関連(同2.2ポイント)は改善したものの、飲食関連(同▲4.0ポイント)は大幅に悪化した。コメントをみると、「買上点数と客単価が下落している。前年よりも物価が大幅に上昇していることが原因とみている」(東北・スーパー)や「物価が上がっているため客はシビアになっており、安い物しか売れない」(近畿・一般小売店)など、物価高による影響で家計の消費は伸び悩んでいることがわかる。

企業動向関連では、製造業(前月差▲1.0ポイント)は悪化したが、非製造業(同1.8ポイント)は改善した。コメントをみると、「以前と比べ見積依頼が減っており、受注にも勢いがない。物価やエネルギーコスト等の高騰で不安材料も多い」(甲信越・電気機械器具製造業)など、原材料の価格上昇による影響がみられる一方、「インバウンド、国内観光需要は引き続き堅調で、ホテル事業の宿泊見込みも同様である」(南関東・不動産業)など、インバウンド需要は引き続き好調であることがわかる。

雇用関連では、「企業の人材不足に伴う採用意欲は引き続き高く、求人数は高水準のまま、横ばいで推移している」(近畿・人材派遣会社)など、求人数はあっても経験やスキルのミスマッチなどから人手不足が継続しているようだ。
 
下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、インバウンド、需要、伸びる、消費、好調といった単語が多く含まれていることが読み取れる。景況感が変わらないと判断した回答者のコメントに「クリスマス」という単語が多かったことから、2024年のクリスマス商戦は物価高の影響でいまひとつだったのかもしれない。
「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとにした計量テキスト分析
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差0.6ポイント低下の48.8

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差0.6ポイント低下の48.8となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差▲0.7ポイント)や雇用関連(同▲2.2ポイント)は悪化したが、企業動向関連(同0.5ポイント)は小幅に改善した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
家計動向関連では、「物価高騰による消費減やインフルエンザなどの感染症による予約キャンセルが増加しており、売上減が見込まれる初売りや決算の時期になり、来客数、販売数が増えるとみている」(九州・一般レストラン)や「年末年始に良かった客の動きも、正月休み後は財布のひもが固くなり売上も減少していくとみる。客の動きも低迷は避けられず、厳しい状況になるとみられる」(東海・タクシー運転手)など、インフルエンザなどの感染症による影響や、年末年始の反動を懸念するコメントがみられる。

企業動向関連では、「年明けから各種価格高騰のダメージが出てくる。また、米国の今後の政策によっては原料の調達に影響するとみている。人や物の動きが見通せない」(東北・食料品製造業)や「米国新大統領の政策によっては米国向け機械輸出が止まるかもしれないという話があり、先行きが見えなくなっている。国内向けの景気は良いが、米国の状況によって左右される」(東海・輸送用機械器具製造業)など、企業のなかにはトランプ次期大統領による政策の不透明感などから先行きを不安視するコメントもあった。

雇用関連では、「新規求人数は減少傾向にあり、企業より景気が上向くような声が聞こえてこない」(沖縄・職業安定所)など、雇用面について慎重な企業もみられる。
 
景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が悪化していくと判断した回答者のコメントには、ガソリン、値上げ、物価高、厳しいといった単語が多く含まれていた。
「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとにした計量テキスト分析
2024年12月調査の結果は、インバウンド需要が引き続き好調であり、現状の景況感は改善していることを示すものであった。一方で、足もとではインフルエンザ患者数の増加がみられ、外出や移動を控える人は増加する可能性がある。さらに、食品の値上げは続いていくことが予想され、家計の消費は伸び悩むだろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【景気ウォッチャー調査2024年12月~インバウンド需要は好調継続~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

景気ウォッチャー調査2024年12月~インバウンド需要は好調継続~のレポート Topへ